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日本三勅祭とは?どんな祭り?葵祭、春日祭ともう一つはどこ?

2023/12/29
2024/3/5
日本三勅祭とは?どんな祭り?葵祭、春日祭ともう一つはどこ?

日本には数十万もの祭りがあるといわれますが、その中でも「勅祭(ちょくさい)」という祭りがあるのをご存じでしょうか?天皇の使者である「勅使(ちょくし)」が派遣されて行われる祭りのことです。

そのうち、儀式を保存する目的も併せ持ち、古式にのっとって行われている3つのお祭り、京都の上賀茂神社・下鴨神社の「賀茂祭(葵祭)」、同じく京都・石清水八幡宮の「石清水祭」、奈良の春日大社で行われる「春日祭」の3つは、「日本三勅祭」とされています。

今回は勅祭が行われている神社について、また、三勅祭とされる3つのお祭りについてご紹介します。

勅使とは?勅祭、勅祭社とは

三勅祭の紹介の前に、勅祭にきて勅使はどんなことをするのか?勅祭が行われる神社「勅祭社(ちょくさいしゃ)」はどこのことでどんな歴史があるのか?について説明しましょう。

勅祭の幣帛には天皇家の菊の御紋が。写真は石清水祭のもの

勅祭には天皇の名代として勅使が直々に参向します。勅使は原則として宮中祭祀に当たる掌典職が任じられ、天皇と等しく扱われるため、祭祀の中で最上の官位として迎え入れられます。

勅使が身に着けるのは、江戸時代以前の公家の正装である束帯です。同様に古式ゆかしい装束の奉仕者と、神社の神職とともに儀式を執り行います。勅使は神前に天皇からの幣帛(へいはく。お供え物のこと)を届け、祭文を奏上しますが、祭文が書かれる紙の材質や色も厳格に決められています。

束帯姿の葵祭の勅使

古から天変地異や国家の重大事が起こるたび、朝廷から使いが遣わされ特別の奉幣を受けた神社は数々あったそうです。平安後期になると主に畿内の22か所が選ばれ、「二十二社」という制度が確立、神社の社格を表す呼び名としても定着しました。

しかし、二十二社は朝廷の衰退とともに形骸化していき、室町時代後期には朝廷の奉幣が中断してしまいます。この制度を元に勅祭社がまた整備されたのは明治元年(1868年)のこと。明治天皇が大宮氷川神社(現・埼玉県さいたま市)の祭事を勅祭として行ったのが近代の勅祭社の始まりとなりました。

現在の勅祭社は下記にあげた全国16社で、伊勢神宮は毎年五大祭(月次祭を除く)に勅使が派遣されますが、別格とされ勅祭社には含まれていません。

◎現在の勅祭社(16社)・勅祭・開催日

橿原神宮<奈良県橿原市>……例祭(紀元祭)/毎年2月11日
春日大社<奈良県奈良市>……春日祭/毎年3月13日
香取神宮<千葉県香取市>……例祭/毎年4月14日 ※勅使が来るのは6年ごとの子年・午年。特に12年ごとの午年には式年神幸祭として大々的に斎行
平安神宮<京都府京都市>……例祭/毎年4月15日
近江神宮<滋賀県大津市>……例祭・近江まつり/毎年4月20日
靖国神社<東京都千代田区>……春季例大祭 毎年4月21日~23日/秋季例大祭 毎年10月17日~20日
出雲大社<島根県出雲市>……大祭礼/毎年5月13日が前夜祭、14日~16日が本祭
賀茂別雷神社(上賀茂神社)<京都府京都市>……賀茂祭(葵祭)/毎年5月15日が本祭
賀茂御祖神社(下鴨神社)<京都府京都市>……賀茂祭(葵祭)/毎年5月15日が本祭
熱田神宮<愛知県名古屋市>……熱田まつり/毎年6月5日
大宮氷川神社<埼玉県さいたま市>……例祭/毎年8月1日
鹿島神宮<茨城県鹿嶋市>……例祭/毎年9月1日 ※勅使が来るのは6年ごとの子年・午年。特に12年ごとの午年には式年大祭として「御船祭」を斎行
石清水八幡宮<京都府八幡市>……石清水祭/毎年9月15日
明治神宮<東京都渋谷区>……例祭/毎年11月3日
宇佐神宮<大分県宇佐市>……臨時奉幣祭(勅使祭)/10年に一度で10月上旬
香椎宮<福岡県福岡市>……臨時奉幣祭/10年に一度

