2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
獅子舞探して祭りを楽しむ
石川県加賀市大聖寺(だいしょうじ)。県の南部に位置するこの街では、産業振興と五穀豊穣を祈願する「大聖寺桜まつり」が行われる。江戸時代には大聖寺藩の城下町だった歴史があり、華やかな神輿(みこし)の行列や獅子舞などを見物できるのが特徴だ。この祭りは、毎年4月の第2土・日曜日に開催され、加賀神明宮を中心ににぎわいを見せる。
2019年、知り合いの誘いでこの祭りを訪れた。澄み切った空に、ふわりとした春の匂い。古き良き街並みが広がり、川沿いの桜は満開だ。加賀神明宮には篝火の煙が立ち込め、銅像の馬が鳴き踊るようであり、まるで神話の世界に一歩踏み入れたようである。近くには、カステラや唐揚げなどの屋台が広がり、昼ごろになると地域内外の人々でにぎわい始める。神輿の行列も、華やかに街を練り歩く。
この祭りの一番の見どころは、獅子舞が町中で踊り狂っていることである。大聖寺は約30町に分けられ、その3分の1の地区で獅子舞が現存する。それらの獅子舞がこの大聖寺桜まつりに合わせて、各地区で舞いを繰り広げているのである。町を散策していると、いきなり獅子舞が飛び出してくるのが面白い。獅子は家々を回り、玄関先で舞う。胴幕に2~3人入るので、図体が長い。道路をふさいでしまうことも頻繁にあるが、車を運転している人も歩行者天国(獅子舞天国)のような空気感を察知して見守る。春のふわりとした空気がそうさせるのか分からないが、この祭りに来た人は皆穏やかである。
このように神輿や出店を楽しむだけでなく、獅子舞探しに明け暮れるというのは通な楽しみ方だ。どこから獅子舞が現れるのか分からないから、あちこち歩き回る。そうすると、この地域にあるさまざまな穴場スポットも発見できる。古民家カフェや、ギャラリーなど魅力あふれる場所がたくさんあるのだ。この地域は、人口減少という課題を抱えている。しかし、街を盛り上げ次世代につなごうという祭りへの思いを、ぜひ地域含めてまるごと味わっていただきたい。