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東日本では「十日夜」、西日本では「亥の子」。どんな行事?何を食べる?

東日本では「十日夜」、西日本では「亥の子」。どんな行事?何を食べる?

「十日夜(とおかんや)」という日をご存じですか?一見、言葉が「十五夜」に似ているので、お月見するのに良い日なのかな?と思うかもしれませんね。実際、月が綺麗な日という意味もあるのですが、その日に各地で行われてきたのはまったく違う風習です。

そして、「十日夜」は主に東日本に広まった風習で、ほぼ同じ風習が西日本では「亥の子(いのこ)」という呼び名で行われてきました。今回は、このちょっと不思議な「十日夜」と「亥の子」についてご紹介します。

十日夜とは何?どんな日?

十日夜は旧暦の10月10日のことで、現在の新暦に当てはめると1か月遅れの11月頃になり、毎年変わります。2023年は11月22日、2024年は11月10日、2025年は11月29日です。

この時期は稲の収穫が終わっているタイミングで、十日夜は別名「刈り上げ十日」とも呼ばれます。田んぼの神様に収穫の感謝と翌年の豊穣を祈る日です。

十日夜には何をする?面白い風習あれこれ

◎かかしあげ

無事に米が収穫できたことを、1年間田んぼを鳥や獣などから守ってくれた「かかし」にも感謝する行事です。かかしを田から家に持って帰り、餅や蕎麦などをお供えします。

長野県では、かかしあげのことを別名「ソメノ年取り」とも呼び、かかしに蓑笠を着せてホウキや熊手などの農具を手に持たせ、餅や二股大根を供えて祀ることがあるそうです。十日夜は、諏訪地方ではかかしの神が天に上がる日、安曇野地方ではかかしが田の守りを終えて山の神になる日ともいわれています。

◎モグラ打ち・おんごろどん

色々な呼び名で呼ばれますが、目的としては皆ほとんど同じです。主に子どもたちが里芋の根を乾燥させたズイキや竹を芯にして藁(ワラ)を巻き付けた藁鉄砲(細長い棒)を作り、翌年の豊作を願って地面をバシバシと叩き、作物の成育の邪魔になるモグラやネズミなどを追い出します。

叩くときには歌を歌う地域も多く、その歌詞は千差万別です。また、地面を叩くことで大地に宿る霊を活性化して、翌年の豊穣への祈りも込められているといわれます。

長野県では「モグラオドシ」とも呼んで、モグラのせいで畑の土が盛り上がった部分うを木槌で叩いて回ったり、肥え桶の金具をこすってキーキーと嫌な音を立てたりするそうです。

京都の京田辺市では、年明けの小正月に「おんごろどん(モグラの意味)」といって、小学生が集落の各家を回って藁鉄砲で地面を叩き、翌日のとんど焼きで藁鉄砲を燃やす行事が行われるそうです。

◎大根の年取り

十日夜には、大根を供えるほか、大根にまつわる風習や言い伝えもあります。
東京の田無では、田の神様に供えたぼた餅を、大根がたくさん実るように大根畑の土の中に埋めて豊作祈願をしたのだそうです。

そのほか関東や東北の広い地域では、藁鉄砲に驚いた大根が抜け出してくるとか、大根が背伸びして一夜で急激に成長するとか、「大根が成長して割れる音を聞くと死んでしまうので、十日夜には決して大根畑に足を踏み入れてはならない」といった、ちょっと不思議な言い伝えが残っている場所もあります。

◎「三名月」の締めくくりに月見をする

旧暦8月15日の「十五夜(中秋の名月)」、次いで旧暦9月13日の「十三夜」と並び、旧暦10月10日の「十日夜」の月も美しいとされ、この3日の月を「三名月(さんめいげつ)」と称することがあります。

そしてこの3夜に月見をすることを「三月見(さんつきみ)」と呼び、3回ともお月見をすると縁起が良い、3夜とも晴れると良いことが起きるといった言い伝えもあります。


新月から15日目の夜が満月になるので、10日目にあたる十日夜では半月が少し膨らんだ形の月になります。

お月見をするときに特に決まった風習はありませんが、十五夜や十三夜と同様に、お団子やその時期に旬になる野菜や果物などをお供えにしてはいかがでしょう。十日夜でお供えするような餅や蕎麦、二股大根などもよいかもしれません。

十日夜はあくまで収穫を田の神様に感謝して祝う風習です。その気持ちを持って月を愛で来年の五穀豊穣を祈願すれば、より十日夜のお月見を楽しめることでしょう。

亥の子とは何?どんな日?

