3月24日は「壇ノ浦の戦い」の日です。1185年のこの日、長門国(山口県)の壇之浦で、源平合戦最後の戦いが行われました。この戦いで平家軍は、源義経率いる源氏軍に討ち果たされ、一門の栄華は春の世の夢の如く散っていったのです。後世『平家物語』として伝わる、盛者必衰の歴史ロマンは人々の心をとらえて離しません。
壇之浦の戦いを機に、平清盛とその一族の権勢は失われましたが、世の人々は当時から滅亡した平家の人々に同情的だったようです。その証拠に、平家の落人伝説は日本各地にあり、平家を偲ぶお祭りもたくさん行われています。この記事では、壇ノ浦の戦いの日にちなんで、平家ゆかりのお祭りを紹介します。
世界遺産が舞台「宮島清盛まつり」
「宮島清盛まつり」は、厳島神社を篤く信仰した平清盛をしのび、1952年、清盛770年目の命日である3月20日に始まりました。当時の世相では「天皇・上皇を蔑ろにした清盛」は歴史の悪人の位置付けでしたが、いざ祭りを開催すると空前の人出に沸いたそうです。清盛の懐の深さや海洋貿易の重要性を見出した先見の明が再評価されるきっかけにもなったお祭りです。
この祭りでは、清盛と平家一門の「参詣行列」を再現。祭りで登場する平家一門の武将をはじめ、公達・白拍子・物詣姿の役は一般の方たちが務めます。華やかな衣装をまとった総勢100人の行列が往年の栄華を彷彿とさせます。
2023年の開催は3月21日。コロナウイルス感染拡大防止の観点から一般参加は見合わせ、規模縮小で行われます。
最期の地で幼帝をしのぶ「しものせき海峡まつり」
源平最後の戦いの舞台となった壇ノ浦のある山口県下関市では例年5月2日から4日までの3日間にわたって「下関海峡祭り」が行われます。5月2日には、幼帝・安徳天皇を祀る赤間神宮にて、五陵前祭や平家一門追悼祭が行われ、3日には、豪華絢爛な「上臈道中」が行われる「先帝祭」と、舟合戦を再現するかのような海上パレードを含む「源平まつり」が行われています。
しものせき海峡祭りでは、他にも「八丁浜えらやっちゃ」の掛け声賑やかに練り歩く「八丁浜踊り」や、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘にちなんだ巌流島フェスティバルも行われ、下関の歴史を満喫できる祭りになっています。
2023年は、例年通りの5月2日〜4日開催を予定。3日に行われる武者行列の一般参加者も募集しています。
平家供養の盆踊り「馬関まつり」
同じく山口県下関市では、平家一族の供養に起源を発した「平家踊り」を現代に伝える「馬関祭り」が開催されます。
「平家踊り」は、港町・下関の気風を受けた軽快な三味線の音と口説きが印象的で、11拍子という奇数拍子に合わせて踊る特徴があります。クライマックスの総踊りでは、約4000人の踊り手が会場に集結して大迫力!観覧はもちろん、飛び入り参加も可能です。
2023年の開催についての詳細は未発表ですが、例年8月下旬に開催されます。
日本三大秘境ほか平家落人の里に伝わるまつり
ここからは、平家の落人伝説が残る地で開催される祭りを4つ紹介します。
椎葉平家まつり(宮崎県)
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宮崎県東臼杵郡の椎葉村は、壇ノ浦で敗れて逃げ落ちてきた平家武士たちの隠れ里と伝わる山奥の村です。この地には、清盛の子孫にあたる鶴富姫と、屋島の合戦に源氏方として参戦し、見事な弓の腕前を披露した那須与一の弟・那須大八郎との悲恋の物語も残されています。
静寂に包まれる山あいの村で、例年11月第2週に行われるのが「椎葉平家まつり」です。人口3000人ほどの村に、例年2万人もの観光客が集まります。
鶴富姫の慰霊のため行われる「法楽祭」から始まり、往時を再現した「大和絵巻武者行列」は圧巻の華やかさです。
祖谷平家まつり(徳島県)
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徳島県三好市の祖谷(いや)は、清盛の甥・平教経(初名・国盛)が、平家再興を願って、安徳天皇をお連れしたという伝説が残っています。集落には日本最古の軍旗とされる「平家の赤旗」が残っていたり、源氏の追っ手が来た時にいつでも切り落とせるようにカズラの蔓を編んで作った「かずら橋」があったり、伝説を裏付ける文物も数多く残っています。
そんな祖谷で10月に行われるのが「祖谷平家まつり」。一番の見どころは武者行列ですが、平家伝説の郷土芸能や、地域文化に彩られた催しが満載で、世代を問わず楽しめるのも魅力のひとつです。
五箇山麦屋まつり(富山県)
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富山県の南西端・南砺市にある五箇山。相倉合掌造り住宅で世界遺産登録もされていることで有名なこの地域も、平家の落人伝説が残っています。
ここで毎年9月に行われている「五箇山麦屋まつり」で披露される「正調麦屋踊り」。この踊りの際に歌われる麦屋節は、平家の落人が烏帽子を脱ぎ捨て落ち延びながらも都を懐かしむ心情がうたわれていると言われています。
平家大祭(栃木県)
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栃木県日光市の湯西川にも平家落人伝説が伝えられています。この地に落ち延びたと伝わるのは、清盛の孫・忠房。湯西川には、男子が生まれても鯉のぼりを上げない、犬や鶏を飼わないなど、追っ手に見つからないようにするための言い伝えがたくさん残っているそうです。
例年6月に行われる「平家大祭」は、この地に逃れてきた平家の落人たちの生活様式や、生き方を後世に残すための拠点として誕生した「平家の里」で開催されます。「平家絵巻行列」では、総勢200名の地元の方々が平清盛や平家一門の衣装を身に纏い練り歩きます。
また、前夜祭に湯西川温泉で行われる、艶やかな衣装をまとった花魁たちが繰り広げる上臈道中も見逃せません。
まとめ
ここでは、平家ゆかりの祭り7つを紹介しました。祭りを通じて、平家一門の栄華と零落の歴史をより身近に味わうことができます。歴史好きな方はもちろん、世代問わず楽しめる催しも豊富にあるので、足を運んでみてはいかがでしょう。