出雲の大国主命とご同神の大國魂大神を祀る府中の森の由緒正しい神社である大國魂神社。そこで毎年、栗の収穫期である秋に行われるのが「くり祭」です。江戸の里神楽の奉納や山車の巡行のほか、夜には、参道に並ぶ行灯に灯りがともされる幻想的な雰囲気や、多くの出店があった露店グルメもあり、味わい深い時間を過ごすことができました。2022年のくり祭の様子をレポートします。
目次
大國魂神社ってどんな神社?くり祭とは?
大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)は、京王線府中駅南口から徒歩5分ほどのところにある緑豊かな神社です。出雲の大国主神とご同神の大國魂大神を、武蔵国の守り神としてお祀りしています。この大神は大昔、武蔵国を開かれて、人々に衣食住の道を教え、医療法やまじないの術も授けたとされ、福神、縁結び、厄除け、厄払いの神として著名です。
厄除け・厄払いは東京府中の大國魂神社 (ookunitamajinja.or.jp)
そんな大國魂神社で9月27日、28日に行われる「秋季祭くり祭」。昔この府中のあたりは栗の名産地であったこと、その栗を徳川家に献上するようになり、収穫の時期と神楽の時期が同じころであったことから祭りが行われるようになりました。祭りでは神楽、各町会から出る山車、参道に並ぶ行灯が楽しめます。
\大國魂神社について解説した記事はコチラ/
3年ぶりの露店も!2022年くり祭、会場の様子は?
筆者は、2日目の9月28日にくり祭へ行ってみました。着いたのは午後3時ごろ。府中駅を降りて、大國魂神社へと向かうケヤキ並木に、街の方の絵が飾られています。
3年ぶりに露店も出て開催されるくり祭を楽しみに待っている市民の皆様の気持ちが感じられます。神社の鳥居が見えてくるとその手前に花笠や露店が見えました。
参拝客も多数訪れている様子。
露店の中においしそうな栗も発見!茹でたものもあります。家に帰ってすぐに食べれるのが嬉しいですね。
厳かな本殿でお参りをして、清らかな気持ちに。
神にささげる江戸里神楽
本殿に向かって右側のお社、松が描かれた幕が張った舞台の前に椅子が並べられています。
その数70席ほど。江戸の里神楽山本頼信社中による奉納神楽が、午後5時と午後7時に行われると看板に記されてています。午後4時ごろから徐々に席がうまりはじめ、開始10分前くらいにはほぼ満席の状態になりました。
その頃、明かりが灯り、太鼓と笛のお囃子がはじまります。
午後5時の演目は墨江大神。国生みの神、伊邪那岐命がみそぎの時に生まれた底筒男命(そこつつのおのみこと)・中筒男命(なかつつのおのみこと)・表筒男命(うわつつのおのみこと)とが、それぞれ神に祈りをささげる踊りを披露します。
神楽を見るのは初めてでしたが、解説も入るので、わかりやすく見ることができました。それぞれ弓矢や扇、剣などを持ち、踊っては神前に二礼二拍手で祈りをささげる様子に厳粛な気持ちになります。
始まってからは、だんだんと椅子の周りにはたくさんの人が集まり、最終的には150人くらいの方が神楽を楽しんでいました。また、お面をつけて、腰を落として踊る神々たちの様子を、小さい子供たちが真剣に見ている表情も印象的でした。
踊りは約40分ほど。気が付くとあたりはすっかり暗くなっていて、境内の行灯もともり、神秘的な雰囲気に神社の表情がかわっていました。
けやき並木が非日常に…夜に映える山車
露店の向こう側に光が見え、あれが山車かと追いかけると、中でお囃子と、ひょっとこのお面をつけた人が踊っているのが見えました。
この山車は、ケヤキ並木のほうにゆっくりと動いていきます。山車を追いかけながらけやき並木のほうへ行くと、等間隔で何台もの山車がとまり、同じようにお囃子を演奏していて、その様子を観客がそれぞれ楽しんでいました。町全体で山車とお囃子を楽しむことができるのかと感動です。
9基の山車が集まってのお囃子との競演は、くり祭の見どころの一つ。山車の運行は陽が沈む頃にはじまりますので、時間を長めにみておいて、昼夜両方のくり祭を堪能しましょう。
\大國魂神社も例大祭「くらやみ祭」の様子のわかる記事はコチラ/
3年ぶりのくり祭の露店グルメは?
暗くなってきて、家族連れや近隣の中学生、高校生の楽しそうな様子が目立ちます。
3年ぶりの露店も大繁盛。どこも盛況ですが、大勢並んでいるのは竜巻ポテト。
どんなものなのか並んでみました。くるくるしたジャガイモが串に刺さっています。味付けも選べるとのこと。先に並んでいる中学生くらいの女の子を参考に、塩味にしてみました。なるほどいただいてみると、ポテトチップスみたいな味わい。串にささっていて食べやすく、映える要素もあることでの人気なのでしょうか。
続いて、餅が焼かれている様子に惹かれて、串焼き団子を。こちらも味付けが選べます。田楽みそにも心惹かれながらも、王道のみたらしにしてみました。
あまじょっぱさと熱々のおもちがおいしい。
他にたこ焼きや焼きそば、ベビーカステラなどたくさん種類があります。またスーパーボールすくいなど、小さい子供に人気の露店もありました。
神にささげる祈りの気持ち 今年の秋も健やかに
府中・大国魂神社のくり祭は、近隣の人たちの楽しそうな様子であふれていました。神に祈りをささげる伝統が、今も人々の日常生活の中で、自然に、楽しく息づいている… 「日本も捨てたものではないな」と言う気持ちになってきます。
集まっている人々の心に、山車の楽しさ、行灯の明かり、神楽の厳かさが、大切な人との楽しい思い出とともに残って、そして次世代に受け継がれていくのでしょう。そんなすこやかな継承を思う、街と一体になった心あたたまる祭りでした。
府中は新宿から約三十分、来年はこのくり祭にぜひ遊びに来てみませんか?