東日本では旧暦10月10日の「十日夜」。西日本でちょうど日にちも近く、同じような収穫感謝を目的に似た風習が行われているのが「亥の子」です。

旧暦では1月を「寅」の月と呼び、各月に順番に干支が割り振られていたので10月が「亥」の月に当たります。日にちにもそれぞれ十二支が割り振られていたので、12日ごとに「亥」の日が巡ってきます。そして、旧暦の10月の最初の亥の日を「亥の子」と呼んでいました。

旧暦10月を現在の新暦に当てはめるとほぼ1か月遅れで11月頃にあたり、亥の日は毎年変動して、「亥の子」は2023年は11月1日、2024年は11月7日、2025年は11月2日となります。

亥の子を祝う風習は中国から

古代中国では、旧暦10月の亥の日に穀類を混ぜた餅を食べると無病息災に暮らせるといわれ、一度に多くの子供を生むイノシシのように子孫繁栄を祈願して「亥子祝」、別名「玄猪(げんちょ)」を行っていたそうです。

これが平安時代に日本の宮中行事に取り入れられ、貴族や武士の間に定着。やがて農村部の庶民にも広まると、稲の刈り入れが終わった時期と重なるため、その年の収穫に感謝し、翌年の豊作を祈願する風習として発展していきました。

また、旧暦10月の異称は「神無月(かんなづき)」ですが、これは全国の神様が出雲に集まって出雲以外の地域には神様がいなくなるためと俗にいわれます。しかし、出雲には行かず地元で留守番をしている神様がおり、江戸時代になるとその神様を慰めるためのお祭りがしきりに開かれたそうです。

留守神で有名なのは「えびす様」で、旧暦10月20日のお祭り「えびす講」は現代でも各地で続いています。他には竈(かまど)の神様は家にずっといて留守を守ってくれるとされ、同様に「亥子の神」も留守神といわれるので、亥の子の風習は亥の子の神を祀り慰める行事であったのかもしれません。

亥の子では何をする?何を食べる?

◎亥の子石で「亥の子づき」

特に中国地方や四国地方には、現在も残る亥の子の風習があります。「亥の子石(いのこいし)」と呼ばれる漬物石のような石に綱を放射状に何本も取り付け、その綱を持った子どもたちが息を合わせて綱を上下させ、地面を叩くのです。

この地つきの目的は、十日夜に藁鉄砲で地面を叩くのと同じ。地中のモグラやネズミを追い出して翌年の豊作を祈ります。

◎亥の子餅を食べる

亥の子の日になると、西日本の和菓子屋さんには「亥の子餅(いのこもち)」が並びます。その年に穫れた穀物入りの餅を食べて無病息災を祈り、多産の猪にあやかって子孫繁栄を祈る意味もあります。

形や味は様々ですが、求肥(ぎゅうひ)であんこを包んだものが多く、ゴマや栗が入っていたり、表面に亥の子=イノシシの子どもにちなんでウリ坊のような筋が入っていたりと、見ているだけで楽しいお菓子です。

かの「源氏物語」にも登場した歴史ある餅で、茶道で炉開きを行う際に、茶席菓子として亥の子餅が用いられています。

◎こたつ開き・炉開き

亥は火に強いことから「火を抑える」とされ、亥の子にこたつ開きをすると、火事を逃れられるといわれ、古くから亥の子の日にこたつ開きをする風習がありました。茶道でも、亥の子の日に炉開きをする風習があるそうです。

現在も行われている十日夜、亥の子のお祭り

★十日夜の藁鉄砲(長野・佐久地方)

長野県佐久地方では、地中のモグラやネズミを追い出して五穀豊穣を願う「十日夜の藁鉄砲」として行事が伝わっています。

この地域では十日夜の風習が盛んに行われていたため、藁鉄砲作りや地面を叩く風習を積極的に次世代に継承しているようです。

★亥子祭(京都・護王神社)

「いのしし神社」として親しまれている護王神社では、亥の子の日に「亥子祭」が行われます。

中国の民間信仰を起源として、平安朝時代の宮中行事となっていた「御玄猪(おげんちょ)」を、平安絵巻さながらに再現した祭りです。儀式でついた亥の子餅は、参拝者にふるまわれます。

★大イノコ祭(広島市)

亥の子の伝統を伝えつつ、新たな解釈を加えた祭りが「大イノコ祭」です。
広島市の袋町公園の直径20mの円周上に、長さ13mの孟宗竹88本を立てます。竹の先端に結びつけられたロープを中央に置かれた1.5トンの大石に引っ張り結ぶことによって、 竹の張力が加わり、大石が空中に吊り上がります。

そして吊り上がった大石「石動(いするぎ)」は、インスタレーションとして美しいだけでなく、巨大な「亥の子石」に見立てられ、実際に亥の子づきが行われるのです。

 

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大人から子どもまで力を合わせ、歌いながら綱を引いて、巨石で地面をつきます。地域の五穀豊穣、商売繁盛を祈る古くて新しい祭りです。

終わりに

旧暦10月10日の「十日夜」と、旧暦10月の最初の亥の日の「亥の子」について、それぞれの意味や由来、行われる行事・風習をご紹介しました。

どちらにも共通しているのは、その年の収穫に感謝し、来たるべき年の豊作を願う思いでした。都会では失われてしまっていても、地域によっては大切に受け継がれていたり、新しい解釈のもと新しい祭りとして行わていたりします。

あなたの身近な場所にも、このような日本の古き良き伝統行事が息づいている場所があるかもしれません。ぜひ探してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
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