祭り好きの必須アイテム、雪駄。履きやすく、お値段も手ごろなものが多いですね。
でも、意外と「選び方が分からない」という方もたくさんいるはず。
そこで、静岡県浜松市、お祭り好きの絶対的支持を集める、お祭り用品専門店「すみたや」さんにインタビュー。
目的に合わせた雪駄の選び方から「粋」と思われる履き方まで、いろいろ教えていただきました!
1.雪駄とは
雪駄(せった)とは、草履の一種で、本来以下の特徴があるものを指します。
– 畳表である(畳表と言っても住居の畳に使われるい草ではなく、竹皮を編んだもの)。
– 裏面は皮が縫い付けられている。
– 踵には金具がついている
これらの特徴は、草履の耐水性の悪さを改良したもの、または下駄では積雪時に歯の間に雪が挟まる悩みを解決するために作られた、とも言われます。
千利休(または別の茶人)が考案したと言われ、昔は茶人や風流人が、江戸時代は奉行所の同心が用いたという雪駄。(同心の履き方が面白い!これについては後ほど詳述します)。
現代の雪駄の違い、選び方を見てみましょう。
2.種類
現代の雪駄は種類も豊富。ここではそれぞれの違いと、目的別の選び方を見てみましょう。
<表>
現代の雪駄は表も様々。畳表、皮、布、ビニール表など。
すみたやさんによると、「表は好みで選べば大丈夫」とのこと。主なものは
①畳表:昔ながらのもの。実際は竹皮やとうきびでできています。
②ビニール表:お祭りで最もよく見かけるタイプ。耐水性があり、気軽に履くことができます。
③皮:高級感がある。役職者が寄り合いなどに履いていくことが多い(お祭り当日は雪駄より地下足袋をよく履き、また人も多いのでなくなってしまったら困りますよね)。
④布:花柄などファッションとして楽しめ、女性に人気。股引や巻き帯の色と合わせ、個性を出すことができます。
ということです。
<裏>
雪駄選びのポイントは、耐久性、耐水性、軽さ、クッション性、滑りにくさ。これを決めるのは裏の素材です。お神輿など激しく動く場面では地下足袋を履く方が多いので、お囃子や担がない役職者、担ぎ手であれば公民館との行き来などの場面で使われますね。
①皮底:高級品。上記した皮表と同じく、お祭り当日よりも役職者会合などに行くときにお洒落で履かれます。
②スポンジ底:一番安価。軽量でクッション性が高い。足が痛くなりにくいので、担がないでお神輿の行列を歩く係の時などによく使われます。
③アメ底:「飴色の底」の意味。滑りにくく耐久性、耐水性がある。普段使いできるので、飲食店などでも使われます。濡れたアスファルトでも安心なので、行列について歩くお囃子の方が履くのを見かけます。
④タイヤ底:車や自転車のタイヤを張り付けたもの。滑りにくく非常に丈夫。
このポイントを押さえておけば、お財布と相談しつつ、目的にピッタリの雪駄が選べます。
3.雪駄の履き方:基本編「サイズ」「左右」「岡足袋」
雪駄をはじめ日本の履物は、踵を出して履くのが基本。すみたやさんでもサイズを提案すると、履きなれないお客様には「小さい!?」とびっくりされる方もいるとか。踵までしっかり被るような大きな雪駄は、後ろの人にぶつかりますし、鼻緒で支えきれず雪駄がパカパカしてしまいます。
また、下駄や雪駄の右左ってあるの?と気になった方はいませんか?答えは、左右はありません。なぜなら、鼻緒は雪駄の真ん中にあるからです。ここがサンダルとの違い。それを親指と人差し指で挟むので、どうなるか?当然小指がはみ出ます。でもこれがかっこいいのです。
踵も小指もはみ出る。なので、雪駄を履くときは足袋を履きます。「岡足袋」と呼ばれますが、普通の白足袋でもOK。踵が痛い場合は、底に補強がしてある「草鞋がけの足袋」を選ぶとよいそうです。
4.雪駄の履き方:上級編「金具」と「ツボ下がり」
雪駄には本来、ベタガネと呼ばれる金具がついています。これは踵を補強するためのものですが、江戸町奉行の同心がその存在をアピールするため、わざと金具を鳴らして歩いたと言います(これが、チャラチャラした、の語源。祭りで使われる履物の記事参照)。
現在はもともと金具の付いていない雪駄も多いですし、何度か履いて金具が取れてしまう場合もあります。金具は付け直すこともできるので、自分でねじを使って修理するベテランもいます。ただし、スポンジ底など柔らかい素材は金具を付けられないのでご注意ください。
さらに、上級者は「ツボ下がり」にチャレンジしましょう。鼻緒を指の先の方でちょっとつっかけて、雪駄は金具をチャラチャラ鳴らして履くのがかっこいい。つまりどちらかというとすり足で歩くことになります。下手すると踵が痛い。
この「痛いのを履ける男」をさらにアピールできるのが、坪下がり。鼻緒の位置が、通常の雪駄よりかなり後ろについています。これを履くと、当然踵がかなりはみ出て、すごく痛い。これを平然と履くのが「粋な男」。すみたやさんは、「木遣師の方などによく見られますね。」と語ります。
江戸っ子文化は、熱い風呂に平然として入るような、ある意味「やせ我慢文化」。そんな美意識が表れていますね。
(ツボ下がりについては、下駄のコラムでも言及しました。よかったらご覧になってください)。
今回お話しを伺ったすみたやさんは、ウェブサイトが超充実。ブログや動画でお祭り用品の選び方、着方、使い方、お手入れの仕方からコーディネートまで、ありとあらゆる情報を発信していらっしゃいます。
祭すみたやさんホームページ https://www.sumitaya.co.jp/
お祭り用品情報サイト「祭塾」https://matsurijuku.com/
祭すみたや楽天店 https://www.rakuten.co.jp/sumitaya/
その情報発信力からファンは全国に広がっています。ネット販売だけでなく、浜松市の店舗は全国のお祭り好きが集まります。というのも、神輿会の旅行ルートに組み込まれ、観光バスで買い物に来られるというのです。
祭り用品で溢れる店内、お祭り好きにとっては買い物天国!楽しくないわけがない!
今年はコロナウィルスの影響でゴールデンウィークも休業。とっても残念ですが、情報満載のすみたやさんウェブサイトを見て、次の衣装選びの夢を膨らませましょう!
アイキャッチ画像 © 2020 Matsuri Sumitaya.