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中秋の名月とは?十五夜とは違う?なぜお月見をして団子を食べるのか

2021/9/21
2024/3/8
中秋の名月とは?十五夜とは違う?なぜお月見をして団子を食べるのか

9月の代表的な年中行事に「中秋の名月」があります。でも、「中秋の名月ってどういう意味?」とか「十五夜とはどう違うの?」など、素朴な疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、中秋の名月にまつわる基礎知識や、お月見には欠かせないお団子などお供えの種類やお供え方法などに注目。中秋の名月に合わせて行われる月下の雅なお祭りもあわせてご紹介します!

(この記事は2021年に公開したものを一部再編集しています)

中秋の名月の意味は?十五夜とは違う?

「中秋」とは旧暦の8月15日のことで、「中秋の名月」はその日に見られる月を表し、秋晴れで空も澄み、1年のうち一番明るくて美しい月とされています。

漢字で「仲秋」と書くこともありますが、これは旧暦で秋とされる7月、8月、9月の3か月のうち、真ん中の8月を指す言葉です。よって「仲秋の名月」というと旧暦8月で一番美しい月のことになり、中秋の名月とほぼ同じ意味になります。

秋晴れで美しく見えるほか、見上げやすい高さに出てくることも名月といわれる理由

旧暦では月の満ち欠けを暦に反映しており、毎月新月の日を1日としていました。月は新月から約15日で満月になるため、満月の夜や満月そのものを「十五夜」と呼ぶのはここからきています。

毎月1回は十五夜がめぐってくるわけですが、だんだんと1年のうち一番月が美しい旧暦8月15日の十五夜を指して「十五夜」というようになってきました。現在では特にことわりがない限り、中秋の名月のことを一般的に十五夜と呼んでいます。

中秋の名月が毎年違う日で満月とは限らない理由

2023年の中秋の名月=十五夜は9月29日ですが、実は、日付が毎年変わることをご存じでしょうか。

現在使っている新暦を旧暦に置き換えるときには、その年の秋分の日(祝日としてではなく、天文学としての日付)より前の、一番近い新月の日を1日目(旧暦の8月1日)として、15日目を中秋とします。
そのため毎年ばらばらになり、9月7日~10月8日の間で変化し、19年でだいたい一巡します。長期的な中秋の名月の日付(2030年まで)は、国立天文台の暦計算室の暦Wikiで確認できますので参考にしてください。

また、十五夜というと満月のイメージがありますが、実際は満月であるとは限りません。
月は地球の周りを楕円で回っていて、新月から満月になるまでの時間(月齢)は13.9日~15.6日の幅でランダムに変化します。そのことなどが理由で、満月の日と一致せず1日~2日ズレることがよく起きるのです。

お月見の風習の由来は?海外の事情と月の呼び名

旧暦の8月15日頃は芋類などの収穫が終わり、稲の実りを待つ間の農閑期でした。そのため稲の豊作祈願や、作物がたくさんとれたことを感謝する収穫祭が行われていたといわれます。

一方、十五夜に月を見る風習は、中国の「中秋節」に由来しています。
中秋節は平安時代に日本に伝わったとされ、貴族の間では優雅な「観月の宴」が開かれました。それが後の時代に農村の収穫祭と入りまじって、庶民にも広まったことが現在のお月見の由来といわれています。

中国では、別名「団円節」と呼ばれる中秋節は連休となり、今でも春節に次ぐ大きな行事です。人々は実家に帰って家族や親しい友人と名月を楽しみながら食卓を囲んだり、月餅を贈りあって食べたりして、団らんのひとときを過ごします。

台湾やベトナムでも月餅を食べる習慣があり、韓国でも「秋夕(チュソク)」といって連休となり、親戚一同が故郷に集まってお墓参りにいったり、秋の収穫をお祝いしたりします。

中国の中秋節に欠かせないお菓子、月餅(げっぺい)

欧米にはお月見のような風習はありません。ですが、英語には毎月の満月の呼び名があり、秋分の日に最も近い満月のことを「Harvest Moon(ハーベストムーン)」と呼ぶそうです。

ちなみに、日本では十五夜以外にも風流な月の呼び名がたくさんあります。十五夜よりやや遅い時刻にためらいがちに出てくる16日目の月を指す「十六夜(いざよい)」がその代表です。

17日目の月は、月の出を立って待つので「立待月」、18日目は座って「居待月」、19日目は寝て「寝待月」、20日目は夜更けまで待つので「更待月」。月の出までの時間はのびていきますが、それをのんびりと待っている表現が面白いですね。

なぜ十五夜に団子を供えて食べるの?

