東日本大震災の1年後から毎年3月11日付近の日程で、福島県いわき市で開催されているなこその希望プロジェクト。今年は3月10日(日)に岩間防災緑地で開催されます。
当日のスケジュール
会場:岩間防災緑地 13:00開場
※豚汁の無料サービスあり
【第一部】
14:00 関西からの元気玉(木偶舎・篠笛・和太鼓ほか)
14:30 法要(真言宗智山派)
14:46 黙祷
15:00 モニュメント名称発表並びに表彰式
15:30 和太鼓演奏(我道武蔵)
【第二部】
18:00 キャンドル・イルミネーション点灯
19:30 希望の花火打ち上げ(湘南花火)
今回は、なこその希望プロジェクトを運営している特定非営利法人 勿来まちづくりサポートセンターの舘 敬(たち たかし)理事長に色々とお話を伺いましたので、ライターの私、蛭田と対談形式で書かせていただきます。
蛭田:本日は宜しくお願いします。
舘理事長:宜しくお願いします。
蛭田:始めに、なこその希望プロジェクトを始められた切っ掛けを聞かせて頂けますか?
舘理事長:まず、なこその希望プロジェクト自体は震災後から始めた事業になりますが、母体としては、2006年から法人格を取得し、勿来の地に芸能文化を根付かせようと勿来まちづくりサポートセンターとして始めたものになります。翌年から約4年間、能楽などの公演を誘致したりと活動してきましたが、2011年3月11日、東日本大震災。更に、勿来地区が震源地である4月11・12日の地震に見舞われました。(こちらの方が3/11よりも酷かったと言う人も多いです)
激動の1年間を過ごし、まだ震災の爪痕も残る状態だったのですが、いつまでも落ち込んでいても仕方がないと考え、芸能文化の普及はひとまずお休みをし、なこそ復興プロジェクトと言う名称の団体を作り、3/11に合わせて始めた行事がなこその希望プロジェクトです。周囲からは、まだ時期尚早と反対の声も多かった様です。
蛭田:なこその希望プロジェクトのスケジュールには演目がありますが、こちらは出演者に依頼をして呼んでいるのでしょうか?それとも出演者自身が自分達でやりたいと願い出て来てくれているのでしょうか?
舘理事長:こちらに関しては、今までの御縁により来て頂いています。前述の勿来まちづくりサポートセンターで芸能文化の普及を行っていた際に能楽などで出演してくれた方々です。震災の時もいち早く「何か力になれる事があれば」とご連絡を頂きました。
蛭田:また、なこそ復興プロジェクトが7月に開催しているライフセイバーの育成を行う海フェスのイベントでも思ったのですが、なこその希望プロジェクトでは多くの大学生がボランティアメンバーとして参加している様ですが、彼らはどの様な関係で来てくれているのでしょうか?
舘理事長:彼らは芝浦工業大学、つくば大学、日本女子体育大学などから来ている学生達です。最初の切っ掛けは、震災当初に役所と地域住民との仲介役としてコンサルタントをしていた方と知り合いになった事です。その数年後に連絡を取り合った所、大学の教授に就任した様でボランティアについて話をしてみると自身のゼミの生徒で希望者を募ってくれました。
蛭田:あと神奈川県の湘南花火の辻 博(つじ ひろし)さんによる花火も打ち上げられていますが、こちらに関しては、どう言った繋がりで関わる様になったのでしょうか?話に聞くと花火の料金も掛かっていないと聞いているのですが…。
舘理事長:湘南花火の辻さんは、ほとんど飛び込みです。震災後、彼はいわき市内の方で「自分は花火屋なので花火で何かボランティアをやらせて欲しい」と言いに行ったそうですが、なかなか該当する様な所がなく「もしかしたら、勿来の方であれば…。」と言われたそうです。なこそ復興プロジェクトのメンバーともすぐに仲良くなって、一緒に宴会をやったりと打ち解けてくれて本当にありがたい存在です。
蛭田:僕も湘南花火の辻さんには、なこその希望プロジェクトが切っ掛けで色々とお世話になっております。熊本の震災でもボランティアに行ったりとなかなかあそこまで行動できる人はいません。本当に素晴らしい人格の持ち主で尊敬できます。花火師さんの中でも応援したい人物、No.1ですね(笑)
蛭田:また、今までは小浜海岸で開催されていましたが、今回は場所を岩間防災緑地に変更した理由を教えてください。(防災緑地とは津波が来た場合に植えた木々や敷地内の盛り土で津波の勢いを和らげたり、船などの住宅地への流れ込みを防ぐ効果、また避難所としての役割もある)
舘理事長:昨年の9月に岩間防災緑地がようやく完成しました。折角、防災緑地を作っても現地に住む人達が認識していない様では、防災の意味がないので開催場所の変更を行いました。また、7年越しの事業として勿来地区の津波被災者が実体験を20年後の未来に遺す、タイムカプセルのモニュメントの名称発表と表彰式を行う目的もあります。
蛭田:色々と貴重なお話をありがとうございます。最後に今後の目標と言うか、なこその希望プロジェクトは今後ずっと続く事業になるのでしょうか?
舘理事長:一応、復興事業については7年越しのタイムカプセル事業も完成したので、10年を一区切りにしようと考えています。おそらく2021年3月がなこその希望プロジェクトの最終回になると思います。
今後の目標は、勿来まちづくりサポートセンターが当初の目的として掲げた芸能文化を根付かせる事業に戻ろうと考えています。勿来には、勿来の関公園にある「体験学習施設 吹風殿(すいふうでん)」と言う平安時代の歌人の住まいや庭園を模した寝殿造の建物があります。
ここでは、体験学習や野点(野外でのお茶会)、歌会、伝統芸能の発表としても利用できる施設です。震災前の2009年に開催した能楽のワークショップや公演など、もっとこの施設を活用できる様な事業を考えております。
蛭田:今回、お話を聞いて色々な方との御縁があって、なこその希望プロジェクトが開催できている事を知りました。3月10日には、また撮影係として伺いますので宜しくお願いします。
舘理事長:こちらこそ今後とも宜しくお願いします。
取材日:2019年2月20日 勿来まちづくりサポートセンターにて