福岡県には古くから人々に親しまれ、愛されて、大切に受け継がれてきたお祭りが数多くあります。その中でも、
◎博多どんたく港まつり
◎博多祇園山笠
◎筥崎宮(はこざきぐう)の放生会(ほうじょうや)
の3つは、特に規模が大きく有名で「福岡三大祭り(博多三大祭り)」とも称される、福岡を代表するお祭りです。この記事ではこれらの福岡三大祭りについて、それぞれどんなお祭りなのか由来や見どころ、開催日程などをご紹介します。
博多どんたく港まつり
「博多どんたく港まつり」は、毎年5月3日・4日の2日間、博多の市街地を中心に盛大に行われる福岡の一大イベントです。参加団体はのべ約650団体、出場者は約33,000人、見物客は約200万人にのぼり、ゴールデンウィーク期間の日本一の祭りといわれています。
歴史は古く、1179年に始まった伝統的民俗行事「博多松囃子」が起源とされています。祝い合う行事をシャレッ気の多い博多町人が発展させ、戦争などで一時中断はあったものの1962年に市民総参加の「福岡市民の祭り」となりました。
「どんたく」の語源はオランダ語のZontag「ゾンターク(休日)」と言われており、明治12年頃から「どんたく」と呼ばれるようになったそうです。
個性豊かで多彩な「どんたく隊」と呼ばれる人々が披露する大通りや舞台でのパレード、さまざまなパフォーマンスが、このお祭りの一番の見どころです。思い思いの仮装姿の老若男女が街を練り歩き、街中が華やぎます。
踊り手は祭りの象徴ともいえるシャモジを叩きますが、これは昔、商家の前をどんたく囃子が通りかかった時、夕食を支度中の商家の女将さんがその音色に浮かれ出し、手に持っていたシャモジを叩いてお囃子に加わったことから始まったといわれます。
そして2日目の夜、お祭りのクライマックスに行われるのが総踊り。観光客でも誰でも、見よう見まねで楽しく踊れます。
踊りだけでなく、馬にまたがる三福神(福神・恵比須・大黒)や稚児行列が市中を巡る「博多松ばやし」には「博多どんたく」のルーツを感じることができ、にぎやかな花電車や花自動車のパレードも見逃せません。
見所満載の博多どんたく港まつり。今年2022年は、例年通り5月3日(火)・4日(水)に開催されました。現地の詳しい様子は、下記の1日目のレポートをぜひご覧ください!
※お祭りの最新情報は、博多どんたく港まつり公式サイトなどでご確認ください。
博多祇園山笠
「博多祇園山笠」は700年の歴史を持ち、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている博多を代表するお祭りです。毎年7月1日~15日までが開催期間で、博多の総鎮守「櫛田(くしだ)神社」に祀られるスサノオノミコトに奉納される神事である点で、全国各地で行われる祇園祭の一つといえますが、独自に発展した部分も多いお祭りです。
起源には諸説あります。スサノオノミコトを勧請した941年には、すでに京都では現在の祇園祭の原形の神事が行われていたのでほぼ同時期に始まったという説や「九州軍記」に基づいて1432年という説などです。
一般に広く知られているのは、1241年に聖一国師が疫病除去のため、施餓鬼棚(せがきだな。無縁仏を供養するために設ける棚)に乗って甘露水を撒いたのが始まりとする説。当時は神仏混淆の時代であり、これが災厄除去の祇園信仰と結びついて山笠神事として発展したといわれています。
なお、祇園信仰については下記で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
期間中は、博多人形師による博多人形で飾られた高さ10メートルの絢爛豪華な「飾り山笠」を市内14か所で見ることができます。個性豊かな飾り山笠はいくら見ていても飽きません。飾り山笠を一目見ようと、櫛田神社をはじめとする福岡市内各所に、全国から多くの人が訪れ博多の街が熱気に包まれます。
一方、飾り山笠とは対照的に、担ぐことを目的に作られた少しこぶりな山笠が「舁き山笠(かきやまかさ)」です。威勢のいい掛け声とともに男衆たちが舁き山笠を担いで走る姿は迫力満点。こちらは祭り期間の後半から楽しめます。
最終日の夜明けから行われる、7つの「舁き山笠」と「走る飾り山笠」と呼ばれる飾り山笠が街中を疾走する「追い山」が祭りのフィナーレであり最大の見所!
