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◆日本三大祭りのひとつ「祇園祭」
祇園祭は7月1日から31日までの1か月間もの間、神事や行事が行われる八坂神社のお祭り。
貞観11年(869年)に疫病が蔓延したため、御霊会を行ったのが祇園祭のはじまりです。
写真:近年、後祭山鉾巡行に復活した大船鉾のように鷹山も200年ぶりの復活を目指す
祇園祭のみどころは前祭(さきまつり/7月17日巡行)に23基、後祭(あとまつり/7月24日巡行)に10基と全部で33基の山鉾が京都の街中を巡る「山鉾巡行」です。
写真:前祭 宵山での「長刀鉾」のお囃子 宵山のときだけに見られる提灯の灯りが美しい
前祭の宵山では河原町から烏丸までの四条通が巨大な歩行者天国に変わります。
金の屏風で家を飾る屏風祭りを眺めていると、夕刻からはコンコンチキチキ…とお囃子が鳴りはじめ、
「動く美術品」である山鉾に美しい灯りがともります。
写真:屏風祭 宵山の期間に有志の個人宅で行われる別名「静の美術館」
そんな祇園祭には実は「休み山」という焼失などの理由によりお休みしている山鉾があります。
今回は約200年ぶりに復活する最後の曳山「鷹山(たかやま)」をご紹介いたします!
鷹山の復元図
◆京都むかしばなし「最後の曳山・鷹山」
むかしむかしその昔。
それは現代の京都人が「さきの戦争」という応仁の乱(1467~1478年)よりも昔からあったという由緒正しき祇園祭の曳山「鷹山」のお話です。
その鷹山は「くじとらず(争いにならないように巡行の順番が決まっている山)」だったほど大変人気がある大きな曳山でした。
元は小さな山だった「鷹山」。
天明8年(1788年)には舁山(かきやま/かつぐ山)、寛政10(1798)年には大きな曳山(ひきやま)と時代が移るにつれ、だんだんと大きな山になっていきました。
飛ぶ鳥を落とす勢いの鷹山でしたが、鴨川から鞍馬口までと広範囲におよぶ大規模火災「天明の大火」(1788年)に巻き込まれ山を焼失してしまいました。
応仁、天明、宝永と三度目の大火にも負けず、復活をとげてきましたが、文政9年(1826)に嵐で懸装品を損壊したのを最後に「休み山」となったのでした。
元治元年(1864)の蛤御門の変では休み山であるにもかかわらず、またも火災にみまわれ、山本体が全焼。
難を逃れたご神体の頭と手だけがわずかに残りました。
それから190年もの間、鷹山は祇園祭の時期に「会所飾り(かいしょかざり)/居祭(いまつり)」で三体のご神体を飾ってきました。
写真:「鷹山」の会所飾り/居祭
宵山の期間に「鷹遣(たかつかい/鷹匠)」「樽負(たるおい)」「犬飼(いぬつかい)」の三体のご神体と見送り(鉾の背面を飾る絨毯)を町家(ちょういえ/町所有の家)で見ることができる
◆不死鳥のごとく蘇る!鷹山保存会に突撃インタビュー
昨年、筆者はうだる暑さの中で神輿洗いの「お迎え提灯」を始め、鉾立て、神輿渡御、宵山、山鉾巡行…と1か月に渡って祇園祭の行事を撮影していました。
その中で一番心に残ったのは「休み山・鷹山」の存在。
満員電車の中のような狂乱の前祭宵山と一転し、静かな後祭の宵山で聴いた鷹山のお囃子。
長い歴史を思い、復活までがんばれ!と、心にしみる演奏でした。
その思いが今回の取材に繋がり、鷹山復活を目指す公益財団法人 鷹山保存会 理事長・山田純司さんに現在の状況についてお伺いすることができました。
◆鷹山を支える囃子方
囃子方が結成して5年になり、月3回の練習を続けています。
翌日の山鉾巡行の晴天を祈る日和神楽(ひよりかぐら/移動式お囃子)もいよいよ御旅所で奉納です。
それとつい最近、囃子方の浴衣は京都市立芸大の学生のデザインにより新しくなりました。
写真:2019年の囃子方の浴衣 新デザイン
「曳子(山鉾の綱を引く人)」、「ちゃりん棒(「曳子」を先導する役)」、扇子などのデザインも京都市立芸大の学生たちが何年にもわたって行っている。
◆鷹山復興事業の状況
他の山鉾からいただいた古い部材を使い山鉾を作ります。
屋根は新調しますが、最初は大船鉾のようにまずは白木の状態から山鉾巡行スタートです。
懸装品(けそうひん)の前懸と後懸はイスタンブールのコレクターによりお譲りいただいたトルコ製の絨毯に決まりました。
胴懸(どうかけ)や天水引(てんみずひき)、漆や金の装飾もこれから。まだまだ遠い道のりです。
鷹山の授与品
お守り、扇子、ちまき、手ぬぐいと色々な授与品があります。
2019年からは鷹、犬のおみくじに加えて縁起物の「ちまき」が新しくできました。
写真:授与品の目玉はカワイイおみくじ。おなかの中におみくじが入っています。各500円。売り子さんたちの歌声「ちまき どうですか~♪」も可愛いです!
◆約200年ぶりの復活!唐櫃巡行
約200年ぶりに唐櫃(からびつ/木箱)で後祭の山鉾巡行に復帰します。
この唐櫃は近年、150年ぶりに復活した大船鉾からお借りします。
順番はくじ取らずで大船鉾の前です。2019年からは3年間、この唐櫃巡行を行います。
◆祇園祭 鷹山予定
鷹山の復活の状況を間近に見ることができる機会がたくさんあります。
京都旅行の際には是非お立ち寄りを!
写真:2019年7月24日 後祭山鉾巡行 唐櫃巡行参加を撮影
7月21日~23日 宵山行事 会所飾り/居祭
7月23日 日和神楽
7月24日 後祭山鉾巡行 唐櫃巡行参加
公益財団・鷹山保存会
604-8203京都府京都市中京区衣棚町41
075-221-3355
www.takayama.or.jp
一時期はご神体が粽を食べるというカラクリもあったようですが、古文書にはカラクリの記載はなかったそうです。長い歴史の中に謎が残るというのがまたミステリアスで惹かれます。
インタビューから大船鉾との絆や町全体で支えあう祇園祭の姿も垣間見えました。
「鷹山」の山鉾巡行復活は2022年。
不死鳥にごとく蘇る「鷹山」の復活を心よりお待ちしております!
フォトライター 佐々木美佳
散歩ような旅する毎日「京都散歩の旅」満喫中。