2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
提灯が夜空を荒れ舞う奇祭
JR東北本線に乗り、上野から北上すると、埼玉県から栃木県へ進む際、一瞬だけ茨城県へ入ることに気付くだろう。唯一、茨城県内で駅があるのが古河(こが)である。古河は関東平野のほぼ真ん中に位置し、利根川、渡良瀬川と二つの大きな河川に面することから水運で古くから発展してきた街だ。さかのぼる室町時代後期には、室町幕府から派生した古河公方が置かれるなど権力者から重要視されてきた土地でもある。そんな古河で12月初旬に行われるお祭りが、関東の奇祭として名高い「古河提灯(ちょうちん)竿もみまつり」だ。
提灯竿もみ、という珍しい行動がお祭りの中心となっている。長さが20メートルもある竹竿に、火の点いたロウソクが入った提灯が付けられており、それを各町がぶつけ競い合うことから奇祭と呼ばれている。
もともとは、江戸時代にこの辺りが古河藩と呼ばれていた時代に、周辺七ヶ村の神社を神事で回り帰ってきた神官を出迎えるために提灯を立てていたそうだ。それが寒い時期で、身体をもみ合っていたことから提灯竿もみの原型ができたんだとか。なお当時この行動は「お帰り」と呼ばれていた。それが今では男たちが無礼講でぶつかり合い、闇夜に火の粉を飛ばし合う、まさに奇祭となって伝わっている。
日も暮れた午後5時すぎ、子どもたちが小さな提灯を持って街を回るところからお祭りはスタートする。その周りを彩る出店では、焼きそばなどの定番グルメに混ざりひときわ目を引く真っ赤な食べ物がある。「煮イカ」だ。なんでも古河周辺のお祭りでは定番だそうで、多くの人が買い求めている。古河は内陸の街であり、水運が発達していたことからイカが重宝されてきたのだろうか。
提灯竿もみの会場へ進むと、男たちが激しく提灯をぶつけ合っている。提灯の表面は和紙で作られ今年の流行を取り入れたイラストが描かれており、見ていると1年の振り返りにもなりおもしろい。提灯の下に目線を下すと、男たちの真剣な顔がある。12月寒い時期ではあるが、熱いお祭りだ。