毎年10月23日、島根県松江市で「ガッチ祭り(祇園社神幸祭)」が開催されます。
鬼面の男たちが藁棒を振り回し、道から住宅から人まで叩きつけていく奇祭!この記事では、奇祭ハンターMacさんの2022年のフルテンション現地レポートをお届けします。
魂の絶叫フォー!島根のガッチ祭り
奇祭とは、異形との遭遇バッチコーイ! どうも、奇祭ハンターのMacです。今回の奇祭旅は島根編(23県目)。島根の奇祭ガッチ祭りが「レイザーラモンHG過ぎる!」という噂を聞きつけ、検証してきました。セイセイ、さぁ、それでは行ってみよう!
ガッチ祭りを見物するには?
東京駅からバスで12時間(約810km)、早朝の松江駅に到着。駅前のバス停からマリンプラザ行きに乗って約45分、終点マリンプラザで下車し、島根コミュニティバス野井線に乗換え。ようやく目的の神社に到着しました。
島根県と言えば、鳥取県とどっちがどっちかかつては筆者もわからなくなったものですが、出雲大社がある神の国が島根、水木しげるロードがある妖怪の国が鳥取と覚えておけば間違いないです。これ、試験に出ます。
日本海沿いの道路脇にある日御碕神社(松江市島根町野波)周辺が、今回の祭りの舞台となります。野波は、海浜公園を有し、サーフィンも楽しめるのどかで小さな港町という印象。しかし、経験が告げていた。海辺の祭りは何かと激しくなるものだと。
待つことしばらく。11時頃になって、いよいよ天狗率いる「ガッチ軍団」が神社から登場。パンドラの箱が今、開かれた。
下は子どもの豆ガッチから、上は86歳の最長老まで、年齢構成も様々なガッチたち。
「フォー!」っと奇声をあげ、人を襲う鬼どもの恐ろしい所業を下の動画でご確認ください。藁の棒で叩かれ、情けない悲鳴をあげる謎の男の声が聞こえるかもしれませんが、気のせいです。
島根の奇祭、ガッチ祭り。神様が里帰りする際に通る道を、ガッチと呼ばれる鬼どもが、スッポと呼ばれる藁の棒で清めて廻る祇園社神幸祭である。奇声を上げ、人にも襲いかかってくるゾ。異能の鬼じゃな。毎年10月23日に開催。 pic.twitter.com/VHTGoFJvjJ
— 奇祭ハンター まっく (@Mac40626899) November 2, 2022
まさにレイザーラモンHGばりに「フォー!」という奇声をあげ、襲いかかってくる鬼たちの様子が確認できます。ガッチ祭がレイザーラモンHG過ぎる!という噂はガチでした。しかし、どうしてこんな奇祭が生まれたんでしょう?
気になるガッチの語源とは?
ガッチ祭りの正式名称は、祇園社神幸祭。無病息災と五穀豊穣を祈ります。祭りの早朝、神幸の通り道に潮で清めた海砂を敷いて、準備完了。神様は穢れた地面を直接踏んで歩いたりしないのだ。
そしてガッチとは、一年に一回日吉神社へ里帰りする氏神様の通り道を「スッボ」(シッボとも)と呼ばれる藁の棒で清める神の使い(なおガッチの語源は徒歩を意味する「かち」が変化して今の「がっち」になったのだとか)。道だけでなく、家も人もバシバシ叩きます。
襲いかかる前、道を叩いていたのは威嚇していたわけではなく、道を清める意味があったわけですな。ちなみに、写真の「鼻ぺちゃ面」は最も足が速く、地元で最恐と怖がられているのだとか。
余談ですが、中国地方の鬼神文化は興味深い。島根ではガッチだが、広島ではやぶ(呉)やマッカ(小屋浦)と呼ばれる鬼が出現。また岡山ではべちゃやベッチャーと呼称される天狗面が現れます。いずれも棒状の何かでシバキに来ます。
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そしてガチのリアル鬼ごっこが始まる!
ガッチが行列で丘の上の神社に参拝した後、いよいよ各ガッチが散ってガチに文字通りの「リアル鬼ごっこ」が始まります。従来は鬼ごっこが6時間続きますが、3年ぶりの開催となった今回は2時間短縮となったようです。
一目散に逃げだす子どもたち。ホント、子どもにはトラウマ級の怖さよ。
何たって、捕まえるとお尻をバシンと叩かれますからね。
ガチ泣きの子どもや老人には丸めた藁をチョコんと頭にタッチするだけ。やだ、優しいかよ。
しかし、成人にはノー容赦。ガチでお尻をねらいにいきます!
見物に来ていたフランス人女性が棒を奪い返し、逆襲を始める場面も。ご時勢ですな。
ガイアが俺にガチでいけと囁いている!
仮面好きガチ勢として外せないのは、ガッチ面の多彩さです。鬼も般若も、獅子も天狗もみんなガッチ。何せ覆面でもOKなのだから。とにかく顔を覆った「異形」はみんなガッチなのです。
このあたり、天狗→行進or修験道、鬼→悪神、獅子→舞いと、明確にキャラづけがガッチガチに固められた後世の祭りと比べ、いかにも古い祭りの形態という感じがして、異人(まつろわぬもの+もののけetc)や客人(まれびと)へのロマンを感じますな。
それでは、ここからは私が尻をバシバシ叩かれまくる犠牲と引き換えに撮った、神の使い・ガッチたちのグラビア写真をお届けします。メンズナックル風のキャッチコピーもつけておきますね(※なお、基本ガッチは「フォー!」以外はしゃべりません)。
俺の行き先? あの海にでも聞いてくれ!
百の言葉より残酷な俺という説得力
5秒だ。野郎を倒すのも女をオトすのもな
ガチって言葉は俺だけに使え!
悩むな!迷うな!俺という正解だけを信じろ!
仮面好き・神使好きガチ勢にはたまらんガチの奇祭、ガッチ祭りはいかがでしたか? 写真からガッチたちの心のポエム(魂の絶叫)が自然と聞こえてきたあなたはもう、立派な奇祭ハンターです。
ガッチ祭りは、毎年10月23日に開催。それでは、次の奇祭旅でお会いしましょう。
今回のお食事ジャパン
オマケ。今回は、松江駅前の居酒屋「根っこ」さんで王禄の三種飲み比べセットを選択。王禄と言えば、島根を代表する日本酒の銘柄。複雑味ある旨さで通も唸らせ、品質管理が行き届いた良店にしか卸さないこだわりでも有名。
この日は超王禄、王禄80%、丈径blue(たけみちブルー)の三種を試飲。酒の肴は、名物の松江おでんとしじみ汁で。極上の日本酒と海鮮系のコラボは、地方旅ならではの醍醐味ですよね。
実は宍道湖(しんじこ)を擁する島根のしじみは、日本三大しじみの一つ(他は茨城の涸沼と青森の十三湖)。また、お土産には出雲名物の「ぜんざい」を買って帰りました。ぜんざいは、旧暦の10月に出雲大社で行われる神在祭(かみありさい)で振る舞われた神在餅(じんざいもち)が原型。じんざいが出雲弁(ズーズー弁)で訛ってずんざい……、ぜんざいとなったのだとか。これ、ガチな!