2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
1人100円の花火大会
「寒川みんなの花火」とは、神奈川県高座郡寒川町で11月初旬に開催される花火大会。費用などの問題で開催されなくなった寒川町の花火大会をもう一度復活させようと町の青年たちが中心となって、今から8年前の2012年に始まった。
当然ながら行政の補助金などが受けられるわけもなく、それでも何とか例え小規模でも花火大会ができないかと考えていた際に、寒川町に住む全人口4万8千人から1人100円ずつ集めると、約600発の花火を打ち上げられることを知る。その金額を目標に町の各地に募金箱を設置したり、企業への協賛金を募ったりと、毎年、四苦八苦しながら開催にこぎ着けている。
花火大会の当日には小規模なイベントも開催され、会場周辺には屋台が出ていたりと、子どもたちにとっても楽しみな1日になっている。打ち上げを担当する株式会社ファイアート神奈川は各地の花火競技大会にも出品され、優秀な成績を残している花火屋さんだ。
午後6時ごろになると、寒川中学校のそばにある田んぼから花火の発射音が響きわたる。花火の大きさは最大4号玉と小さめだが、開花直径は120メートルにもなり、寒川町に住む多くの人から集めた思いが形になって秋の夜空に打ち上がる。
昨今の経済事情から行政の財政も苦しく、小さな花火大会から順番に消えていっているのが日本の現状だ。花火は無料で見て当たり前の物から、町民から100円ずつ集めればという考えに変わった貴重な花火大会だ。
また、秋に開催の時期をずらすことで、夏が繁忙期の花火屋さんに価格の面でも交渉の余地があるだろうし、近年では温暖化の影響なのか、夏の気温もどんどん上昇中なので来場者にとってもありがたいかぎり。
今年は新型コロナウイルスの影響で日本のあらゆる花火大会が中止や延期になっている。寒川みんなの花火も残念ながら開催見送りとなってしまったが、また次回、多くの町民によって晩秋の花火が打ち上げられることだろう。