2022年。花火大会は復活と中止の間で揺れる花火大会だが、三重県桑名市の「桑名水郷花火大会」は無事開催。関係者の皆様どうもありがとうございました!ここで言う様々な制約というのは言わずもがな新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のことである。具体策については例えば次のようなものであった。
・時間短縮とプログラムの集約・縮小。
・屋台はなし。
・協賛席は市内の法人、市民が中心。
・河川敷の区画を厳格に行い、来場者数を絞ることで過密を避ける。
中止を余儀なくされる花火大会も多い(冗談抜きで本当に多い)中で「存亡の危機」を乗り越えるためのなりふり構わない努力が見えた。その実行委員会と協賛企業のパワフルさ、行政と市民の理解には本当に頭が下がる。
桑名水郷花火大会とは
桑名というのはあの焼きハマグリの桑名である。花火大会の始まりは昭和9年というから今から88年前となる。スタイルとしてはよくある地域の花火大会で企業協賛や個人協賛、あとは市からの補助金や有料席販売で成り立っている。だが、ここ最近は桑名を創業の地とするベアリング大手のNTNという会社の協賛のもと打ち上がるひときわ大きな花火が名物となっている。ちょっと調べてみたが少なくとも2008年には協賛が始まっているようである。
どれくらい名物かというと、普通なら花火大会のプログラムといえば「大スターマイン」「グランドフィナーレ」等の名前がつくところ、その花火は正式名称の「特大大仕掛け」「2尺玉同時打ち上げミュージック花火 」をさしおいてプログラム名自体が「NTN」と呼ばれるくらい浸透している。長年にわたり印象に残る花火の協賛を積み上げた企業に送られる称号のような自然発生的ネーミングライツだ。
花火の内容は正式名称のとおり2尺玉を含むミュージック花火だが、単プログラムでここまでの火力と芸術性を両立したものは極めて稀。多分知らない人が想像する3倍ぐらいの火力と5倍ぐらいの芸術性で、終わった後にはオメメぱちくりで「ちょちょちょなにこれ?ひゃあすごい(笑)」とSNSに何か投稿したくなってしまう、そんな花火だ。
2022年は7月30日(土曜日)に開催された。場所は例年通り揖斐川河川敷を会場とし、中州からの打ち上げである。
桑名の夏は暑かった
当日の昼過ぎに到着して、まずは会場を見に行った。上からの直射日光、下からの照り返しがきつく立っているだけでクラクラしてくるが、既に準備は着々と進行中であった。
さすがにスタッフもこの暑さでは、適宜休憩をとるなど熱中症対策をしながらの作業だと思う、というかそれが当然であると思うが、そんなスタッフや関係者に交じってなんとすでにゲートに並んでいる人がいた。いや、私もかつて挑戦したことがあるので気持ちは分かる。そんな情報はマツログの読者各位の役には全く立たないと思うが、このアスファルトと同じくらい熱いシンパシーを感じてしまったのでご紹介。
そして、今年の桑名を象徴する風景がこちら。観覧エリア真後ろの道路上に屋台が1軒もないのだ。これは先に述べた感染症対策の一環。とはいえ、さすがにこの時間からやってくる一般観覧客はいない。その差を実感するのは夜になってからになるだろう。
さて、あっという間に時間は過ぎて会場入りの後である。屋台が無いのが影響したのかどうかは定かではないが、人の集まりも目に見えてゆっくりのように思う。そういう意味では感染症対策の効果は出ている。
晴天、やや追い風の微風という、桑名の夏によくある良コンディション。この花火が再び見られることに感謝しつつ、開始のアナウンスを聞く!
中部コーポレーション80周年記念花火
ときどき、いるのである。「△△がすごい」などというネットの情報に振り回されて、せっかくその地に赴いても他に目を向けない人が。でも、そんな人も否が応でも気が付いたのではないだろうか。桑名は2尺以外もすごい、NTN以外もすごい、のっけからすごいと。そうなのだ。まず今年は、建材製品・フード機器を手掛け桑名に工場を構える中部コーポレーションが創立80周年記念プログラムを投入し、実に豪華な第一部。久々に見る大型花火の景色を見て魂が熱くなる。いいなあ桑名。こんな大口のスポンサーがついてくれるなんて。ありがたい!
