東京都文京区の文京シビックセンターにて2024年9月1日(日)に開催された「文京区子育てフェスティバル 2024」が大盛況のうちに終了。当日はコンサートや工作、あそび体験コーナーなど、親子で楽しめる催しが盛りだくさんで、参加された皆さまの笑顔がいっぱいの、楽しいイベントとなりました。
とりわけ子ども達の笑い声に包まれていたのが、渋谷画劇団による「紙芝居SHOW!~フラワー博士とめぐる文京区のおまつり~」! この記事では、この紙芝居上映の様子のレポートと制作の裏側、またこの作品に込められた想いについてご紹介します。
「文京子育てフェス」でイベント散策!
「文京区子育てフェスティバル」の会場となった文京シビックセンターは親子連れでいっぱい! 抱っこされた赤ちゃんから年長さんくらいのお子さんまで、各階に設けられた様々なスペースでめいっぱい楽しんでいました。まずはその様子を、ほんの一部ですがご紹介しますね。
工作・ミニプログラム
地下1階のレクリエーションホールで行われていた工作とミニプログラムは行列ができるほどの盛況ぶり!
工作ではお子さんの手形を手形粘土で作ったり、パンダの帽子を作ったり。ミニプログラムでは子どもに人気の歌でみんなで踊りました!
遊び体験
4階の和室は、多彩なおもちゃを楽しめる「あそび体験スペース」に。和室だから、靴を脱いでごろごろしても大丈夫!
利用しておられたお母さんによると、お子さんは普段遊べないようないろんなおもちゃで遊べて、とても楽しんでいるようだとおっしゃっていました。プロの保育士さんが遊んでくれるのも、安心感抜群ですね!
区民ひろばではコンサートや紙芝居SHOW!も!
地下2階の区民ひろばではステージイベントを開催。「ひとみ姫とシエナ☆フルーツ音楽隊のめっちゃ楽しい音楽パーティー!!」は、とてもユニークなコスチュームの楽団。本格的な演奏ときれいな歌声に、お子さんだけでなく大人も聴き入っていました。
そして子供たちも大きな声を上げて楽しんでいたのが…
見るともっと文京区が好きになる!?渋谷画劇団の紙芝居SHOW!
同じく区民ひろばのステージで開催された渋谷画劇団の紙芝居SHOW!。
おや? まだ始まっていないようですが、ステージにはすでに紙芝居師の方々が。
紙芝居師のかみはるさん(左)とマットくん(右)が、子どもたちにどんどん声をかけ、巻き込みます。紙芝居が始まる前から、何が起こるのか興味津々の子供たち。
そして、あら? カンカン!という拍子木の音が響いてるなあと思ったら、館内を歩いて呼びかけている人がいますよ!
こちらは紙芝居師のヤムちゃんさん! よく通る声で館内の人に呼びかけます。最近はほとんど聞かなくなった拍子木の音に思わず立ち止まる人も。
今日の紙芝居の演者はヤムちゃんさんとかみはるさんのお二人ですが、マットくんも一緒に、本編の前のクイズコーナーを盛り上げます!
広場には、ステージ正面にシートが敷かれたほか、パイプ椅子も置かれ、大人も子どももたくさん集まっていました。
今回の紙芝居、通常の枠に入ったものももちろんあるのですが、遠くの人でも見えやすいように、後ろのスクリーンにも大きく映し出されていたんです。端の方からも、なんと上の階からもくっきり見えて、みなさん思い思いの場所から楽しまれていました。
「フラワー博士とめぐる文京区のおまつり」、はじまりはじまり~!