午前4:59から奉納行事である「櫛田入り」が行われ、櫛田神社の境内112mはタイムアタックの舞台となって壮絶な熱気に包まれます。山笠は追い山の全長5㎞コースでもタイムを競い、早朝の博多の街を駆け回ります。
2022年は、7月1日(金)~15日(金)に行われました。3年ぶりに追い山も行われ、一番山が櫛田入りしたときに歌う「祝いめでた(博多祝い唄)」の声が響き渡りました。また来年も博多の街が熱気に沸き返るのが今から楽しみですね。
オマツリジャパンには、初めて博多祇園山笠を見に行く時でも存分に楽しめる徹底解説記事があります!ぜひ参考にしてください。
※お祭りの最新情報は、博多祇園山笠公式サイトなどでご確認ください。
筥崎宮の放生会
福岡市東区箱崎にある筥崎宮のお祭りは、正月の勇壮な「玉せせり」も有名ですが、毎年9月12日~18日の7日7夜にわたって開かれる秋の「放生会(ほうじょうや)」には、100万人以上もの人が訪れ福岡随一の賑わいを見せます。
放生会は一般的には「ほうじょうえ」と読み、殺生を戒める仏教の教えに基づいて奈良時代より行われ、捕らえた魚や鳥を池や野に放して供養する儀式です。
大分県の宇佐神宮や京都の石清水八幡宮の放生会は、戦乱で死者を出した罪の償いとして始められた歴史があります。現在は秋の収穫祭や感謝祭の意味も込めて、全国各地の寺院や八幡宮・八幡神社で陰暦8月15日前後に行われています。
筥崎宮の放生会も919年に行われたという記録が残っており、1,000年以上続く「万物の生命を慈しみ、殺生を戒め、秋の実りに感謝する」お祭りです。期間中は、参道一帯にお化け屋敷や射的、ヨーヨー釣り、名物の新ショウガなど約500軒もの露店が立ち並び、多くの人で賑わいます。
稚児行列や童児育成祈願祭などの、様々な神事や神賑行事が行われますが、その中でも特有なのが最終日に行われる鳩や魚を自然に帰す「放生神事」です。あらゆる生き物を尊び、感謝の気持ちを捧げることを目的としているこのお祭りならではですね。
他にも、生きていく上でやむを得ず犠牲にしてしまった生き物や、大切にしてきたペットの霊(みたま)祭りも行われます。
さらに、2年に1度、西暦が奇数年の年には、福岡市無形民俗文化財にも指定されている「御神幸(御神輿行列)」が行われ、9月12日の夕方に筥崎宮から頓宮まで練り歩く「御下り」、14日の夜に筥崎宮まで戻る「御上り」が氏子500名により斎行されます。
2022年は、9月12日(月)~18日(日)に行われます。2020年と2021年は神事のみが行われましたが、3年ぶりに約500店の露店が復活。閉店時間が例年より1時間早まって22時となっていますが、博多っ子馴染の光景が戻ってきます。
※お祭りの詳細や最新情報は、筥崎宮の公式サイトなどでご確認ください。
おわりに
今回は、福岡三大祭りと呼ばれる3つのお祭りを紹介しました。三者三様それぞれに個性的で魅力的なお祭りですね。
福岡以外の全国各地や海外からも大勢が訪れ、誰でも参加できる博多どんたく港まつり。山笠に夢中になる「山のぼせ」の男衆が、いなせな法被姿で街にあふれる博多祇園山笠。子どもの頃から露店が毎年楽しみだったという思い出を持つ人が多い筥崎宮の放生会。
いずれも人々に大切に受け継がれてきた季節を感じられるお祭りです。興味をもった方は、ぜひ現地でしか味わえない感動のひとときを体験しに、福岡に出かけてみてはいかがでしょうか。