それでは、ここからは「三勅祭」といわれる3つのお祭りを紹介します。勅祭のうちでも古くから伝わる儀式を保存する目的で、特に古式ゆかしく行われる祭りです。

【賀茂祭(葵祭)】賀茂神社(京都府京都市)

腰輿(およよ)に乗って優雅に都大路を進む斎王代

正式名称を「賀茂祭」という葵祭は、下鴨神社と上賀茂神社の例祭です。毎年5月15日に行われ、500名もの時代行列が京都御所から上賀茂神社まで約8kmの道のりをゆっくりと進む「路頭(ろとう)の儀」が最大の見どころ。祇園祭、時代祭と並び「京都三大祭り」とも称されています。

もともと勅使が賀茂社へと向かう行列が注目を浴び、大勢の観客が押し寄せて祭りに発展した葵祭。その熱狂ぶりは「源氏物語」にも描かれているほどです。

近衛使代

現在の路頭の儀には2つの行列があり、勅使の役目をする近衛使代(このえつかいだい)を中心とする「本列」と、その後ろに斎王代(さいおうだい)を中心とする「斎王代列」が続きます。

斎王というのは、平安時代に皇室の未婚の女性から選ばれて賀茂社に奉仕した女性のことです。現代では京都市民の女性から1名が選ばれ、斎王に代わる「斎王代」としてその役割を担います。

また、勅使が賀茂社で捧げる祈りは「社頭(しゃとう)の儀」と呼ばれます。葵祭で勅使が奏上する祭文は、紅色の紙に書くと決まっているそうです。

ちなみに葵祭の名前の由来は、賀茂社の神紋である二葉葵にちなんでいて、社殿には葵を飾り、祭りに参加する人々はみな葵を身につけることからきています。

【石清水祭】石清水八幡宮(京都府八幡市)

「石清水(いわしみず)祭」は、京都府八幡市の石清水八幡宮で毎年9月15日に行われるお祭りです。
最初に行われるのは「神幸の儀」で、開始時間はなんと真夜中の2時。松明や提灯を灯した500人が山上の拝殿から御鳳輦(ごほうれん)のお供をして降りてくる行列は「動く古典」と称されます。

夜明けから勅使が登場して、祭りが私祭から官祭に変わります。
勅使が奏上する祭文が書かれるのは、石清水八幡宮では黄色の鳥子紙(とりのこがみ)と決まっています。

頓宮神幸の儀をひととおり終えると、すぐ横を流れる放生川に魚を放つ放生行事に移ります。
この祭りの起源は、863年に八幡大神が放生川に魚や鳥を放ち「生きとし生けるものの平安と幸福を願う」ために行った「石清水放生会」ともされていて、この催しもしっかりと伝統に則っているのです。

【春日祭】春日大社(奈良県奈良市)

春日祭は、奈良市にある春日大社の例大祭です。以前は2月と11月の上の申の日が式日だったことから「申祭」とも呼ばれていますが、1886年以降は毎年3月13日に行われるようになりました。

一般の拝観が不可のため、詳細は謎のベールに包まれていますが、当日は朝の9:00から宮中より勅使を迎え、国家の安泰と国民の繁栄を祈るそうです。

まとめ

「三勅祭」は、それぞれが古くから長く続く歴史のある雅なお祭りです。
見られるお祭りについては、「勅祭」の歴史に思いを馳せながら、実際に勅祭を見に出かけてみてはいかがでしょうか?

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