長野県池田町に鎮座する「池田八幡神社」。
例年9月には華やかな山車が町内を巡業し、お囃子の音色が響き渡る秋季例大祭が行われる。故郷を離れて暮らす人も、お祭りの時には必ず帰省すると言われている賑やかなお祭りだ。
2020年の本年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により多くの祭りが中止となる中、ここ「池田八幡神社」では形を変え、秋の例大祭が行われる。
祭りの開催を決定した宮司へのインタビューを通し、コロナ禍における祭りの開催と、込められた想いについてお話を伺った。
目次
池田八幡神社秋季例大祭について
池田八幡神社の秋季例大祭は、毎年9月23日、24日の2日間にわたって日付固定で行われる祭り。
見どころは華やかな8台の山車と、2艘の舟型の山車(オフネと呼ばれる)の町内巡業だ。屋台に乗り、運行を指揮するのは氏子の若者たち。山車を曳くのは年配者。賑やかなお囃子の音色が鳴り響く中、いよいよ陽が落ちて提灯がともる頃になると、祭りの熱気は最高潮を迎える。
就職や進学で地元を離れて暮らす人も、祭りの時期になると帰省する人が多く、この地域出身者にとってのアイデンティティ=池田八幡神社の秋季例大祭と言っても過言ではない。地域の人に親しまれ、愛されているお祭りだ。
コロナ禍で形を変えて行う「祭り」とは?
-2020年の今年は、例年通りの祭り開催は難しいのでしょうか??
平林宮司)2020年の今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、中止するお祭りもありますが、9月に行われる池田八幡神社 秋季例大祭では、形を変えて実施する予定です。
もちろん「密」を避ける意味で、例年行われている山車の運行は中止。地元の小学生に浦安の舞を奉納していただくのですが、練習が出来なかったため中止となります。
今回は特別に普段は非公開としている、佐久間象山が書いた大幟を特別に拝観していただこうと考えています。
また、祭り期間中限定の御朱印も頒布する予定です。
有志の方による祭りのライブ配信も実施する予定なので、ぜひ例年とは違う祭りを「密」に配慮した上で楽しんで頂きたいと考えています。
「形」を変えても「本質」は変えない
-「形」を変えることについて、歴史のあるお祭りにおいては難しい面もあると思いますが…?
平林宮司)本質を踏まえていれば、時代に合わせて形を変えることは問題ないと思っています。
私が取り組んでいる「御朱印さんぽ」についても、普段神職が常駐していない神社なので、参拝したことが分かるような写真を提出いただくことを条件に、御朱印を授与しています。写真が当たり前に撮れる時代でなければ出来なかったことです。
昔は神事を行う際に、木に文字を書いてご奉納していたものが、今は紙に代わった。もしかしたらデジタル端末の時代が来るのかもしれません。電子マネーでお賽銭を奉納する神社も出てきていますしね。
もちろん変えてはいけないことはしっかり守りますが、大切なのは「本質」は何なのかと言うことだと思います。
コロナ禍は、「本質」に立ち返る契機
-コロナ禍の本年、規模縮小しても祭りを開催する意義をお聞かせください。
平林宮司)コロナ禍の本年は、例年通りのお祭りの開催は出来ない。ある意味で「当たり前」と考えて行ってきた行事の一つ一つの「本質」をとらえ直す機会でもあると思うのです。
以前にある神社で、担い手不足で獅子舞が奉納出来なかったことがあるんです。当時はブラウン管テレビの時代だったのですが、かなり大きなテレビを用意して昔の獅子舞の映像を流した。映像を流すことで、代わりにしようと考えたんですね。
でもいざ映像を流してみると、それを観た氏子さん達が、「これじゃあやっぱりだめだ」「ちゃんと舞って奉納しよう」となって、獅子舞は若連という青年団が奉仕するんですが、OBの皆さんが立ち上がったんです。このように出来ない状態になってみて初めて気が付くこともあるんですね。
今年は「コロナ禍」という制約の中で、いかに楽しんで開催するかということを氏子の皆さんと知恵を絞ってきました。工夫を凝らす中で、一つ一つの行事が持つ本来の意味を見直し、本質に立ち返る良い機会を得たと思っています。
故郷の象徴、原風景としての「神社」と「祭り」
長野)疫病退散「アマビエ御朱印」を限定授与 [新型コロナウイルス][朝日新聞]https://t.co/6yjhwdKubz pic.twitter.com/gbfXKfG4er
— 長野県のニュース・天気・交通(ニュース) (@naganoNTK) September 2, 2020
-平林宮司は各メディアへの取材対応も積極的に応じていらっしゃると伺いましたが、その理由についてお聞かせください。
平林宮司)先日、90代のおばあさんとお話をする機会があったのですが、その方は故郷を離れて久しい。「私が心に残っている風景は、雪景色と神社のお祭り」ってお話されてたのが印象的で。
このおばあさんのように、人の心の原風景になれる存在が神社であり、お祭りであるとしたなら、故郷を象徴する存在として神社が担う役割は大きいと思っています。
そのためにも、いかに神社が魅力のある場所でいられ続けるかがポイントですね。
また、地域外からの注目が集まることは、地元の人のやりがいにつながると思うんです。注目してもらって、そして実際に地域外から人が来てくれると地元の人は誇らしくなる。
神社に足を運んでお参りをする人が増えれば、神様もお喜びになるし、地元の人も「せっかく来てくれる人がいるのに、草ボウボウじゃいけない」となって手入れもする。まずは知ってもらうためにも情報発信を積極的に行っています。
2020年の池田八幡神社秋季例大祭は、ライブ配信を行いますので、地域外の方にもぜひ視聴していただいて、来年以降はぜひ神社にお参りしていただければと思います。
2020年は、ライブ配信も実施
2020年の池田八幡神社秋季例大祭は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に配慮し「密」を避けた形で催行される。合わせて平林宮司が管理するFacebookページにてライブ配信を実施予定だ。
【9/23(水)前夜祭】
20:00頃~
巫女装束の小学6年生女子による神事のご奉仕
20:30頃~
女性神職による「浦安の舞」の奉納
【9/24(木)例祭】
13:00頃~
神事
14:30頃~
新生児の健勝祈願(土俵にて、神職がお祓いを実施)
14:00~16:00
佐久間象山によって書かれた「大幟」原本(池田町文化財)の限定公開
【限定のご朱印の授与】
(各限定50組・2枚一組1000円 書き置きのみ)
9/23 17:00~21:00
9/24 10:00~16:00