九州のお祭りといったら、福岡県の「博多どんたく港まつり」や「博多祇園山笠」の名前を真っ先に思い浮かべる方が多いかもしれませんね。
しかし、九州には他にも魅力的なお祭りがいっぱい。地元の方たちに古くから愛され、大切に受け継がれているお祭りもたくさんあります。その中でも毎年秋に開催される
◎八代妙見祭(やつしろみょうけんさい)/熊本県八代市
◎筥崎宮(はこざきぐう)の放生会(ほうじょうや)/福岡県福岡市
◎長崎くんち/長崎県長崎市
の3つは「九州三大祭り」と称されています。
特に大正~昭和の頃は今とは比べ物にならないくらい大賑わいだったようで、昭和2年の新聞には「一に妙見、二で放生会、三で長崎くんち」といったことが書かれていたのだとか。この記事では、それぞれのお祭りについて見どころや由来などをご紹介します。
八代妙見祭(熊本県八代市)
八代妙見祭は、熊本県八代市で行われる八代神社(妙見宮)の大祭です。祭礼は1か月間にわたりますが、最大の見どころは「神幸(しんこう)行列」。
八代神社からお神輿が出て、毎年11月22日は塩屋八幡宮の御旅所へ向けて「お下り」の行列、11月23日には還御する「お上り」の行列に約1,700人がお供し、絢爛で多彩な40種もの出し物を披露しながら約6kmの道のりを練り歩くのです。
八代神社到着後は観覧席が設けられた砥崎河原に出し物が集結。順番に演舞が披露され、全国から詰めかけた人々は興奮に包まれます。
八代神社は、明治時代に改称されるまで「妙見宮」という名前でした。その起源は今から1300年以上前に中国大陸から妙見神がやってきて、八代神社から約2km離れた「竹原の津」に上陸し、後に妙見宮に祀られたことと伝わっています。
妙見神は、北極星と北斗七星を神格化した神仏習合の神様で、竹原の津へは亀と蛇が合体した想像上の動物「亀蛇(きだ)」の背に乗って海を渡ってきたという伝説があり、今でも亀蛇は「ガメ」の愛称で呼ばれ祭りで一番有名な出し物です。
全長約3m、重さ約130kgもある「ガメ」は首を左右に振ったり、上下に伸縮させたり、くるくる回転したりと動作も巧み。水しぶきをあげ川に入ったり、観客席に駆け上がったりと暴れ回りますが、そのたび観衆から歓声が上がるほどの人気ぶりです。
約390年前に始まったとされ、多種多様な出し物が街を行き来する八代妙見祭の神幸行事は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。お祭りの由来や各出し物の詳しい解説は、下記の記事もあわせてご覧ください!
今年2022年の神幸行列は3年ぶりに、11月22日(火)にお下り、2022年11月23日(祝・水)にお上りの行列が開催予定です。
例年と異なる点や注意点などもあり、最新情報は八代妙見祭公式サイトなどでご確認ください。
筥崎宮の放生会(福岡県福岡市)
福岡県福岡市の箱崎にある筥崎宮。毎年9月12日~18日の七日七夜にわたって開催される「放生会」は万物の生命をいつくしみ、殺生を戒め、秋の実りに感謝するため行われています。
起源は千年以上前に遡り、「合戦の間多く殺生す、よろしく放生会を修すべし」というご神託によって始められたとされています。
放生会は一般的には「ほうじょうえ」と読み、殺生を戒める仏教の教えに基づいて奈良時代より行われ、捕らえた魚や鳥を池や野に放して供養する儀式です。現在も筥崎宮のみならず全国各地の寺院や八幡宮・八幡神社で秋の収穫祭や感謝祭の意味も込めて、旧暦の8月15日前後に行われています。
筥崎宮の放生会は、参道に数多のグルメ屋台、お化け屋敷や射的・ヨーヨー釣り、名物の新ショウガなど約500軒もの露店が軒を連ね、連日大変な賑わいを見せるのが最大の特徴。トータルでのべ100万人が訪れます。
筥崎宮の放生会は「博多どんたく」「博多祇園山笠」と並ぶ福岡三大祭りの一つで、博多っ子で知らない人はいない大きなお祭り。2年に一度(西暦の奇数年)行われる「御神輿行列」は、福岡市無形民俗文化財です。
2022年は9月12日から2022年9月18日にかけて開催されました。ここ2年は神事のみだったため、3年ぶりに復活した約500店の露店は、閉店時間が例年より1時間早まって22時とだったとはいえ多くの人々が詰めかけ大盛況でした。
次回は、2023年9月中旬に開催予定となっています。詳しくは筥崎宮の公式サイトでご確認ください。
長崎くんち(長崎県長崎市)
長崎県長崎市にある諏訪神社のお祭りで、毎年10月7日~9日の3日間、開催されるのが「長崎くんち」です。
「くんち」とは「九日」がなまったという説が有力で、九州では秋祭りのことを表します。九月九日は「菊の節句(重陽の節句)」ですが、旧暦のこの日に邪気を払って無病息災を願うとともに、秋の収穫に感謝する祭りを行っていたため、秋祭り自体を「九日」と呼び表していたのだそうです。
長崎くんちは、1634年に2人の遊女が神前に舞いを奉納したのがはじまりとされ、長崎奉行の援助や出島の完成により年々盛んに。次第に、長崎らしく国際色豊かな祭りへと発展していきました。
ポルトガルやオランダ、中国・ベトナムなど、貿易や交流が盛んだった異国の風合いを色濃く残したダイナミックな演し物(だしもの)が、長崎くんちの最大の見どころです。
「奉納踊り」と呼ばれるこの演し物は、59の町が7組に分かれ、7年に一度の当番の年に奉納、披露します。奉納踊りは踊り、曳物、担ぎ物、通り物の4つに大きく分けられ、各町で内容が異なるため、毎年違った演目を見ることができ飽きません。
代表的なものだけでも「龍踊(じゃおどり)」「鯨の潮吹き」「御朱印船」など個性豊かで、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。ほかの奉納踊りやさらに詳しい祭りの由来などは、下記記事をご覧ください!
残念ながら、2022年は新型コロナウイルスの影響により開催中止。2022年10月7日~10月10日の4日間、出島メッセ長崎にて代替イベント「ながさき大くんち展」が開催されました。
来年こそは盛大に開催されることに期待しましょう。詳細と最新情報は長崎くんちのホームページでご確認ください。
まとめ
今回は「九州三大祭り」と称される3つの祭りを紹介しました。
いずれもオリジナリティ溢れる出し物や、どこまでも立ち並ぶ露店などで訪れる観光客を魅了し、地元で愛されてきたお祭りです。
毎年秋に開催される九州三大祭り。三種三様の魅力を味わってみてはいかがでしょうか。