西日本で行われる秋祭りといえば、だんじり祭りですね。大迫力のだんじりの曳行(えいこう)やだんじり囃子が注目されますが、「だんじり」について詳しく知っている方はなかなかいないのではないでしょうか?
本記事では、だんじり祭りをより楽しめるように、「だんじり」そのものにスポットをあててお祭りの魅力をお伝えします!
だんじりとは?
だんじり(だんぢり)は唐破風の大屋根・小屋根が二段でコマが四つの山車(だし)のことで、西日本地域特有の呼称です。
さっそく、だんじりの歴史や成り立ち、名物のお祭りについて見ていきましょう。
だんじりの歴史
この記事ではだんじり祭りの代表格である岸和田だんじり祭の歴史をご紹介します。諸説ありますが、岸和田市のだんじり祭情報ページには以下のように記載されています。
約300年の歴史と伝統を誇る「岸和田だんじり祭」は、元禄16年(1703年)、時の岸和田藩主岡部長泰(おかべながやす)公が、京都伏見稲荷を城内三の丸に勧請し、米や麦、豆、あわやひえなどの5つの穀物がたくさん取れるように(五穀豊穣)祈願し、行った稲荷祭がその始まりと伝えられています。
当初の祭礼は、「にわか」や狂言などの芸事を演じ、その後に三の丸神社、岸城神社へ参拝したようである。引用:岸和田市
「岸和田だんじり祭」で使われるだんじりは、「下地車(しもだんじり)」または「岸和田型」と呼ばれます。かつて岸和田城の城門を潜れなかっただんじりを改良したものであり、現在岸和田だんじり祭で使われているだんじりのルーツです。
だんじりが他の祭りの山車にはないスピードで曳行するようになったのは戦後からです。道路の舗装が行われたことや、鉄製の軸が使われるようになったことにより、高速での移動が可能になりました。
だんじりを運営しているのは?
だんじりを所有しているのはほとんどの場合「町会」ですが、祭りの運営は各町の祭礼団体によって行われています。
だんじりの曳行には、各祭礼団体の連携が欠かせません。だんじりは、「曳き手」「鳴り物」「大工方」「前梃子」「後梃子」、合わせて500〜1,000人ほどで曳行します。重さ4tにもなるだんじりをスムーズに動かすために人々が一丸となる姿は、だんじり祭りの見所のひとつです。
多くの場合、町会には幼い頃から参加し、小学生は子供会、中学生は少年団、高校生は青年団、と進んでいきます。青年団になると「曳き手」として本格的にだんじり祭りに参加しますが、子供会や少年団も「灯入れ曳行」ではだんじりを曳きます。子どもの頃からだんじりに関わることで、地域の連帯感を高め、伝統が受け継がれているのです。
だんじりを見るなら「岸和田だんじり祭」!
「岸和田だんじり祭」は、1703年に始まった歴史ある有名なお祭りです。岸和田市民20万人に対し、およそ3倍の見物客が集まります。
【動画ニュース】重さ4トンのだんじりが豪快に駆けめぐる「岸和田だんじり祭」が、大阪 岸和田市で始まりました。https://t.co/WDPCEOAGSH#nhk_news #岸和田だんじり祭 #だんじり #岸和田 pic.twitter.com/bhB2hGdTwp
— NHKニュース (@nhk_news) September 15, 2018
だんじりを見たいなら、岸和田だんじりは外せません。盛大なお祭りは一見の価値アリですよ!
だんじりの魅力って?
京都の祇園祭や飛騨高山祭など、山車や屋台が祭礼行事の主役になるのは珍しいことではありません。しかし、「だんじり」は他の祭りにはない特徴があります。ここでは「岸和田だんじり」を例に、だんじりの魅力に迫ります。
高速で角を曲がる「やりまわし」
だんじり祭りの最大の魅力が「やりまわし」です。
やりまわしとは曳行コースを曲がることですが、スピードを緩めることなく勢いよく曲がるのが特徴です。特に岸和田だんじり祭はスピードを追求する傾向にあり、大迫力のやりまわしが披露されます。やりまわしの直前にはスピードが若干緩まりますが、それでも全力疾走ですからかなりのスピードです!
