エ~、さては錦糸町河内音頭ファンの皆様へ。大変お待たせしました!4年ぶりの「すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」が、2023年9月6日・7日の2日間開催されます。
錦糸町がもはやレイブ会場と化し、町ごと熱狂と興奮に包まれる盆踊り!この記事では2019年公開の、盆オドラー大ちゃんこと佐藤智彦さんによるレポートと今年の開催情報をお届けします。東大阪の音頭文化と河内音頭の解説、錦糸町の河内音頭大盆踊りならではの魅力や歴史、踊り方、ワンポイントアドバイスまでたっぷり。ぜひお出かけ前の参考にしてくださいね!
目次
東京で最も異質!?なのに誰もが虜になる盆踊り
東京に数ある盆踊りの中でも、最も異質であり、それでいてほかと比較できないほど異様に盛り上がっているものといったら、錦糸町で開催される【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】だろう。
何せ『盆踊り』と名は付いているものの、東京の盆踊り感は皆無。完全なる『音頭場』として、錦糸町が東大阪の雰囲気一色に染め上げられるのだ!ここに足を踏み入れたものはみな驚嘆し、音頭の虜と化してしまうのだ。
それほどまでに魅力的な錦糸町の河内音頭とは、如何なるものなのであろうか?
カオスな盆踊りへようこそ!錦糸町が河内音頭に染まる2日間
『錦糸町で河内音頭のイベントがあるのか…。』と気楽な想いとともに、2011年【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】に初参加したボクは、会場に着くなり自分の甘さを思い知ることになる。
目の前で繰り広げられる光景は、もはやボクが頭に思い描いていた盆踊りではない。
巨大な洞窟を感じさせる首都高速7号小松川線の高架下、赤い提灯に彩られたステージから大音量で披露される、生唄生演奏の河内音頭。
数多くの露店に囲まれた踊り場では、まるで気が狂った様に舞い続ける踊り子たち。しかも踊りは一つでなく複数同時に踊られる様、しかも踊る場所などないほどの混雑ぶり…。
『これは盆踊りじゃない、レイブだ…。』と、ボクはしばし戸惑いつつ、いざ踊りの輪に飛び込んでみる。
最初は踊り方もよく分からなかったものの、複雑な動きながらなんだか楽しい、そして気持ちいい!これが、河内音頭の『マメカチ』という踊りに回転や尻振りが強調された錦糸町ならではの踊り『錦糸町マンボ』だった。
吹き出す汗など気にも止めず、踊りとともに、自分の心も体も音頭に支配される様を、ボクは身をもって体験したのだった。
翌年以降毎年ルーティーンとして錦糸町へ通う様になり、その後大阪にも遠征することになろうとは、最初の年には想像だにしなかった。
まさにカオスというべき【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】が開催される2日間は、異空間に錦糸町が飲み込まれる日々でもあるのだ。
本場大阪でも体験できない規模!ここは河内音頭の新たな聖地
さて東大阪で盆踊りといえば、『河内音頭』と『江州(ごうしゅう)音頭』がほとんどで、基本的には音頭取りを中心にした、生唄と生演奏で行われることが多い。
詳細を知らない方であっても、『河内音頭』の『エンヤコラセ、ドッコイセ』『ソラ ヨイトコサッサノヨイヤーサッサ』 という掛け声や、『江州音頭』の『ソリャ ヨイトヨイヤマカ ドッコイサノセ』という掛け声を聞いたことがあるだろう。
両者ともにそのキャッチーなノリのよさもあって、日本人のDNAに刻まれている、踊り出さずにいられない遺伝的要素を刺激する、といっても過言ではないほどだ。
八尾(やお)を中心とする東大阪で盛んな河内音頭は、土着の音頭や民謡に、浄瑠璃・祭文(さいもん/神を祀る時に読む文言)といった庶民の芸能と仏教の声明が混ざり合い、長い年月ともに郷土芸能化した音頭で、昭和以降、エレキギターやキーボードなどを取り入れた演奏が一般的になっている。
滋賀がルーツとされる江州音頭は、仏教のお経の節である声明をベースに、山伏による民間布教手段として派生した祭文が娯楽化し、次第に宗教色を薄めて芸能化していった。
今でもその名残として、演奏には法螺貝や錫杖(しゃくじょう)が使われている。
関西地方で『音頭』といえば河内と江州、双方の音頭が同時に踊られることが多い。
どちらも口説きという、一説の話となっている音頭のため、聴いているだけでも十分に楽しめる。
『河内十人斬り』、『悪名』、『森の石松』、『瞼の母』など、浪曲の定番となっているお題も多く、音頭と馴染みの薄い方でもその題目を耳にしたことがあるだろう。
河内音頭が一般的なったのは、1991年に河内家菊水丸氏の唄う《カーキン音頭》がCMに起用されて一斉を風靡したことが大きい。実はボクがはじめて河内音頭のCDを購入したのも同氏のものだったのだ。
中村美律子氏が1989年にリリースした《河内おとこ節》や、1999年の《河内酒》など、河内音頭をモチーフにした歌謡曲のヒットも、河内音頭の名を全国区に広げることに一役買っていることだろう。
