※2020年は新型コロナウイルス蔓延の影響で「新しい生活様式」と取り入れた精霊流しとなります。コロナウイルスの終息のために感染予防を心がけましょう。(2020年8月6日 編集部)
(この記事は2019年に公開されたものを再編集しています。2020年8月6日 編集部更新)
精霊流しは2019年8月15日(木)長崎にて行われるお盆行事。故人を偲ぶために行われる行事で、装飾された精霊船や爆竹から「華やかなイベント」を想像してしまいがちですが、生死について改めて考えるきっかけになるような要素に富んでいます。2019年のお盆、この行事を体験しに長崎に足を運んではいかがでしょう?
「精霊流し」をご存知でしょうか。長崎市を中心とした周辺に江戸時代より伝われるとされる行事で、お盆が終わる8/15の夜に行われます。
今回は私が長崎におもむき、精霊流しを実際に見た感想をレポート。お祭りのような華やかさはないですが、生死について深く考えるきっかけとなりました。
目次
精霊流しとは?精霊船って一体どんなものなの?
精霊流しは長崎周辺に伝わるお盆の行事で、お盆初日である8/13に先祖の御精霊をお迎えし、お盆が終わる8/15の夜に精霊流しで御精霊をお送りするもの。
昔は竹や藁でできた小さな船を、供物と一緒に西(浄土があると考えられている方角)の海に流していましたが、いまは精霊船に供物を入れ、故人を偲びながら街を歩きます。最後は「流し場」と呼ばれる集積場に運び、精霊流しは終わります。
花や果物で豪華に彩られた精霊船はまるで山車のようですが、お祭りとは違って故人を偲びながら行われます。
派手に爆竹が鳴るのは中国との文化交流の象徴
故人を偲ぶための行事なので、とてもしめやかに行われると思いきや、爆竹を所々で鳴らしまくるので参加者と見物客は耳栓が必須。
江戸時代より長崎は中国との交流が深く、お墓参りの時に花火をしたり爆竹を鳴らす習慣がある唐人文化が入って来ているため、魔除けの意味を込めて爆竹を派手に鳴らすとのこと。
そのため町中には火薬の匂いが充満し、この時期だけの独特の雰囲気となりますが、それも含めて長崎の方にとっての夏の風物詩なのかもしれません。
故人への距離が近く感じるのは、精霊船を通じて生前の姿を感じられるからかもしれない
精霊船には各家庭で出す個人の船と、町内会合同で出す大きな「催合(もやい)船」の2種類がありますが、それぞれに異なった特徴があります。
その形に決まりはなく、サッカー好きだった方のものにはサッカーボールが描かれ、バスの運転手だった方のものは形そのものがバスだったりという具合に、それぞれがとても個性的。
これらを見ているだけで故人が生前どんな人だったのかが頭に浮かんでくるようですし、その豪華さが故人への感謝を感じさせます。
「祭り」とは違うが、生死について深く考えるきっかけを与えてくれる行事
精霊流しをWEB上の情報から「華やかなイベント」を想像して、観光気分で訪れると思わぬギャップに驚くかもしれません。確かに精霊船や爆竹は派手ですが、実際にはイベントらしさはなく、家族親戚が集まって亡くなってしまった故人を偲ぶ儀式のようでした。
私の生まれた東京でのお盆と言えば、きゅうりとナスの供え物、お坊さんの読経、墓参り、迎え火送り火、くらいのしきたりですが、長崎では精霊流しを通じてお盆をとても大事にしており、故人との距離がずっと近いと感じることができました。
故人を想いながらたくさんの手間とお金をかけて彩る精霊船の風習。自分だったらどのような形で大切な人に送り出してもらえるのかなと思う取材でした。