この紙芝居は、文京区の小学3年生の京子ちゃんが、花の妖精・フラワー博士と出会い、文京区のおまつり(「文京花の五大まつり(※)」と「文京朝顔・ほおずき市」「根津・千駄木下町まつり」)を知っていく物語です。
※文京花の五大まつり…文京区内の花の名所を中心に行われるおまつりで、つつじ・あじさい・菊・梅・さくらの5つの花のおまつりがある。
だけどこの紙芝居、ただ、絵を見せながら物語を聞かせるだけではありません。
「フラワー博士」を演じるヤムちゃんさんも、「京子ちゃん」を演じるかみはるさんも、とにかく表情豊かに力いっぱい表現します! 会場からは何度も大きな笑い声が。
クイズで知る文京区のおまつりあれこれ
紙芝居の中にはクイズがあって、たとえば
「(つつじで有名な)根津神社では約何種類のつつじが咲いているでしょうか?」
という、文京区ならではのクイズが出ます。
答えは3つ用意されていて
ここで、答えがわかる子に手をあげてもらいます! いっせいに子どもたちの、いえ子どもだけじゃなく大人の手も勢いよく上がります!「はーーーーい!」という大きな声が、会場いっぱいに響きました。
ちなみにこのクイズ、答えは3番の「約100種類」。
もちろんそこまで知らない子も多いので、ヤムちゃんさんがおもいっきり「ひゃああくしゅるうううううい!!」と強調したりして、子どもたちにサインを送ります。それでも「3番」と言ってくれないお子さんもいるのですが(笑)そこがこの紙芝居SHOWの面白いところ! いろんなアクションを交えながら、楽しく答えを引き出します。
ときにすんなり正解を言えたり、ときになかなか正解が出なかったりしつつも、賑やかに楽しく紙芝居は進行していきました。
紙芝居の中で、花まつりの名物やお花の特徴などを伝えつつ、約30分の紙芝居は大盛況の中終わりました。
紙芝居をお子さんと一緒に楽しんでいたお母さん。記念写真を撮らせていただきました!
長く文京区に住んでいても、花まつりが5つもあるとは知らなかったとのこと。次はぜひ、この紙芝居で知ったおまつりに出かけてください!
さて、そんな大賑わいの紙芝居SHOW!でしたが、実は我々オマツリジャパン取材班は、7月初めに紙芝居制作中のオフィスに潜入取材していたのです!
ここまで読んでくださった皆さまに、その舞台裏をこっそりお見せしますね!
紙芝居制作の舞台裏をウォッチ!
このオリジナル紙芝居を制作したのは、渋谷に拠点を構える漫画家学会。
紙芝居を事業の中心に据え、所属する紙芝居師(紙芝居の実演をする人)や紙芝居絵師(紙芝居を描く人)によるオリジナルの紙芝居の制作・実演を行っています。
それだけでなく、和文化産業を支援する事業も行っています。
今回の「フラワー博士とめぐる文京区のおまつり」は、紙芝居師(演者)でもあるヤムちゃんさんがシナリオを、同じく紙芝居師のかみはるさんが作画を担当しました。
こんなふうに、シナリオや絵を描いて演じることもできる、両方ができる方は貴重な存在なのだとか。
作画のポイントは「わかりやすさ」 紙芝居ならではの工夫も
さて、我々がおじゃました7月上旬、オフィスでは、かみはるさんがパソコンを使っての作画の真っ最中でした。
かみはるさん…先天性股関節脱臼などにより杖をつきつつ、軽やかに力強く演じます! 声優、ナレーションリポーターのほか、2020年東京パラリンピック普及啓発活動などにも関わり、東京2020パラリンピック聖火ランナーにも選ばれました。
この時点で、全体の構成となる絵コンテはOKが出ていていて、下書きをしているところでした。
線のみですが、表情などはしっかりわかりますね。ここで実際に色をのせる工程を見せていただきました。
たとえば先に色をつけた部分がお花の色と被るとなると、髪の毛の色を変えたり、服の色を変えたりするのだそうです。パソコンだと色を変えるのもスムーズですね。
このラフ画が実際の紙芝居ではこのようになっていました!
では、作画中のかみはるさんにお話を伺っていきます。
―――今回のキャラづくりで気をつけたのはどんなところですか?
かみはるさん「紙芝居なので、まず、子供たちにわかりやすく。なおかつ文京花の五大まつりを楽しく知ってもらいたいということで、キャラクターはなるべくかわいいいものにしつつ、背景のお花や建物は現実に近い形にしようかなと。デフォルメをきかせつつ、お花の要素を少し入れてみたり。主人公の京子ちゃんのワンピースもちょっとお花っぽくしているんですよ」
―――絵を描くうえで気をつけていることはどんなところですか?
