2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
田舎の景色と華やかな飾牛
田舎の景色を思い浮かべた時に、田んぼをイメージする読者は多いのではないだろうか? ここではお祭りで田舎の景色を楽しめる壬生の花田植を紹介したい。
2019年6月第1日曜日、広島駅から車で走ること約1時間、私は広島県北広島町の壬生の花田植の会場にいた。
東京から1時間のベッドタウンで青春時代を過ごした私と、生まれも育ちも京都の妻のコンビで、月に1回、お祭りを理由に遠出するのが共通の楽しみである。
候補地プレゼンの際、「単一地でユネスコ無形文化遺産に登録された珍しいお祭り」という理由を挙げ、宮島に行きたかった妻の思惑も相まって目的地に選択されたわけだ。
人口1万8千人の北広島町には、この1日のお祭りに6千人の来場者があるそうだ。江戸時代に盛んに行われたこの行事は、明治後期には多くの地域で廃れてしまった。それを昭和に再興させ、平成にはユネスコ無形文化遺産に登録。そしてこの令和にも受け継がれている。
水田に飾牛や早乙女が入ると一気に場が華やぐ。中国地方の田園風景の中に、歌声や音楽、牛の声が広がっていく。最高潮に盛り上がるこのシーンの中でさえ、のどかさや懐かしさを感じることができるのが魅力である。
なお、会場に行く前に飾牛の待機所に立ち寄ることをお勧めする。朱、青、橙、緑などに装飾された飾牛たちがのんびりスタンバイしている様は、どこか動物園とサーカスを掛け合わせた楽しみを感じられる。少年は巨躯に心を踊らせ、少女は円らな瞳に愛着を感じるはずだ。
ある映画作品にこんなフレーズがある。
「田舎の景色ってのは、みんな人間が作ったもの。百姓は絶えず自然からもらい続けなきゃ生きていかれない。(この景色は)自然と人間の共同作業の風景」。
生まれ育ったわけでもないのにふるさとって気がする。魅力ある観光地が多い広島。訪れる際には、壬生の花田植もご覧いただければ日本の田舎を体感できること、間違いなしだろう。