青森の文化を満喫できる宿「星野リゾート 青森屋」は、地域と連携する新たな取り組みとして、「ねぶた共同制作プロジェクト」を立ち上げ、敷地内でのねぶた制作を開始する。青森ねぶた祭の中止決定により、ねぶた師の方々は1年に一度の大きな制作機会を失くした。それでもねぶたを作り、人々に元気を届けたいというねぶた師の思いを支援するため、ねぶたの共同制作を発表した。ねぶたは、悪魔退散をテーマとする題材で、7月3日から制作開始し、9月末完成予定だ。
ねぶた共同制作プロジェクトの背景
2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、8月に開催予定だった青森ねぶた祭の中止が決定された。これにより、運行するはずの大型ねぶたの制作も中止となり、制作途中のねぶたは解体または保管され、ねぶた師は制作機会を失くした。青森屋はこれまで、ねぶた師をはじめとする地域の協力のもと、青森の文化を宿泊者に伝えてきたため、祭りの中止やねぶた師の状況には衝撃を受け、それでも、大切な文化を途切れさせず、地域を元気にしたいという思いから、ねぶた師と企画を相談。毎年ねぶた制作に情熱を注いできた方々が作品制作の場を求めており、ねぶたを作ることが心の支えでもあるという思いを聞き、当プロジェクトを立ち上げた。制作には、内山龍星氏、立田龍宝氏、北村春一氏の3名のねぶた師の方々に協力いただくことが決定した。
悪魔退散をテーマにしたねぶたを制作
今回制作するねぶたは悪魔退散がテーマ。北方の守り神「毘沙門天(びしゃもんてん)」、疫病退散の守護神ともいわれる「不動明王(ふどうみょうおう)」、そして、疫病除けの神として信仰される「鍾馗(しょうき)」を1台のねぶたで表現する。通常、ねぶた1台で1種類の神をテーマとするため、複数の神を同時に表現するのは稀なケースだ。
■ねぶたの大きさ:台座の幅2.5m×奥行1.5m×高さ2m予定(ねぶた自体は幅約3m想定)
■制作担当:内山氏-毘沙門天/立田氏-不動明王/北村氏-鍾馗
流派を越えた三者合作に注目
内山氏と立田氏は千葉派、北村氏は北川派という流派でねぶた制作。ねぶたの制作過程は同じでも、骨組みの組み方や色付けの手法が異なる。祭りで運行される大型ねぶたは、ねぶた師1人が1台を担当して制作指揮をとるため、ねぶた師の弟子や制作スタッフが手を加えることはあっても、流派を越えて合作することはない。今回は、青森ねぶた祭が開催されない年だからこそ、特別に流派を越えた三者合作が実現する。
今後の展望(予定)
ねぶた制作期間中、宿泊者を対象とする見学時間を設定。骨組み、紙貼り、色付けなど宿泊時期によって異なる過程を見て楽しめる。また、宿泊者がねぶた制作を実際に体験するワークショップやねぶたについて学べるアクティビティの実施を検討している。
プロジェクトスケジュール
6月下旬 ねぶたのタイトル決定、下絵完成。
7月3日 ねぶた制作開始。その後、毎週金曜、土曜、日曜に、ねぶた師1名が週替わりで制作。
9月下旬 ねぶた完成予定。完成後のねぶたの活用については未定。
ねぶた師の紹介
内山龍星(うちやまりゅうせい)氏
1976年 当時14歳で、ねぶた師の千葉作龍(ちばさくりゅう)氏に弟子入り。
1987年 社団法人青森青年会議所「浪裏白跳張順(ろうりはくちょうちょうじゅん)」でデビュー。
それ以降、31年間毎年ねぶたを制作している。
1990年 社団法人青森青年会議所「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」で知事賞を受賞。
その後、観光協会会長賞(1994年、1997年)、青森観光コンベンション協会会長賞(2006年)の受賞経歴をもつ。
<ねぶた共同制作プロジェクトに対する意気込み>
私たちもねぶたを制作したいという意思はありましたが、制作の機会がなかなかありませんでした。このようなチャンスをいただけたことはありがたく、普段はライバル同士のねぶた師も、本プロジェクトはライバルということを度外視し、協力し合って1つの良いねぶたを制作していきたいと思います。
立田龍宝(たつたりゅうほう)氏
1996年 当時11歳で、ねぶた師の内山龍星氏のねぶた小屋に出入りするようになる。
1999年 当時14歳、内山氏の弟子となる。
2013年 公益社団法人青森青年会議所「倭(やまと)し美(うる)わし」でデビュー。
2017年 消防第二分団ねぶた会・アサヒビールのねぶた制作に携わる。
毎年2台の大型ねぶた、地域・子供ねぶたも制作している。
北村春一(きたむらしゅんいち)氏
1981年 ねぶた師である北村蓮明(きたむられんめい)氏の長男として生まれる。
2007年 父、蓮明氏に本格的に師事。
2011年 大型ねぶたを制作、デビュー。その後、知事賞(2018年)、優秀制作者賞(2017年、2018年、2019年)などの受賞経歴をもつ。
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イメージ:勧善懲悪 閻魔(かんぜんちょうあく えんま)(内山龍星氏、立田龍宝氏制作)