さて【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】がはじまったのは、その流行よりもはるか以前の1982年夏。7月20日に、渋谷にあったライブハウス『LIVE INN』にて『第一回河内音頭東京殴り込みコンサート』が開催され、翌日の21日には初の錦糸町公演が、パチンコ店『銀星』2階の『銀星劇場』にて開催されたことが全てのはじまりだ。
1985年には『錦糸町大盆踊り ’85 河内音頭・東京初櫓』として、江東橋3丁目の空き地に櫓を建てて開催。以降年を追うごとに町全体で盛り上げるムードが高まり、現在では天候を気にせず開催できる、高架下の竪川親水公園特設会場で行われている。
東大阪を中心とした関西では、意外とこじんまりした音頭場が多いものの、東京ではこの2日間に完全燃焼するかのごとく大掛かりなイベントとして成長しており、これだけの規模は現地でも体験することができない。
この『聖地』でしか味わえない熱気と興奮に魅せられる人は多く、遠くは北海道から九州まで、熱心なリピーターが全国に点在する。
今や東京の夏を彩る風物詩として、欠かすことのできない存在となり、愛され続けているのだ。
聴くもよし、踊るもよし。生唄生演奏の音頭、複数の踊りが同時進行する様に腰を抜かせ!
【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】は実に多種の人間がいる。音頭を熱心に聴く人間、ビデオや撮影に興ずる人間、そして一番多いのはもちろん踊り子だ。
ここでは一番中心で反時計回りに踊られる『手踊り』の輪、その外側を同じく反時計回りの『流し踊り』の輪、そして一番外側を『錦糸町マンボ』が時計周りに後退しながら進む輪と、大きく3つに分けられる踊りが同時に踊られている。
しかもみな進行方向も違えば、踊りのタイミングも異なる。慣れないと、自分が踊る手拍子と違うタイミングで聞こえてくる、他の踊りの輪とのタイミングの差に、ドキッとすることもあるだろう。
一番踊り子が多いのは、間違いなく『錦糸町マンボ』なのだが、これは回転や飛び跳ねといった動作が大きく、体力の消耗も大きい。疲れたら他の踊りレーンに移り、のんびり踊る、という選択肢も可能だ。自分の好きな踊りを、自分の好きなタイミングで楽しめばいいのだ。
これは他の盆踊りには見られないもので、現地ではグループや連などが次々と新たな踊りを考案し、同時多発で楽しんでいる。
錦糸町ではこの3つが主なのだが、音頭の1曲は10分、20分と長い。ぜひ自分なりの楽しみ方を見つけ、楽しもうではないか。
【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】に参加するなら、知っておきたいワンポイント情報
【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】は2日間で3万人もの来場者で賑わうイベントである。
開始の年によって手荷物預り所が設けられることもあるが、スペースの関係上、実施されないこともある。公式サイト等で事前情報を確認する必要があるが、他の盆踊り同様、駅や公共のロッカー等を利用し、なるべく身軽に参加しよう。
また、貴重品は常に身につけよう。
本場大阪の雰囲気を味わえるお好み焼きやかちわり、居酒屋や射的など、実に多くの露店が出店する。現場だけで十分楽しめる充実ぶりなので、ぜひ祭りの雰囲気も味わおう。
毎年事前に踊り講習会も実施される。気になる方は、公式サイトで情報を確認しておこう。
会場で印象的な赤提灯であるが、実は協賛することによって、自分の好きな文言を入れることも可能だ。踊り好きならば音頭場の提灯でプロポーズ、という粋な計らいもいいかも知れない。ただし断られた時の保証はないが。
例年夕方17時半から夜21時半まで、盆踊りはおよそ4時間もの長い時間行われる。無理せず自分のペースで楽しみつつ、十分な水分補給を心がけよう。
まるで魔界への扉が開いたように、新たな世界へと踊り子を誘う【すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り】。
最後に、一度足を踏み入れると後には引けないことも忠告しておこう。
覚悟されたし。
エンヤコラセ、ドッコイセ♬
盆ボヤージュ!
2023年 開催情報
日程:2023年9月6日(水)・7日(木)※雨天決行
時間:17:00開場/17:30開演/21:00終演
会場:竪川親水公園特設会場(首都高速7号線高架下)
アクセス:JR総武線・東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」南口より徒歩5分
入場料:無料
主な出演者:山中一平、永田充康、堺家小利貴丸、生駒尚子、瑞姫、生駒竜也、辺高正、中西レモン、すずめのティアーズ、雲竜未衣、虹友美ほか ※出演者は変更となることもあります。あらかじめご了承ください。
詳細:すみだ錦糸町河内音頭大盆踊りオフィシャルサイトでご確認ください