十五夜のお供えは神様に収穫を感謝するため、もとは掘った里芋を高く盛るのが主流だったようです。中秋の名月が別名「芋名月」とも呼ばれるのはここからきています。

それが江戸時代になると、五穀豊穣への感謝も込めて収穫した米で団子が作られるようになり、定着していきました。団子が丸いのは月に見立てたとする説や、中国の中秋節には欠かせない月餅がルーツになっているという説があります。

また、団子を少し細長くして里芋の形に似せたり、さらに小豆あんを被せ「衣被ぎ(きぬかつぎ)」をかたどって作る地域も。

里芋を皮ごとゆでる「衣被ぎ」に似せた団子は京都などにみられるお供え

いずれにしろ供えた団子は、後で皆でいただきます。丸い形は縁起がよく、食べれば健康や幸せになると考えられていたことや、神様との結びつきが強くなり、月に宿った神秘的なパワーもいただくためとされています。

月見団子を供える数にはいく通りかあり、十五夜にちなんで15個、その年に見られる満月の回数に合わせて12個(うるう年には13個)、15を簡略化して5個でもよいとされます。

神事用の器である「三方(さんぽう)」に白い紙を敷いて団子を置くのが正式な作法ですが、代用としてお盆やお皿を使用しても問題ないようです。

団子以外にお供えするものは?

団子以外には、昔ながらの収穫祭にちなんで里芋やさつまいもなどの芋類、ぶどうや柿、栗などの果物、カボチャなど秋に採れた旬の実りやお神酒をお供えすることもあります。特にぶどうのようなツル植物を供えると月の神様とのつながりが強くなるのだとか。

この秋に収穫された旬の味覚もお供えしてみましょう

そして、一緒に飾る植物の代表はススキです。
神様がおりてくるための対象となるものを「依り代(よりしろ)」といいますが、本来は依り代として稲穂を飾りたいところ、収穫前で入手できないためよく似たススキが選ばれたといわれます。

また、ススキはの鋭い切り口は魔除けになるとされ、お供えしていたススキを軒先に吊るせば1年間無病息災で過ごせるという言い伝えもあるそうです。

ススキ以外にも、秋の七草(ハギ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ、ススキ)を飾る場合もあります。

十三夜に十日夜?「三月見」とは

十五夜の後にも、収穫に感謝してお月見をする日本独自の風習があります。

「十三夜(じゅうさんや)」は旧暦の9月13日、中秋の名月の後にめぐってくる十三夜のことです。2021年の十三夜は、10月18日になります。

十三夜は十五夜に次いで美しい月といわれており、どちらか一方しかお月見をしないと「片見月」「片月見」といって縁起が悪いという説も。別名「栗名月」「豆名月」とも呼ばれる十三夜には、団子を13個または3個と栗や豆などの収穫物を供え、ススキを飾ってお月見を楽しみましょう。

十三夜からさらに1か月後の旧暦10月10日が「十日夜(とおかんや)」です。2021年は11月14日になります。

ただしこちらは、主な行事はお月見ではなく稲刈り後に田の神様を見送るもののため、新暦の11月10日に日にちを固定して実施する地域もあります。

十日夜のメインは稲刈りの後に田の神様を見送る行事

十日夜には、かかしと一緒にお月見する「かかしあげ」や、わらを束ねた「わらづと」で子どもが地面を叩いてモグラなどを追い払って土地の神様を励ますなど、地域ごとにいろいろな行事が東日本を中心に行われます。

現代人にとって田の神様は縁遠いものになってしまったかもしれませんが、生きていく糧である食料が採れたことに感謝する気持ちは変わらず持ち続けたいものです。
十五夜、十三夜、十日夜はいずれも収穫に感謝する行事ですし、昔からこの3つがすべて晴れてお月見ができると縁起が良いとされています。
今年はぜひ団子やススキなどをお供えして、この「三月見」を楽しんでみてはいかがでしょう。

中秋の名月に行われるお祭りといえば奈良の「采女祭」

毎年、中秋の名月には、奈良県奈良市の春日大社の末社である采女(うねめ)神社で「采女祭」が開催されます。

お祭りの由来は奈良時代の「大和物語」にある言い伝え。天皇の寵愛が薄れたことを悲観して猿沢池に身を投げた、ある采女(天皇の身辺の世話をする女官)の霊を慰め、人々の幸せを願うためにはじまったお祭りです。

見どころは、時代衣装をまとった花扇使(はなおうぎのつかい)による「花扇奉納行列」と、花扇を池の上の管弦船に移動して雅楽の響きとともに廻る「管絃船の儀(かんげんせんのぎ)」。雅楽を演奏する人たちを引き回す色とりどりの船が光りながら池を進む様子は大変美しく、雅な雰囲気を堪能できます。

また、采女神社では年に一度、祭りの日だけ「糸占い」が授与されます。恋愛と縁結びの象徴の「赤い糸」を、神社の前で中秋の名月の月明かりだけで縫針に通すことができれば、願いが叶うといわれています。

今年の中秋の名月の日にはぜひ奈良を訪れ、幻想的なお祭りとともに糸占いにもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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