古代の遺跡群を楽しめ、小学校定番の遠足スポットとして知られる奈良県明日香村。そんな明日香村にて毎年2月第1日曜に行われるのが、国内でも屈指の奇祭として呼び声高い「おんだ祭り」です。なんでも、天狗が見物客のお尻を叩きまわったり、舞台の上で卑猥な催しが行われる等々、とてもユニークなお祭りなのだとか。
今回はそんなおんだ祭りの現場に赴き、個性満点なその魅力を体感してきました。
(この記事は2020年に公開されたものを再編集しています。 2021年1月15日 編集部更新)
目次
1:臨時直通バスで飛鳥坐神社へ
近鉄「橿原神宮前駅」より、臨時直通バスで「飛鳥(あすか)」バス停へ。
周囲には広々とした田んぼの跡。
バス停すぐそばにある道の駅「あすか夢の楽市」から5分ほど歩き、おんだ祭りの舞台となる「飛鳥坐神社(あすかにます神社)」へ到着。日本書記にもその名が見える由緒正しき社であり、子授けの神様が祀られています。
時刻は9時40分ごろ、周辺ではすでに屋台の準備が行われていました。
2:天狗と翁が見物客のお尻を狙う「悪魔除け行事」
時刻は9時50分ごろ、祭りの開始を拝殿前で待つ。
10時、祭りの主役となる「天狗」が登場!
続いてもう一人の主役、「翁(おきな)」も現れました。
いよいよ、おんだ祭りの前座的イベント「悪魔除け行事」がスタート。天狗と翁が神社周辺を徘徊し、目についた人々の尻を手に持った青竹で容赦なく叩いていきます。これによってよくない気を祓っているのだとか。
その竹筒は先端が分割されており、激しく音がなるようなつくりとなっています。でも、「じゃあ痛くないのか」というのは間違いで、大人は男女問わずかなり全力で叩かれちゃうのです。
(記者は4回ぐらい叩かれました)
フルスイング!
子どもにはやさしく、「ちょこん」と触る程度です。
しかし、天狗や翁の無表情はやはりおっかないものなのか、周囲には子どもたちの泣き声が響いていました。
3:神社周辺に竹の音が鳴り響く!
獲物を物色する翁。カメラマンはとくに集中して狙われる傾向があるような。
決めポーズにも柔軟に対応してくれますが、その後ほぼ間違いなく叩かれます。
車が来たときはちゃんと待ちます。
年に一度のツーショット。
一度にダブルで叩かれることも。
落ちる厄も二倍?
獲物を目指し、駆ける!
4:笑いを交え豊穣を祝う「御田植神事」
その後、境内能舞台での雅楽の演奏や居合の演武を経て、14時におんだ祭り第一部「御田植神事」が開始されます。それに伴い、先ほどの天狗と翁に加え、新たに牛が舞台へ登場。入場の際は四つんばいで歩いてきましたが、椅子にはふつうに座っていました。
突如、客席を威嚇するかのように竹を振り回しだす翁。
神さまへの供え物として「米」「粟」「豆」「苗松」が捧げられ、宮司によって祝詞(のりと)が奏上されます。
その後、翁、天狗、牛が鋤で舞台上を耕作。鋤や鍬等の農具で耕し、稲に見立てた松の葉を植えていきます。
突然眠りだす牛、ずっこける翁のユーモラスな姿に会場からは笑いが。
最後は収穫した稲を客席へ。これをキャッチするのはなかなか難しいです。
5:ちょっぴりハレンチ? 天狗とお多福の「夫婦和合」
御田植神事終了後、いよいよ第二部「天狗とおたふくの結婚式」へ。非常に恰幅のよいおたふくが恥ずかしがりながら登場しました。神社側の進行曰く「新婦であるおたふくのなよなよとした恥ずかしい表情」が見どころとのこと。
「鼻突飯(はなつきめし)」を受け取り、翁の仲人によって結婚式を執り行う二人。
おもむろに青竹を股間に当て、己の男性器に見立て暴れる天狗。四股まで踏みだすハッスルぶり。
そしていよいよ「夫婦和合(ふうふわごう)の儀式」がはじまります。口づけを交わす二人の前に立ちはだかり、「見るな!」とばかりに竹を振り回す翁。
舞台上に敷かれた畳みへおたふくを寝かせる天狗。終始恥ずかしがり、顔を手で覆い続けるおたふく。
激しい動きで性交の見立てを行う二人。この光景、テレビで放送できるのでしょうか?
なぜかちょっかいをかけたり、客の前に立ちはだかり視界を妨げようとする翁。そうした卑猥ながらもおかしな動きの数々で、境内は笑いに包まれていました。
最後は客席に向かって2000個もの小餅を投げる「御供まき(ごくまき)」が行われました。
この際餅に混じって投げられる紙包みを受け取ると、その人は子宝に恵まれるそうです。
6:まとめ
このおんだ祭り、明日香のみならず九州熊本等西日本各地で稲の豊穣や子宝を願うための祭事として伝えられています。しかし、天狗や翁が参拝者を叩く、舞台上で性交を模した催しが行われる、といったこの地域のものはその中でもきわめて奇抜なため、特に知名度が高いようです。
そのため、当日はその風変りな祭りを楽しもう、写真に収めようと全国から多数の見物客が訪れます。とくに御田植神事以降一連の催しの際は、境内に踏み場もないほど大勢の人々がやってくるため、ベストなポジションでお祭りを楽しみたいのであれば、少なくともその1時間~1時間30分ほど前から場所とりを行っておいた方がよいのではと感じました。
先述の通り、当日は近鉄橿原神宮前駅より直通バスが運行されているため、アクセスは比較的容易となっています。「今まで見たことがないようなお祭りがみたい!」という方、オススメですよ。