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「年に一度の神様の遠足」おなばれが、3年ぶりに開催。2022年レポート

2023/3/30
2023/3/30
「年に一度の神様の遠足」おなばれが、3年ぶりに開催。2022年レポート

2022年11月3日(祝)、新型コロナウイルス感染症の影響で2年間中止されていた「秋季例大祭神幸祭:通称おなばれ」が3年ぶりに開催されました。おなばれは「年に一度の神様の遠足」ともいわれ、神様は神輿に乗って御旅所まで、「棒打ち」や「鳥毛」によって清められた道中を進みます。 今年は天候にも恵まれ、200人のおなばれ大行列をひと目見ようと多くの方で賑わいました。当日の現地の様子をレポートしながら、今回の開催を振り返ります。

長期天気予報では「雨」が予想されていてヤキモキしましたが、お祭りの日が近づくたびに「くもり」から「晴れ」へとお天気マークは変更され、当日は素晴らしい秋晴れで迎えることができました(11月3日は特異日なのだそう)。

本当家(ほんとうや)を務める水田さんはじめ関係者のみなさんの表情も晴れ晴れとしていて、めでたい一日の始まりを祝っているかのようでした。

神社では神事の準備が粛々と進みます。

近くのコミュニティセンターや美容室では、おなばれの行列に加わる人々が次々とやってきて装束を着付けてもらったり、化粧をしてもらったり。

おなばれ保存会のみなさんやサポートする方々は「1 年ぶりでも忘れたりするのに、3年ぶりともなると何をどう身に着けさせたか記憶を辿るのが大変ちや」と、てんてこ舞いながらも気分は高揚して楽しそうです。

美容室で準備が進む舞姫たちは、大宮小学校5年生の女子4人組。練習は「移動しながら舞うのを覚えるのが大変で、床にテープを貼って練習した」そうです。美容師さんたちは「肌がツルツルで化粧のノリがえいのが羨ましい!」「私らぁが小学生の頃は平日の開催(以前は10月27日に開催されていたが、近年は11月3日に固定)やったき、おなばれに参加する同級生が学校を早退して行くのが羨ましかったねぇ」などと昔話にも花を咲かせながら、舞姫の目元に紅を差していました。

こうして準備が整った人々が徐々に大川上美良布神社に集い、境内は一層華やかさを増していきます。稚児行列に参加する親子、「棒打ち」や「碁盤振り」を披露する少年たち、そして「鳥毛・白熊」を練り込む若衆たちなどなど。今年は200人の大行列となりました。

13:30、古来より決まっている順番を踏襲して、「道切り親子」を先頭に御旅所までの行列が進み始めました。

おなばれは「年に一度の神様の遠足」ともいわれ、神様は神輿に乗って御旅所まで、「棒打ち」や「鳥毛」によって清められた道中を進みます。その昔、地域の人々は家の宝物である刀や面、鉾や弓矢などを持ち寄って行列に参加したんだそう(今ではそのほとんどが神社の蔵に保管されています)。

行列には、軽業師が参加して賑わせていた時代もあったようで、その様子が「碁盤振り」につながったのだと伝えられています。 

地域を挙げて神様と一緒に遠足を楽しむ一団というふうに捉えると、このお祭りが実に和やかで幸福な行列に見えますね。

なんと!大太鼓と共に2キロの行程を歩み、一人で叩き続けていたのは90歳を超えてらっしゃるという松本さん(通称:ひろいっちゃん)!物部地域に伝わる民間信仰「いざなぎ流」を元とする独特のリズムでおなばれを見事に囃していらっしゃいました。半世紀にわたってこの役目を担っているそうですが、ひろいっちゃんの跡を継げる人が育っていないことが悩ましいところ。 

14:30、おなばれ行列は折り返し地点である御旅所に到着しました。低く小さな作りの鳥居を、「鳥毛・白熊」が練習で培った技を駆使してくぐっていく度に、一際大きな拍手が沸きました。

舞姫たちの厳かな舞が奉納され、神事も終えたらいよいよ帰り道。

復路は、半世紀前にはボンネットバスが行き交っていた町のメインストリート、美良布商店街をゆきます。昔はスーパーマーケットや映画館、商店も立ち並ぶ賑わいのある通りでしたが、今はシャッターが下ろされた店が多くなってしまいました。でも、この日ばかりはたくさんの人々が通りでおなばれの行列を待ち侘びています。

お獅子に頭を噛まれて泣き叫ぶ子どもの声に笑い声が起こります。沿道の方々の頭上を鳥毛がふわりと撫でると、皆ありがたく神妙な顔でお祓いを受けています。

陽が傾きかけた頃に行列が神社に戻ってきました。金色に染まる社殿の前で、クライマックスの「練り込み」が行われます。10人の青年たちが対になって歩み出て、二人が「型」を揃えて「鳥毛・白熊」を倒して見せます。長い棒の先で揺れる「鳥毛・白熊」が逆光の中でシルエットを描く様は息を呑むほど美しいものです。

そしていよいよ、一人ずつ真横に倒した「鳥毛・白熊」を勢いよく拝殿に向かって練り込み、2回上下に振ったら一瞬片手を離して鈴を二度振り、ゆっくりと後ずさり。ここが一番パワーを必要とするところで、最後の力を振り絞って重さに耐える表情は気迫に満ちていました。息を詰め固唾を飲んで見守る人々からの「どうか成功させて!」と祈る気持ちが青年たちに届いて力を与えているよう。成功したらどよめきと盛大な拍手が沸き起こりました。

10人の若衆の練り込みが終わると、祭りは静かに幕を落としました。例年でしたら威勢良く餅がばら撒かれ、境内は歓声と笑い声で大賑わいとなるところですが、新型コロナウイルス感染拡大を避けるため「餅配り」に変更となりました。

幼い子どもたちからご長寿のご年配まで、さまざまな世代がつなぐ「おなばれ」。
来年こそはすべてが「いつも通り」の祭りで地域が盛り上がりますようにと心から願う一日でした。

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