仏教と日本文化が結びついて産まれたとされる、「お盆」。8月になると故郷に帰ってのんびりと過ごすという方も多いのではないでしょうか?
お盆は元々、中国から伝来した文化が日本独自の文化と結びついてできたものです。
そのため、地域によって過ごし方が変わったり、宗派によってやり方が変わったりするのです。
そんなお盆ですが、実は現代でも地域ごとにオリジナリティーあふれる風習や行事が残っています。
一体どのようなものがあるのでしょうか。今回は地域別にユニークな風習をまとめてみました。
目次
【沖縄】賑やかな音や踊りで家々を訪れて祖先の霊を供養する「アンガマ」
アンガマは、沖縄県石垣島など八重山地方に伝わる供養行事の一つです。
先祖代々にわたって継承されており、あの世からの使いであるウシュマイ(翁)とウミー(媼)、その子孫とされるファーマー(花子)を、この世の人々が総出でお迎えする独特な風習です。
彼らウシュマイとウミーたちは島の家々を順に巡りながら、三線(さんしん)や笛や太鼓を奏でて踊り回ります。
家の内に入るとご先祖様の霊前で賑やかに歌い踊り、祖先の霊魂を慰めます。
合間にはウシュマイとウミーが観衆に対して、あの世についてユーモラスな語り口で説法をします。
その途中、観衆がヤジも含めた問いを投げかけ、ウシュマイとウミーが機知と笑いに富んだ応えを返すという応酬が一番の見所。饒舌な語りと当意即妙の技が光る、なんとも言えない面白さがあります。
【鹿児島】集落の全員が手拍子と指笛で絆を深める「八月踊り」
八月踊りは旧暦の8月頃に開催される、五穀豊穣、無病息災を祈願するお祭りです。
昭和37年には鹿児島県無形民俗文化財の指定を受けるなど、由緒ある伝統的な文化です。
三回に分けて開催され、一回目は「新節(あらせつ)」、二回目は「柴挿(しばさし)」、三回目は「嫩芽(どんが)」と呼ばれています。それぞれ、順に丙・甲・甲子の日に執り行われるのが特徴です。
水の神様の御前で法楽を演じたあと、夜になって櫓(やぐら)のある場所で八月踊りが始まります。
列を作って家々をまわり、火を中心に円を囲んで、歌や太鼓をドンドンパチパチと鳴らします。
参加者全員でリズムを揃えて、手や指を揺らす様は非常に鮮やかです。
ちなみにこのお祭は、日頃辛く苦しい重労働に従事している農民の「ハレの日」最大の娯楽としての役割や、若い男女の貴重な巡り会いの場でもあったそうです。
【茨城】龍に見立てた稲わらの束を担ぎ先祖を送迎する「盆綱」
茨城県の日立地方には、「盆綱(ぼんづな)」と呼ばれる独特の風習があります。
地元の大人たちがお盆前に稲わらの束で太い縄を作り、白装束に身を包んだ子どもたちがそれを持ってご先祖様の墓所から出発し、家々に神様の霊を送り届ける土着の宗教行事です。
家の人々は桶や手ぬぐいを用意して、ご先祖様の御霊を迎え入れます。
霊魂を形象化したものとして、龍や蛇に似せた稲わらの束が使用されるようです。
古くから伝わる水神様信仰が綿々脈々と受け継がれて、今なお根付いているのです。
【群馬】真夏の闇夜に丸い炎の軌跡が浮かびあがる「大日向の火とぼし」
群馬県の南牧村(なんもくむら)でお盆の時期に挙行される「大日向(おおひなた)の火とぼし」は、大きな松明に火を灯し、橋の上や河原の水際でぶんぶんと振り回す、勇壮果敢なお祭りです。国の選択無形民俗文化財にも指定されています。
まず、村の子どもたちが山に上り、大松明に火をつけて山を下ります。
次に村の男性たちが、谷川にかかる橋の上で子どもたちの大松明から火を分けてもらいます。
そして水際までぐぐっと身を乗り出すと、一斉に大きな赤い円弧を描いて、ぶんぶんと振り回します。
他のお祭りには珍しい、激しくも幻想的な雰囲気が特徴的です。
このお祭りのルーツをたどると、戦国時代までさかのぼります。
永禄四年に武田軍が上州に侵攻した際、地域の民は武田軍に加勢して領主を打ち負かしたと言われ、その時の喜びを表現するのに火を回して喜びを表現したとされています。
【長野】男女の合コンの場として発展した?参加者の声だけで夜通し踊り明かす「新野の盆踊り」
長野県下伊那郡阿南町の「新野の盆踊り」は、夜が明けるまで踊り通す、神仏混合の希少な盆踊りです。
三味線・太鼓・笛などの楽器は一切使わず、祠の前に組まれた屋台の上からの「音頭出し」と、踊り子の「返し」の音のみで行う特徴があります。
踊りは全部で7種類あり、扇を使う「すくいさ」「音頭」「おさま甚句」「おやま」と、手踊りの「高い山」「十六」「能登」があります。「すくいさ」の踊りに関しては、毎晩最初に踊る習わしがあります。
参加者で長く大きな輪を作り、中央の台上の音頭取りが発句を出すと、明け方まで歌い踊り続けます。
7つの踊りを互いに交えながら、音頭取りと踊り子の歌の応酬で儀式が進んで行きます。
最終日の明け方に行われる「踊り紙送りの式」では、祭りの終わりに向けて行列の行進が始まりますが、踊りが終わってしまうことを惜しむ踊り子たちはそれを阻止するべく輪になって踊ります。
この行列と踊り子の攻防は、まさに新野の盆踊りの魅力です。
最後には参加者全員で秋歌を歌い、振り向かずに帰ってフィナーレを迎えます。
まとめ
今回はお盆の時期に開催されるユニークな風習についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
どの地域のお祭りも独特ですが、お盆の時期ということもあり、祖先を迎えたり無病息災を祈ったりするものばかりです。
今回ご紹介したもの以外にも、日本にはさまざまな変わった風習が沢山あります。
これぞという風習をご存知の方は、ぜひオマツリジャパンに情報をお寄せください!