本州と四国を繋ぐ「しまなみ海道」
本州と四国の間の瀬戸内海の海原には、無数の島々が浮かび変化に富んだ風景が満ち溢れています。特に広島県尾道市と愛媛県今治市の間には狭い間隔で島が浮かび、「しまなみ海道」が作られ船に乗ることなく本州と四国を往来することができます。「しまなみ海道」の橋が隣接する島々と陸続きとなった生口島の耕三寺は、季節ごとに異なる光景を見せてくれます。例年11月中旬から12月上旬にかけては紅葉が秋の彩りで包み、「耕三寺・紅葉狩り」が開催されています。
瀬戸内海に浮かぶ生口島
瀬戸内海に浮かぶ生口島は尾道市に属し、耕三寺へは尾道駅から路線バスで訪れることができます。バスは尾道の市街地を抜け、尾道大橋で向島、因島大橋で因島に入り、最後の生口橋を渡れば生口島です。
生口島は豊かな自然に恵まれていますが北部の集落、瀬戸田には数多くの人々が暮らしています。集落の中心に耕三寺が個性的な伽藍を構えています。
全国各地の著名な歴史的建造物を模した堂宇で埋められる耕三寺
耕三寺は、大正から昭和の時代に大阪で活躍した実業家の金本耕三によって、1936年から建立が始められました。境内には全国各地の著名な歴史的建造物を模した堂宇で埋められ、まるで博物館のようです。参詣者を最初に出迎える山門は、京都御所の紫宸殿の御門がイメージされています。山門の次に潜る中門は、奈良法隆寺の西院伽藍を原型としています。
中門を潜って入る境内の下段の中央には礼拝堂が設けられ、その後ろに五重塔、本堂が一直線に並んでいます。
境内の中段に建つ五重塔のモデルは、奈良の室生寺の五重塔です。
五重塔の背後で境内の中段と上段を繋ぐのが孝養門です。入母屋造りの堂々とした構造に華麗な彩色が施された姿が目に写ると、日光東照宮の陽明門が思い出されることでしょう。
孝養門の下からは総大理石造りの大礼壇が設けられ、その先が本堂です。本堂は京都の平等院鳳凰堂を模して建造されました。境内には次から次に日本の歴史を物語る建造物が登場するので、寺院にいるというより博物館にいるような錯覚に襲われそうです。
本堂を囲む境内の上段にも数々の堂宇が歴史的な雰囲気を漂わせています。本堂の西の至心殿は京都の法界寺の阿弥陀堂、多宝塔は大津の石山寺の多宝塔、東の八角円堂は奈良の法隆寺の夢殿を原型としています。
秋色の化粧をまとった建造物
個性的な姿を見せる堂宇に目を吸い寄せられてしまいますが、境内を包み込む紅葉を見逃すことはできません。秋色の化粧をまとった建造物は美観を倍増させています。
瀬戸内海を挟んで向かい合う広島県尾道市と愛媛県今治市の間の島々は橋で結ばれ、車や自転車で「しまなみ海道」を走って海を渡ることができます。尾道市から3つ目の島となる生口島には、境内が博物館のような耕三寺が建立されています。全国各地の歴史的建造物を模した堂宇は、例年11月中旬から12月上旬にかけて紅葉で鮮やかに彩られます。