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9月にやってくる「三大厄日」とは?どんな日?何をする?呪術や風習、祭りで被害を免れる!?

2023/9/2
2024/3/8
9月にやってくる「三大厄日」とは?どんな日?何をする?呪術や風習、祭りで被害を免れる!?

日本では古くから暦のうえで「三大厄日」や「三厄日」といわれる日があるのをご存じでしょうか?
●八朔(はっさく)
●二百十日(にひゃくとおか)
●二百二十日(にひゃくはつか)
の3つがそれです。神話の時代から稲作で生きてきた日本人にとって、毎年この時期には台風が来襲して実る前の稲に甚大な被害を与えることから、特に農家にとって注意・警戒すべき重大な日とされてきました。

そのため三大厄日には風害を避ける風習や行事を行ったり、風を鎮めて五穀豊穣を祈る祭りを行ったりして、今でもそれが続いている地域もあります。今回は、そんな「三大厄日」について紹介します。

八朔とは、旧暦の八月一日のこと

明治時代初期まで使われていた旧暦(太陰暦)では、月の満ち欠けを基準に日にちを数えていて、「新月の日」を月の初日としていました。毎月の初日を「ついたち」といいますが、これは「月立ち(つきたち)」から読みが転じたといわれます。

漢字では「朔日」と書いていましたが、朔というのは、地球から見て月と太陽が同じ方向になる「新月」の状態のこと。そのため朔日と書いて「ついたち」や「さくじつ」と読んでいたのです。

現代にもその名残はあります。月の最初の日に神社にお参りして、前月の感謝と新しい月の息災と幸運を祈る風習を「朔日参り」といったり、伊勢神宮そばの赤福本店で毎月1日限定の「朔日餅」を販売して大人気になっていたりするのが、その代表例といえるでしょう。

そして「八朔」とは「八月朔日」の略で、旧暦の8月1日のことです。現在、私たちが使っている新暦(太陽暦)に当てはめると1か月ほど遅い日になり、2023年では9月15日にあたります。日付は年によって変わり、2024年は9月3日、2025年は9月25日です。

近年は台風がだいぶ早い時期から発生し列島に上陸していますが、依然として9月に台風が多く襲来する状況に変わりはありません。9月は稲の穂が出て実りを迎える、収穫目前の一番大事な成熟期。そこへ台風がやってきたら暴風で稲は根こそぎ倒され、何か月も丹精込めて育てきた努力が一晩で水の泡になってしまいます。

その恐れから八朔を「厄日」とし、風害を免れるよう風を除けたり鎮めたりする行事や祭りを行うようになったのです。

ちなみに「はっさく」と聞いて、柑橘類のはっさくを思い出す方もいるのではないでしょうか。こちらも漢字では「八朔」と書く通り、旧暦の八月朔日に由来します。

はっさくは1860年頃、広島県の因島にあるお寺の境内で偶然発見され、それを食べた寺の住職が「8月1日頃には食べられる」と言ったことから、その名で呼ばれるようになったそうです。

しかし実際は、9月のはっさくはまだ実が小さく酸味も強いので、12月~2月頃に収穫して1~2か月ほど熟成させてから出荷されています。そのため、現在のはっさくの旬は2月~3月。旧暦の8月1日頃から食べていたとすると、とても酸っぱかったのではないかといわれています。

二百十日、二百二十日は立春からの日数で雑節のひとつ

八朔と並んで厄日とされている二百十日と二百二十日はどちらも季節の節目を表す「雑節(ざっせつ)」のひとつです。

暦のうえで季節を表すものに中国から伝わった「二十四節気(にじゅうしせっき)」があります。太陽の動きをもとに1年を春夏秋冬の4つに分け、季節ごとに6つずつの合計24に分けたもので、立春、夏至、秋分、冬至などが代表的なものです。

雑節は、日本人の暮らしや農作業を反映したもので、二十四節気を補うかたちで日本で独自に生まれました。節分、彼岸、土用といった雑節が私たちに最も馴染み深いといえるでしょう。

同じく雑節の二百十日は立春から数えて210日目の日、二百二十日は立春から数えて220日目の日になります。新暦(太陽暦)の現代では立春も二百十日も年による変動はほぼありませんが、2023年の二百十日は9月1日、2024年は8月31日、2025年は8月31日で、二百二十日はそれぞれの10日後です。