「お花や、おまつりの様子とか、今回の紙芝居で初めて見る子も多いと思うんです。なので、絵でなるべく伝わるように、そういう気持ちで書いています。お花などの書き込みの多いものや、神社の建物など、相違があってはいけないものもあるので、そういう点では大変な作業も多いんですけど、なるべく伝わったらいいな、って」
―――ご自分で演じるとなると、ラフを描いている段階でも、こういうしゃべりにしようとか頭の中で考えるんですか?
「紙芝居は絵と演者が合わさって完成するので、あまり書き込みすぎないというのを心がけています。たとえばキャラクターが笑顔だったとして、驚くのは演者がやればいいかな、とか。絵で全部説明しようとすると入りきらないんです。絵の中にキャラクターが出てこないこともありますが、そこでは私たちがキャラクターとしてしゃべれば子どもたちはそのように補完してくれるので、そのコンビネーションで伝えると」
―――なるほど、あえて全部は書かないと。
「紙芝居ってかなり離れた状態で見ることを想定しているんです。なので、遠くからでも見えやすいように工夫する必要があるんです」
と、ここで今回シナリオを描いてくださった、ヤムちゃんさんが補足してくださいました。
ヤムちゃんさん「紙芝居は、たくさん書き込んだら、つぶれてしまって後ろから見ると何も見えないんですよ。1枚の中に大体3つくらいの情報があるくらいがいいんです。それ以上書き込みをすると子供たちが飽きてしまって、画面を見なくなってしまう」
紙芝居で一番大事なのは観客とのコミュニケーション
ヤムちゃんさん…漫画家学会の2009年のオーディションに合格し紙芝居師となったベテラン。演者だけでなくシナリオも書き、バイリンガルで英語もOK、トランペットも吹けちゃうというマルチな才能を、国内のみならず海外でも発揮中!
なるほど。ではここからはヤムちゃんさんに、シナリオや実際に演じる際のお話を伺いましょう。
―――今回の花めぐりのストーリーを作成する際に、気をつけた点はどこでしょうか?
ヤムちゃんさん「一番は、見てくれた子供たちがわかりやすく楽しくっていうところかなと。『文京花めぐり』の紙芝居が今までと違うところは、クイズをちょっと多めにしたことです。文京花の五大まつりプラス2つのおまつりのことを入れたのですが、子供たちに7つの情報を入れるって、ほとんど不可能なんですよ。なので、覚えて欲しいなとか、こういうの楽しいよ、というところだけを抜粋してクイズにしました。そうすることによって、子供たちに、答えが当たった、やったーっていう成功体験をしてほしいと」
―――紙芝居ってどれくらい練習するんでしょう?
「人それぞれですけど、紙芝居って独特で、一番はコミュニケーションが大事なんですよ。たとえば、子供たちがわーってしゃべってるのを無視して、こっちが決められたことばかりを言ってしまったら、子供の気持ちが離れてしまう。なので、たとえば二人でやる場合は、掛け合いのきっかけ台詞をしっかり確認して、だいたい7割程度で終わります」
―――遊びをもたせると。
「そう、遊びですね。たとえば、きっかけ台詞が『じゃあ花まつりってどういうイベントなの?』だとして、その台詞を言っている間に、子どもたちが答えを言っちゃうときがあるんですよ。
ここでやりとりがかっちりきまっていると、子供の声を無視して演者の方がしゃべってしまう。こういうときは子どもたちに、『ああ、そうだよね、気になるよね?』ってしっかりとリアクションしてあげるのがベストなので、決めすぎないようにしておきます」
―――子どもたちの気持ちを引き付けるための工夫はありますか?
「表情ですかね? 自分が目をキラキラさせないと子供には伝わらないので。リアクションも大きくする。それと、子供の目線になって、自分も子供になってしゃべると、すごく円滑にいくというか、余計に興味をもってもらえるように思います」
ヤムちゃんさんは海外でも紙芝居を上演した経験があり、サウジアラビアで紙芝居をやった初めての日本人なのだとか。紙芝居は日本固有のもので、海外の方にはかなり珍しいそう。サウジアラビアで初めて紙芝居を見る方々も、ヤムちゃん流のコミュニケーションをメインにした紙芝居でどんどん巻き込まれて、とても反応が良かったそうです。
ちなみに、海外で一番リアクションが良かったのがアメリカだそうですよ。
これからも、素敵な日本の文化をどんどん広めていってください!
