例年7月の第二日曜日に、東京都大田区大森東の嚴正寺(ごんしょうじ)にて、「水止舞」という祭が行われます。
このお祭り、知る人ぞ知る強インパクトの奇祭として愛されています。この記事では、奇祭ハンター・Macさんの過去の現地レポートをお届けします。
「水止舞」見物記!
想像してください。
雲ひとつない眩しい真夏の炎天下。ギラつくような灼熱のアスファルト。そこに、簀巻きにされて1時間以上も転がされ、しかもホラ貝を吹き続けなければいけない。
そんなハードボイルドな祭りが、この現代日本に今もなお存在すると言ったら、
あなたは信じますか?
どうも。奇祭ハンターのMacです。
今回は今にも「こ、殺す気か~~~」と聞こえてきそうな
大森の水かけ祭り・水止舞(みずどめのまい)をハント!
毎年決まって7月13日に大田区の嚴正寺(京浜急行大森町駅より、徒歩約8分)
で行われるこの祭り。
一言で言うと、成人男性が竜の化身となって水を浴び、竜の気持ちになって、水をかけられている間も勢いよくホラ貝をふき続けるという雨止めの儀式を行いながら150メートルほどの距離を約30分かけて移動し(これを「道行」と言う)、最後は3体の獅子が雨止めの舞を踊ってフィナーレ(これを「水止舞」と言う)という(全然一言で言えねえ!)。
まあ、そういうお祭りなのです。
実は水止舞は、今から約700年前。後醍醐天皇の頃の住職・第二世法密上人が行った長雨止めの祈祷に由来するのだとか。
かいつまんで話すと、時は今から遡ること700年前。
余りの日照り続きに、雨乞いをしたところ、今度は雨が降りやまなくなり、
今度は「もう雨はいいから止めてくれ~!」と祈願することに。
(神頼みも上手く行きませんね)
具体的には、獅子の仮面を3つ作って「水止(しし)」と命名(獅子は水止(しし)に通じるという言霊です)。
それを農民に被せて舞わせ、
笛や太鼓、法螺貝を吹かせて、天に向かって踊り、見事、長雨を止めたのです!
(それ以来、この地では毎年「水止舞」を奉納する習わしになったのだとか)
まあ、口で説明するより、百聞は一見に如かず!
実際、飲み屋で友達にこの祭りについて説明しましたが「はぁ? 鼻からビール流し込んでホラ貝吹かせたろかぃ!」って顔されましたからね(汗)。早速、現場に行ってみましょう。
竜神を模して、藁で編んだ縄。「聖闘士星矢」の作者、車田正美先生はここから
青龍の聖衣(クロス)を思いついたという噂(ウソです)。
見よ、この雄姿。竜の化身となるため、藁(聖衣)で身を包み、ホラ貝を装着。
「聖闘士星矢」好きならば、この「燃えよコスモ、俺のセブンセンシズ」がきっと見えるはず。
ってか、竜の化身というより、この圧倒的な人身御供感。
悲壮な生贄臭がガクブルで止まりません(どうしてこうなった!)
このホラ貝も決して「こ、殺す気かぁぁぁ!」と悲鳴を上げているわけではなく、
水をかけられ、活気づく竜平、もとい竜神の雄叫びを表しているのです。
(そう。「ダチョ〇倶楽部」に見えるというあなたの眼が曇っているのです)
(そう。上島竜〇の断末魔が聞こえるというあなたの耳が汚れているのです)
ところで、何しろ撮影は命がけ?でした。
儀式のために水をかける地元の人(特にちびっ子)は、撮影班のことなんて考慮してくれません。
ええ。こっちが勝手に行って、勝手に写真を撮ってるのだから当然です。
にも関わらず、現場には多くのおじいちゃん撮影班が!
おじいちゃん撮影班との熾烈な陣取り合戦も水面下で行われていたのでした。
しかも、彼らはカッパを着込んでの完全防備。年季がちがい過ぎる!
(この時点で嫌な予感に気づくべきでした……。※この後、後方からのバケツによる水責めで私はびしょ濡れになりました)
① バケツに水を汲んできて……。
② 放物線の弧を描くように、水を上方に……。
③ 真夏の青空に飛び散る水しぶき。
しかし、真面目な話。当日は炎天下。
想像してみてください。
炎天下のアスファルトに、藁で簀巻きにされて30分以上も転がされたとしたら?
そう。照りつける日差しにより、地面はまさに灼熱。
豪快に水を巻き、アスファルトを濡らすことは演者の体を守るためにも
大切なことなのです。
簀巻きにされた男たち(竜神)の後ろには、笛師連や花籠が続きます。
「後は頼んだぜと」と言わんばかりに、ここで選手交代。後半の「水止舞」へ。
最後は、花籠ふたりを従えた赤い面の雌獅子と、黒い面の若獅子・雄獅子が華々しく舞ってフィナーレ。
毎年7月14日、東京都大田区の嚴正寺で約700年続く「水止舞」じゃ。す巻きの男たちが竜の化身となり、水をかけられ、ほら貝を吹いて雄叫びをあげるゾ。その昔、降り続く雨を止めてくれるように龍神に頼んだのが由来。最後に水止(しし)と獅子をかけた水止舞を踊るぞ。#水止舞 #好きな祭りの話をしよう pic.twitter.com/e1DFavtAIG
— 奇祭ハンター Mac (@Mac40626899) April 17, 2020
炎天下に耐え、約1時間続いた演武を最後まで見終わると、
最後に霊験あらたかな獅子の面を被せてくれますよ。
「水神や竜神に関する祭りを探しています」
「公道に転がされるのは、正直言うと、そんなに嫌いじゃない」
「逆境に耐える系男子が好きです。ただし水責めに限る」
というそこのあなた。
ふたりの屈強な男子が竜神となって文字通り体を張る「水止舞」(みずどめのまい/ししまい)。
大田区民のみならず、おすすめです!