2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
大和の二大火祭で暴れる鬼
東大寺の「お水取り おたいまつ」と長谷寺の「だだおし」は、奈良の二大火祭。長谷寺の節分の豆まきの掛け声は「フクはウチ」のみ。毎年2月14日に行われる「だだおし」で「鬼」を退散させるため、節分では鬼に猶予を与えているのだという。
この「だだおし」という不思議な名前は、行事の中で、だんだ印を参拝者の額に押すことから「だだおし」といわれるようになったとも、僧侶がダダダ…と走る行道を表しているともいわれている。
なぜ走るのかというと、さんげ、悔い改めて、観音様に国家の安寧と五穀豊穣を祈っている姿で、天界の一つ「兜率天」(とそつてん)の1日は人間世界の400年にあたり、動作を少しでも早くするため。
僧侶が堂内から最強のお札「牛玉札」(ごおうふだ)で鬼を追い出すと、今度はお寺の境内で3匹の鬼が暴れまわる。外に出た鬼は「うぉぉぉお!」と叫び、あちこちの参拝者に襲いかかる。
重さ150キロもの大たいまつは鬼の持ち物で、本来暗い時間帯に夜道を照らすためのたいまつだったものが、次第に儀式化し大きくなり、明るい時間帯になっていったのだそうだ。
鬼たちが本堂の周りを回るのは、牛玉札の法力で弱った鬼がのたうち回る様子を表している。鬼がフラフラすると巨大なたいまつがぶつかる…というお寺の公式見解をよそに、実際には男性陣が何度かたいまつをぶつけあうと木造の舞台の上に火の粉が舞い、あちこちで参拝者の悲鳴が上がる。大きな炎が上下に揺れると幕や天井が燃えないのだろうかとドキドキが止まらない。
鬼の叫び声や大たいまつは太鼓やほら貝の音と一緒になって大迫力。鬼はまるでプロレスラーのように暴れまわる。
最後は牛玉札の威力で長谷寺は静寂を取り戻す。火の粉やたいまつの燃えかすは無病息災のご利益がある牛玉札の法力の“おこぼれ”。こうしてまた来年、炭を持って無病息災を祈る。