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千本釈迦堂(大報恩寺)
千本釈迦堂(大報恩寺・だいほうおんじ)の本堂は、鎌倉時代初期(1227年)の創建当時の姿で残る京都市街で最も古い建造物です。
徒歩圏内には舞妓さんの住む町「上七軒(かみしちけん)」や、菅原道真公を祀る北野天満宮があります。
おかめ信仰発祥の地
おかめ信仰は本堂創建のときの話に由来します。大工の棟梁である夫が誤って重要な柱の一本を短く切ってしまいました。
そこで妻のおかめは、他の柱も短く切り、柱の上部に枡(ます)を取り付ける枡組にしたらどうかと提案。
しかし専門家でもない女が考えたのでは夫の名声に傷がついてしまうと、おかめは自刃。現代ではなかなか考えづらい衝撃の結末をむかえます。
夫は妻の冥福を祈り、上棟式にはおかめの顔をかたどったお面を扇御幣(ごへい)につけた「おかめ御幣」を奉納したといわれています。
縁結びや夫婦円満、子授けのご利益「おかめ福節分会」
節分は旧暦の大みそかにあたり、節分会は一年の厄を払う宮中の儀式が元になっています。千本釈迦堂の節分ではおかめの夫婦円満にあやかろうと、さまざまな行事が行われます。
まず最初は上七軒の舞妓さんによる日本舞踊。舞妓さんが本堂に出てくると、境内は一気に熱気に包まれます。
歩く姿や、ちょっとした所作も美しく、うっとりします。2曲の舞が奉納され、夢のような時間を過ごせました。
番匠保存会奉納「木遣音頭」
続いては番匠保存会奉納「木遣(きやり)音頭」。木遣音頭は番匠(ばんしょう)という御所に出入りしていた宮大工たちの労働歌です。
1月2日の「釿(ちょうな)始め」は2020年まで広隆寺で行われていましたが、近年は千本釈迦堂で行われており、その釿始めと節分の際に奉納されています。
大工さんに関係する千本釈迦堂で木遣音頭が奉納されるというのは感慨深いものがあります。
おかめ塚法楽
お坊さんと共に鬼も登場。多くの参拝者の中をかきわけ、行列がおかめ像の前に進み、法要が行われます。
節分厄除祈願法要 年男・厄除祈願
般若心経の読経がされる間、年男や年女がお坊様の前に一人一人進んでいきます。おかめのお面をしている人もおり、やはり「おかめ発祥の地」だなと感じます。
古式鬼追いの儀 茂山七五三社中奉納
千本釈迦堂では茂山七五三(しめ)社中による「鬼追いの儀」が奉納されます。
まずは魔を滅する豆をまき、大暴れしている鬼たちを退治しようと試みます。しかしなかなか鬼を倒せない。
さて、どうするか…というときにおかめが登場!
おかめが微笑むと、鬼はその笑顔に腰砕けになってしまいます。
そしておかめに頭をなでてもらうと「これからはこの打ち出の小槌で福をもたらす良い鬼になります」と誓い、良い鬼へと改心します。
鬼も改心させる力を持つおかめの笑顔。やはり笑顔は大事ですね。
おかめの顔には夫婦円満の秘訣がつまっており、目尻の下がった笑顔、小さな口は大切なことを言葉にするなどの意味があるともいわれています。
今年の目標は「笑う門には福来る」。口角を2mmあげて、いつも笑顔。コミュニケーションは鏡のようなもの。まずは自分から微笑むところからはじめてみようと改めて思いました。
福は内の語源はおかめから「招福豆まき」
「鬼は外!」「福は内!」の「福」はおかめの別名の「お多福」から来ているそうです。
豆まきがはじまると境内のボルテージは一気に上昇!しかしコロナ以前と違い、豆を取り合うというよりも無理せず手の届く範囲で豆をいただいている感じがありました。
京都では珍しい落花生が飛んで来て、知らぬ間にカバンや上着のフードの中にも入っていました。豆まきのあと、無料配布している福豆をいただきにいくと、サイズが大きくてビックリ!京都市内の何ヶ所か巡りましたが、その中でもかなり量の多い福豆です。
境内では御酒のふるまいや甘酒があります。さっそくお酒のアテに落花生を食べたくなりますね。
千本釈迦堂の春の風物詩「阿亀桜」
春になると名物の枝垂れ桜がおかめさんの笑顔のように咲き誇ります。
本堂よりも背の高い立派な桜。なかなかこれほど大きな桜を京都で見ることは出来ない、見応えのある一本です。
境内にはもう一つ種類の違う、萌葱色の御衣黄桜(ぎょいこうざくら)もあります。みなさんもぜひ一度、春の千本釈迦堂を訪れてみてください。