二十四節気と雑節は、国立天文台が前年の2月1日に正式発表し「暦要項」に書き込みます(二百二十日は書き込まれません)。また、知りたくなったらいつでも計算できるページが用意されていますのでぜひ活用してみてください。

二百十日は中稲(なかて)の、二百二十日は晩稲(おくて)の開花時期にあたるので、台風には十分に警戒せよということで、厄日となった理由は八朔と同じです。

この時期に吹く暴風で台風の古い呼び名を「野分(のわき・のわけ)」といいますが、古い記録では1634年(寛永11年)に野分と二百十日について書かれたものがあります。面白いエピソードだと、小説や映画『天地明察』の主人公にもなった江戸時代初期の天文暦学者・渋川春海(はるみ)が釣り好きで、たびたび出かけていた品川の漁師から「二百十日は海が荒れることが多いから漁に出ない方がいい」と聞いて、1686年(貞享3年)の暦から記載したというものも。

真偽のほどは不明ですが、海に生きる人々もまた、この時期は台風に警戒すべき時期であることを熟知していたといえるでしょう。

風害を避ける風習や呪術とは?

三大厄日の時期に、昔の人々は何とか稲を風害から守ろうと様々な祈願行事を行っていました。特に、風籠り(かぜごもり)、風日待(かぜひまち)などといって、各戸から1人ずつ代表者が神社やお堂に集まって籠り、飲食しながら祈願したり念仏を称えたり、大きな数珠が巨大な輪になっているものを皆で繰る百万遍の数珠繰りをしたりといったことは一般的に行われていたようです。

 

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関東から東北にかけては団子をつくって家の神棚に供えたり、富山県には「不吹堂(ふかんどう)」という祠や風神堂がいくつもあって、そこで大風が吹かないように祈ったりもしていました。

また、長野県をはじめ諏訪信仰の広がる地方では、田んぼや家の軒や棟などに風が吹いてくる方向へ向けて鎌を立て、風を切って災いを避ける呪術「風切り鎌」がよく行われ、現代でも続けられている所もあります。

風を除け、風を鎮める「風祭」にはどんなものがある?

三大厄日とその前後の期間には、風の被害を避けるための数多くの祭りが催されます。名前に「風祭(かざまつり)」や「風鎮祭(ふうちんさい)」など風という言葉が入っていたり、「八朔祭」という言葉が入っていたりしますが、祭りの内容は開催する地域の歴史や特色を反映して実に様々。ここではそのうちのいくつかをご紹介します。

◎おわら風の盆

 

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富山県富山市の八尾で毎年9月1日~3日に行われている「おわら風の盆」。名前に「風」の名前が付く通り、風を鎮める風祭とお盆の要素を含んでいると考えられていますが、名前の由来は実ははっきりとは分かっていません。

日本の民謡には珍しく伴奏に胡弓(こきゅう)が入り、響きには哀愁が漂います。笠を目深にかぶった踊り手たちが町中を流して艶やかに踊る、とても幻想的なお祭りです。

◎八朔祭

 

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八朔祭りという名前の祭りは全国各地にありますが、京都・松尾大社のものがとても有名です。

例年9月第一日曜日に行われ、参道には屋台が並び、前日には盆踊り大会が開かれて京都の夏の最後の盆踊りと言われています。当日は赤ちゃんの土俵入り「八朔相撲」や、こども神輿おねり、女神輿も渡御し、ユネスコ無形文化遺産にも登録された六斎念仏の演舞も行われます。

◎大谷風神祭

二百十日の前夜、 山形県朝日町で行われる「大谷風神祭」は、天災防止と豊作を祈願する昔ながらの村祭りです。歴史は古く、江戸時代の宝暦6年(1755年)頃から行われていると伝わります。

家々では田楽提灯を門口に立て、お神輿の通り道には盛り砂が。地区ごとの特徴ある山車が地区内を練り歩き、祭りのフィナーレを花火が締めくくります。

まとめ

この記事では、昔から特に農業で「三大厄日」とされている「八朔」「二百十日」「二百二十日」と、その風害を避けるための風習やまじない、お祭りなどをご紹介しました。

この季節、あなたの住む町の近くでも風祭や八朔の行事が行われているかもしれません。ぜひチェックして足を運んでみてくださいね。

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