子育て世代に伝える言葉「子育ては最高のプレゼント」
最後に、漫画家学会の営業統括部長CHI(Chief Happiness Officer)小林 勝海さんにもお話を伺いました。
―――お子さんや親ごさんにかかわる機会がすごく多いと思うんですけど、子育て世代に伝えたいことはありますか?
小林さん「子育てって神様がくれた最高のプレゼントだと思っているんですよ。僕の場合、家庭サービスというより、自分が楽しいから子供と、家族と遊ぶ。それが自分の中の根っことなって今の仕事に繋がっている。
子どもたちに毎日できることが増える、学校に上がる前や、上がってからも、毎日できることが増えるあの喜び。それが最高のプレゼントだと」
子どもの成長に関わることが大好きだとおっしゃる小林さん。その想いが、子どもに寄り添う、そして子どもの心に響く、漫画家学会の紙芝居の根底に流れているように思います。
* * *
なんだか秘密基地のように、たくさんの楽しそうなものが詰まっていた漫画家学会のオフィス。
全力で子どもたちにぶつかるみなさんのエネルギーの源を覗いた気分でした。
そして、そんな紙芝居師さん、紙芝居絵師さんへの子たちからの感謝の気持ちも溢れていましたよ。
文京区の挑戦:紙芝居で伝えたかったこと、そしてこれから
そんな紙芝居はじめ、楽しいイベント盛りだくさんの子育てフェスでしたが、文京区が子育て世代に紙芝居を通して伝えたかったことを、文京区観光協会事務局の松永萌さんに伺いました。
―――改めて、「文京花めぐりプロジェクト」の概要を、教えていただけますか?
松永さん「文京区内には花の五大まつりと、『根津・千駄木下町まつり』『文京朝顔・ほおずき市』の計7つのおまつりがあります。ですが、おまつりを盛り上げてくださっている実行委員の方々も高齢化が進んでいます。10年先、20年先に、これらのおまつりの担い手になってくるのが、今の文京区に住んでいる子供たちなんですね。だから、まずは文京区のおまつりを子どもたちに知ってもらって、関わってもらいたいという趣旨で、始まったプロジェクトです。
1年目(2023年)はまずは楽しんでもらう、ということでおまつりに足を運んでもらって、2年目(2024年)には、おまつりがどんなものなのかを学んでもらうと。そして来年の2025年は実際におまつりに関わっていく、という3年間で行うプロジェクトです」
―――今日の紙芝居を実際にご覧になっていかがでしたか?
「まずは花まつりが文京区にあるんだよ、ということを紙芝居で伝えたかったんですが、想像以上にお子さんたちに反応がよかったですね。やっぱりクイズに一緒に参加してもらうっていうのがよかった気がします」
―――なぜ紙芝居という手段を選ばれたのでしょうか?
「子育てフェスに参加されるお子さんたちは未就学児中心だったので、絵とか映像とかの、目でとらえてもらうようなことが伝わりやすいかな、と」
―――去年は「楽しむ」で来年は「関わる」ということなんですけど、文京区として今後はどのように取り組んでいかれるのでしょうか?
「今年は『学ぶ』がテーマということで、探検ラリーをやっています。実際にまつり会場に足を運んでいただいて、マップをもって会場内をぐるぐる回ってクイズ&ミッションに挑戦してもらう、というものです。その探検ラリーを通して、神社自体のこと、神社のある町のこと、そこに咲いているお花のことなどを知ってもらうという、親子で楽しめるイベントになっています」
―――最後に、次のイベントを予定の予定を教えてください。
「次は須藤公園を会場にして『根津・千駄木下町まつり』で行います。今年の7つのまつりには1つずつ切り絵の景品があり、それを7枚重ねると1つの絵になるんですよ」
おまつりに通うことで楽しみが増え、地域のことも深く知ることができる、とても楽しい企画ですね。次のイベントも楽しみにしています!
次回の「根津・千駄木下町まつり」情報はこちらからチェック!