レインボーカラーの花火も、以前よりは各地で見かけるようになったが、これを作る方は大変そう。というか大変に違いない。写真だとかなり加工ができてしまうので、なまじ写真がきれいだと現実か疑われそうであるが肉眼でもきれいな虹色に見えた。もっとも、上から下から花火が交錯する中での虹色なので、視界が全面的にキラキラと大変なことになる感覚だ。
この、中部コーポレーション80周年記念花火もミュージック花火。リズミカルにいろいろなシーンが現れては消えるので、見逃すと損した気分になる。その結果目が離せない。
花火を打ち上げているのは対岸ではなく、川の中州だ。木が生えているのでスケール感も分かるだろう。中州のさらにずっと向こうに対岸があって、そこから花火を見ている人もいる。
本日の2尺玉、1発目いただきました!と言っている間に2発目が打ち上がる。2尺玉の連打という贅沢な花火。この会場、河川敷から中州までがちょうどいい距離のため、すべての花火がほぼ横一線に並んでいる。花火大会によっては大玉だけ遠くの方から打ち上げるところも結構あるが、間合いが同じだとそれぞれの大きさの違いが際立つ。この写真にもあるが筒から吹き出す火柱も2尺は迫力が違う。もちろん上空で炸裂した時の迫力も、である。
ギュッと濃縮花火
よくある納涼花火大会では、1スポンサー1花火が普通で、それは出資するスポンサーの気持ちを考えれば当たり前なのだが、逆に言えば花火の火力がプログラムごとに分散することに他ならない。ところが、今年の桑名水郷花火大会はコロナ対策でそうもいっておれないということだろうか、複数の協賛を束ねて大きなプログラムとすることで時間短縮という構成だった。「人の密」は良くないが「花火の密」をやると見栄えが良くなる。どっちがよいかと言われるとどっちもよいのだが、今回は濃縮花火を大いに楽しんだ。
ただし、すべてが上記の写真のように短時間でドカドカ打つわけではなく、単発花火のコーナーも用意されていた。オーソドックスなものからちょっと変わったものまで、なかなか面白かった。その中でも特に変わった玉をご紹介。といっても写真じゃよく分からない。光っている星と消えている星が交互に入れ替わりながら全体の色も変わっていく不思議な花火だった。
今回は、花火で季節を表現するという桑名四季めぐりというコーナーがあった。桑名の風土に精通していれば、細かいネタに気づけたのかもしれないが、私の力不足で申し訳ない。お気に入りのシーンがこちら。
これが令和4年最新究極の2尺
そしてあっという間に第3部。ついにやってきましたNTN。今年はこれがフィナーレを兼ねている。NTNの社員によるカウントダウンで、初弾2尺玉。からDAOKO×米津玄師「打上花火」のイントロがスッと流れ始める。そこからはもう鳥肌の連続。3年ぶりの芸術2尺は、コロナ禍でもキッチリ進化していたのだった。
それにしても、この2尺玉。製造しているのは伊那火工堀内煙火店という花火屋さんなのだが、いったい何がどうなっているのであろうか。この下に載せた花火なんかCGですと言われてもよく分からないし、ましてや本物となればますます分からないだろう。何を言っているのか分からないと思うが私も目の前で何が起こっているのかよく分からなかった。とにかく巨大で美しいものが轟音と共に頭上に輝いた。
インスタ映えを狙っている人は、近すぎ大きすぎで狙いのものは取れないっすね。離れましょう。
1曲ずつがフルコーラスで、その中で「何発かの2尺」が上がり、それが3曲あった。なんとも贅沢。それでいて曲の雰囲気にもバッチリ、リズムもぴったり。どうなってんの?
2曲目はQueen「Don’t Stop Me Now 」、3曲目は「The Greatest Show」であった。
サプライズ・サプライズ・お願い
大喝采と、感嘆と、中州の花火師にむけてスマホライトを振りまくり感動の大団円と思わせて、まさかのラスト1発おまけの2尺が超絶技巧E難度の四重芯というサプライズ。余談だが、先日花火玉作りに挑戦した私は四重芯どころかひとつの芯も作れずギブアップした。それを4つも、2尺玉として製造する程度(?)の難しさである。
おまけが2尺四重芯!?惚れてまうやろー!!といいつつ河川敷からよっこらしょと道路に戻ってくると、最後の最後にもうひとつのサプライズが待っていた。
ゴミが・・・ない!
こう言ってはナンだが、桑名水郷花火大会が終わったあとの路上に巻き散らかされたゴミは、花火ファンの間でも悪い意味で有名だった。なあんだ、やればできるじゃない。思うに観客数を減らしたというのもあるけど最大のポイントは屋台を置かなかったことでゴミの元が無くなった。屋台がないと楽しくないという意見は分かるが、だからと言ってあのゴミが許されるのかとなればそれば別問題であって、ぜひともこれをきっかけに主催者さんとテキヤさんとで改善に乗り出していただきたく。
この日は綺麗な花火ときれいな会場に気分よく帰路についたのであった。