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虎舞を継承するための秘策とは?岩手県大船渡市・門中組虎舞の伝承館で見つけた工夫の数々

更新日:2022/3/24 いなむ
虎舞を継承するための秘策とは?岩手県大船渡市・門中組虎舞の伝承館で見つけた工夫の数々

練習場所でありながら「民俗芸能を伝えていく場」として、岩手県大船渡市の碁石海岸近くに作られたのが、門中組(かどなかぐみ)虎舞の伝承館である。今回はこちらの施設に伺い、この団体の熱意ある取り組みについて伺ってきた。

門中組虎舞伝承館とは?

伝承館にたどり着くと、まず見えてくるのがシャッターに貼り付けられた虎舞の写真。虎舞の原寸大の写真が、2頭分プリントされ貼られており、とても印象的だ。

ドアを開け「こんにちは」と中に入ると、そこにいらしたのが門中組振興会・顧問の新沼利雄さん。普段は博物館のように開放しているわけではなく、今回アポを取って特別にご案内いただいた。

門中組は2つの地域(門之浜と中井)からなり、公民館も2つある。公民館とは別に門中組虎舞としての活動場所が必要ということになり、伝承館が作られたそうだ。「昔から伝えられてきた地域の伝統文化を伝えていきたい」とのこと。

「虎頭持ってみるか?」と勧めてくださり、持たせていただくと思った以上に軽かった。昔の虎頭は張り子でできており、地域の大工さんが制作されたという。現在は虎舞のスタッフの方が同じ重さで桐の木で制作されている。

それにしても、なぜ虎なのに赤い頭なのだろうと疑問が湧いてきた。聞けば、ここはもともと伊達藩の地域なので赤い虎頭で、元は獅子舞の獅子頭を使っていた名残らしい。岩手県でも北に行くと虎頭は黄色のものが多い一方で、大船渡のような宮城県に近い場所だと赤い虎頭を使うところも多いようだ。

獅子舞が虎舞に!その始まりは漂着船!?

虎舞の歴史について気になり、昭和33年に書かれた門中振興会の文書を見せていただいた。そこには以下のような内容が書かれていた。

門中組虎舞の起源は鎌倉時代にまで遡る。ある夜に、一隻の船が賑々しく囃す笛や太鼓の音とともに、泊里浜に漂着した。その船の中には、諸仏体と祭器、楽器等が満載で、庶民はただ驚くばかりだった。地域の熊野神社に置かれた年代作者不明の獅子頭もこの時にやってきた。この獅子頭で獅子舞を奉納すれば、悪魔払いや五穀豊穣、浜は大漁疑いなしとなった。

獅子舞は氏子たちによって虎舞と名を改めた。現在の演目は、明治時代に「虎舞の天才」と仰がれた佐々木寅五郎氏の振り付けによるもので、「道中囃子」「地舞」「腰舞」「首舞」「さがりは」の5つとなっている。それにしても、お名前が「寅五郎」とは、まさに虎舞の担い手としてふさわしい名付けと感じた。

虎舞の舞い方は、獲物を追う様子を表現!

今回、門中組虎舞の実際に舞っている様子がわかるDVDを見せていただいた。「地舞」は虎が獲物を求めて右に左に首を振って進む様子であり、「腰舞」は藪や林を通り抜けてふと小高い丘に差し掛かり前方を眺めると遥か彼方に獲物と思しきものを発見して奮然と睨む様子だ。また、「首舞」は獲物を追い焦り狂った虎が岩山に突立ち上り身の危険をも忘れて狂乱する様子である。

佐々木寅五郎氏の振り付けを後世に伝えた弟子たちが5名ほどおり、その結果、現在までその伝統が受け継がれているという流れだ。

▼門中組虎舞の演舞(出典:Japanese folk performing arts 東北文映研ライブラリー映像館)

集合写真には、名前を書いた紙を挟んでおく

また、壁際にはずらりと並べられた集合写真の数々。過去のお祭りやイベントの際に撮影されたものだ。その中には、集合写真の一人一人が誰であるかを几帳面に示した紙まで、額の中に写真と一緒に飾っているものもあった。

こうすることで、地域のつながりを再確認でき、例えば「この年には誰々の親が担い手だったんだ」という風に時代を経ても、その当時を知ることができる。東日本大震災の津波でも流されなかった地域の貴重な宝物である。

津波で流されなかった祭り道具

伝承館の壁面には、2011年の東日本大震災の時に到達した津波の水位が記録されていた。震災のときは扉が流されるなど伝承館もめちゃくちゃになってしまったが、なぜか虎舞の道具は流されなかった。「神様が残しておいてくれたのかもしれない」とのこと。雨で浸水したときに虎舞の幕がびしゃびしゃになってしまったことがあったが、今では太鼓台を利用して、高い位置に虎頭と幕を保管・展示しているため、備えは万全である。

東日本大震災の際には、仮設住宅や復興祭などで虎舞を舞うこともあったようだ。復興していく町と共に、虎舞の演舞は地域の希望となったに違いない。震災から8ヵ月後の2011年11月には、静岡県の民俗芸能フェスティバルに招待されて踊ることもできた。

担い手確保のため、通い人を受け入れる

現在、素晴らしい取り組みを続ける門中組虎舞でも、多くの地域と同様に人手不足という課題に直面している。最近は1ヶ月間、練習に通える範囲の人であれば、地域外からも担い手を受け入れるということになったようだ。普段練習は伝承館で行っており、初めての人は少なくとも1ヶ月前から練習をしなくてはならない。年齢的には中学生以上で、笛と太鼓は女性でも参加することができ、虎舞の前で踊る才坊振りと虎舞は男性が務める。

昔のように、勝手に親が子に強制する事もできない時代だからこそ、柔軟な方向転換をしつつも、虎舞に興味を持ってくれることが何よりのようだ。お祭りは熊野神社の式年大祭ということで4年に1回、10月に開催されるほか、お正月の演舞や、各種イベントに出演されている。門中組虎舞に興味を持った方は演舞を見に行くか、担い手応募もぜひ検討いただきたい。

■門中組虎舞(岩手県指定無形民俗文化財)
団体名・代表者:門中組振興会 会長 田畑司 様
住所:岩手県大船渡市字小中井73-13
連絡先:090-7794-9404(門中組振興会 顧問 新沼利雄 様)
※伝承館の訪問には事前連絡が必要です。
ホームページ:門中組虎舞ホームページ

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
獅子舞マニアです。ライターやカメラマンをしています。趣味は、獅子舞の鼻を撮影することです。その他クレイジーな祭りにも潜入します。

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