稲の守り神とされる狐が主役の稲荷神社
野山に生息するキツネは数多くの昔話や童話に登場し、日本人にとっては極めて身近な動物と言えるでしょう。農民にとっては稲などの農作物を荒らす野ネズミなどから守ってくれるため、稲の守り神とされ全国の稲荷神社に狐の像が設けられるようになりました。全国各地に建立される稲荷神社では、毎年初午の日に「初午祭」が斎行されています。東京都北区に社殿を構える王子稲荷神社でも、2021年には2月3日に「初午祭」が行われました。
平安時代から関東稲荷総司として崇敬される王子稲荷神社
王子稲荷神社の創建に関する記録は残っていませんが、平安時代の中期には河内源氏の2代目棟梁を務めた源頼義が、関東稲荷総司として崇敬しました。1822年には江戸幕府第11代将軍の徳川家斉が、権現造りの様式で社殿を造営しました。
拝殿の西に隣接する神楽殿では、「初午祭」の開催日には幼稚園児による舞楽奉納が行われます。王子稲荷神社の敷地内にいなり幼稚園があり、女児によって浦安の舞、男児によって剣舞が奉納されます。
拝殿の東の朱色の鳥居が交錯する境内には、本宮社、御石様が設けられ、最も奥には「狐穴」を見ることができます。石に囲まれた穴には狐が住んでいたと言われています。地域の人々が集うようになると、不思議な伝説が産まれたのです。毎年大晦日の夜に稲荷の使いである狐が、身なりを整え初詣に訪れるというのです。その際の狐火の行列は壮観で、農民たちは数を数えて翌年の豊凶を占ったと伝わります。
火事除けの縁起を担ぐ火防凧
拝殿で参拝を済ませた大半の人々は、授与所に向かいます。充実した授与品の中で、最も目を引くのが火防凧です。初午の日の前後は寒さの厳しい時期のため火事が多発しました。凧は風を切って空を舞うため、火事除けの縁起を担ぐようになったのです。
初午の日には境内に露店が登場します。凧市が開かれるのです。露店では、形や大きさ、デザインの選択肢が大きく広がります。
神社から王子駅に向かう森下通りの左右に隙間なく軒を連ねる露店
露店の姿は神社の境内ばかりでなく、JR、東京メトロの王子駅に向かう森下通りに溢れています。300メートルあまりの参道の左右には露店がぎっしりと並びます。バラエティー豊富な飲食店の間には、古くから子ども達を楽しませるゲームのコーナーも設けられています。
東京都北区に社殿を構える王子稲荷神社には、狐火の行列の伝説が伝わります。初午の日の「初午祭」に合わせて凧市が開かれ、参道には露店がぎっしりと並びます。