京都東山花灯路は祇園で毎年3月に行われるライトアップのイベントだ。八坂神社では舞妓が踊り、清水寺までの道のりを提灯の灯りが足元をほんのりと照らす。その中でも印象的なのは、古来より縁起が良いとされている「狐(きつね)の嫁入り巡行」。
その昔、高台寺周辺は鳥辺野と呼ばれ狐火がよく見られた。花嫁が夜に嫁ぎ先まで歩いて行く提灯行列が狐火に似ていると「狐の嫁入り行列」といわれるようになったのが名前の由来だ。
「東山花灯路に来ている人を驚かせたい」と始まった「狐の嫁入り」。チリンチリンと鈴が鳴り、どこからともなく金の人力車に乗った妖しい雰囲気の狐の嫁入り行列が祇園を静かに通りすぎていく。
通常は知恩院から高台寺までの道のりで行われるが、2020年は新型コロナウイルスにより東山花灯路は中止になり、2021年は高台寺独自で狐の嫁入りのみ催行された。安全を考え、今まで口にくわえるタイプだった狐のお面は手持ちになり、ルートも大谷祖廟から「ねねの道」を通って高台寺へというショートカットコース、時間も早い時間に行われることになった。この変更でちょうど夕焼けの時間帯、さらに今年は桜も咲いているという今までにないレア感も楽しめた。
この狐の嫁入りの行事を行っている高台寺は豊臣秀吉の菩提を弔うため、北政所が東山霊山の山麓に開創したお寺だ。そんな由緒あるお寺で狐の嫁入りの主役である嫁の支度は行われる。驚きなのは狐の面をするのに結婚式と全く同じという豪華さだ。
そして狐の嫁の役は、年齢は関係なし。この狐の嫁入りに独身の人が選ばれるとご縁があるといわれている。
京都の祇園、しかも高台寺。そこで白無垢を着られる。女性にとっては夢のようなチャンス。究極のおひとり様“婚(コン)”だ。これからも多くの方に狐の嫁入りの楽しさや幸せが続きますようにと願う。