歴史的な出来事をモチーフにした「彫り物」
だんじりの魅力は大迫力のやりまわしだけではありません。だんじりに施された「彫り物」は、芸術品とも言える美しさです。
だんじりの彫り物は、歌舞伎・人形浄瑠璃・講談などでもとり上げられているような、歴史的な出来事や物語がモチーフになっています。特に「太閤記」「難波戦記」などが人気の高い彫り物です。彫り物は細かい部分まで精巧に彫られており、欅の木目などもうまく利用されています。
これは岸和田市近隣で興った有名な宮彫師一門の影響が大きいとされています。だんじりの彫り物の技術は、今でも岸和田の彫師や大工に継承されています。
祭りを盛り上げる賑やかな「お囃子」
だんじり囃子とは、だんじりの上で篠笛・小太鼓・鉦(かね)・大太鼓で囃す音楽のことで、だんじり祭りの魅力のひとつです。
岸和田では、お囃子を奏でる人を鳴り物(なりもん)と呼びます。
鳴り物の奏でるリズムは、だんじりの動きに合わせて変わります。だんじりが猛スピードで走る時のリズムは「きざみ」、やりまわしで足並みを揃えるときの少しスピードを抑えたリズムは「半刻み」など、曳き方によってリズムが変わります。行く前に覚えられたら楽しいですね!
風情を感じる夜間の「灯入れ曳行」
夜になると、200個以上の提灯を飾り付けただんじりが子ども達に曳かれます。
昼の激しいだんじりとは異なり、灯入れ曳行は優美さと静寂が魅力です。だんじり囃子も子ども達によって行われます。
昼間はなかなか近づくことができないだんじりですが、灯入れ曳行では、比較的近くで見ることも可能です。ただし、岸和田だんじり祭はあくまでも地域住民のためのお祭りです。曳行の邪魔になるようなことは避けましょう。
岸和田だんじり祭の概要
300年の歴史をもつ大阪南部・泉州の「岸和田だんじり祭」は、日本最大級のだんじり祭りとして有名です。
岸和田だんじり祭は、秋を迎え入れるお祭りとして9月と10月に開催され、例年50万人以上がこのお祭り目当てに集まります。では、今年9月の開催概要をご紹介します。
2019年岸和田だんじり祭の開催日時
9月祭礼曳行日程
試験曳き 9月8日(日)午後2時~午後4時
9月13日(金)午後2時~午後4時
宵宮 9月14日(土)午前6時~午後10時
本宮 9月15日(日)午前9時~午後10時
※10月にも祭礼が行われますが、ここでは割愛いたします。詳しくは公式サイトをご参照ください。
岸和田だんじり祭のおすすめ観覧スポットとアクセス
おすすめ観覧スポットを2つご紹介します!
まず、数あるだんじり観覧スポットで最も有名かつベストスポットとされているのが、「カンカン場」と呼ばれる府道臨海線岸和田港交差点。豪快なやりまわしを観るのにおすすめです。付近にはショッピングモールもあり、休憩するのにも非常に便利なスポットです。
時間帯によってオススメのスポットは「南海本線岸和田駅前」です。ここでは商店街のアーケードを駆け抜けてきただんじりがやりまわしを行い、その迫力ある様子を正面から見物することができます。ただ、時間帯によってはほとんどだんじりが来ないので、例年13:00〜15:00に行われるパレードに合わせてスケジュールを組む必要があります。
・開催場所
大阪府岸和田市岸和田地区・春木地区
南海本線岸和田駅からすぐ(駅前通り)
・最寄駅
南海本線「岸和田」駅前(岸和田地区)
南海本線「春木」駅前(春木地区)
■公式サイト
https://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/danjiri/
観覧時の注意点
岸和田だんじり祭には数十万人の人が集まり大変混雑します。だんじり祭りは豪快なやりまわしが見ものですが、警察官や地元の方々の指示に従わないと大きな事故につながる恐れがあるので注意しましょう。
また、岸和田だんじり祭は地元民のためのお祭りだということを忘れてはいけません。地域住民の迷惑になるようなことは避けましょうね。
だんじりの基本を知った上で、だんじり見物に出かけよう!
だんじりについてご紹介しましたが、ここでは説明しきれない魅力が他にも沢山あります。「もっとだんじりについて深く知りたい!」という方は、百聞は一見に如かず。ぜひ、今年の岸和田だんじり祭に出かけてみてください!
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