岩手県奥州市「歴史公園えさし藤原の郷」では、鹿踊(ししおどり)の定期公演が行われている。地域ごとに行われている鹿踊を外部の人が見に行くのは勇気がいるし、コロナ禍で中止しているところも多い。そのような中で、鹿踊が毎週見られるというのはとても貴重である。
この定期公演、2021年8月1日から10月31日までの毎週日曜日、11時と14時からの2回実施している。私は今回、8月15日11時から行われた「奥山行山流 増沢鹿踊」を拝見した。行山流は奥州市周辺に伝わる鹿踊の中でも特に、古くからある流派だ。それでは、増沢鹿踊の演舞の様子をまず振り返ってみよう!
えさし藤原の郷で、鹿踊をみる!
当日は、曇り空でちょうど良い天候に恵まれた。歴史公園えさし藤原の郷(以下 えさし藤原の郷)には、車でのアクセスが便利で、大きな駐車場がある。東北本線の水沢駅からは、江刺バスセンターバス停行きのバスに乗り、終点のバスセンターから徒歩で20分ほどで行ける。えさし藤原の郷は歴史公園となっており、まずは入場料を払い中に入る。
鹿踊の演舞は入場してすぐ左手に見えてくるステージで行われた。コロナ対策ということもあり、広場ではなくステージ公演となってしまったが、観客も十分距離を取りながら、徐々に集まり始めた。「これから増沢鹿踊の演舞を始めます」のアナウンスとともに15分の演舞がスタートだ!
今回の演舞では、最も基本とされる「礼庭」という演目が披露された。最初の印象としては動きはゆったりだが、太鼓の音が良く響く!遠くからでもこの太鼓の音で、「鹿踊をやっているぞ」とわかるだろう。
そして、背から伸びる白い2本のササラはとても長く、大きくて迫力がある。子供の演者もいるのだが、衣装の総重量はなんと15kgもあるそうで、実際に着てみると大人でも重く感じるだろう。
左右に体を倒すこの動作がとても見応えがある!足と手を使う細かな動作も多い中、このような動きがあると、とても目立つのだ。ササラがとても長いので、お互いにぶつかりそうだし、操作するのも難しいだろう。
このように2匹のシシ同士が向かい合い、呼応するように踊る場面もあった。
ギュギュッと中央に集まるときも、なかなか迫力がある!
最後はササラを床につけるように、お辞儀をして終了!15分、重い衣装を抱えながら歌って、踊って、叩いて、本当にお疲れ様でしたと声をかけたくなった。とても迫力ある演舞に、私含め子供から大人まで皆見入っていた。
増沢鹿踊はどのように始まったの?
それでは、今回演舞を見せていただいた増沢鹿踊の起源についても触れておきたい。文政10(1827)年、奥州市内の伊手村地ノ神という場所より伝授されて以来、今まで200年近くに渡って継承されてきているようだ。運営主体は増沢郷土芸能保存会の鹿踊部である。活動の舞台は3年に一度、4月に行われる新山神社の例大祭と、様々な周辺の民俗芸能が勢ぞろいする江刺甚句まつりや夏祭りなどがメインとなっている。それ以外だと、今回のようにえさし藤原の郷で定期公演を開催する場合もあるようだ。
鹿踊の始まりとは?
そもそも鹿踊とは?ということについても触れておきたい。鹿踊なので、鹿と深い関わりがあるというのは想像がつく。鹿の遊び戯れる様子を真似たとか、鹿を救うために身を犠牲にした人を供養したとか、猟師の犠牲になった鹿を供養したとか、様々な言い伝えが各地にあるようだ。自然を敬う気持ちや、五穀豊穣、悪霊退散、村の繁栄などの祈りが込められた踊りである。起源は様々な説があるが、元をたどれば古代まで遡れるだろう。
今後の定期公演の日程
今までとこれからの公演日程について、ここでまとめておきたい。日程や出演団体の変更の可能性もあるので、もし訪れる場合は事前にえさし藤原の郷のホームページを確認するか、電話で問い合わせしておくのが安心だろう。
※緊急事態宣言の発令により、8月22日以降の公演が中止となりました(8月20日現在)。
8月1日 奥山行山流 地ノ神鹿踊
8月8日 金津流鶴羽衣鹿踊
8月15日 奥山行山流増沢鹿踊
<緊急事態宣言の発令により以降の公演は中止。再開日程はホームページでご確認ください>
8月22日 金津流軽石獅子躍
8月29日 奥山行上流餅田鹿踊
9月5日 金津流石関獅子躍
9月12日 行山流角懸鹿躍
9月26日 奥山行山流鴨沢鹿踊
10月3日 金津流岩高鹿踊
10月10日 金津流野手崎獅子躍
10月17日 金津流梁川獅子躍
10月24日 奥山行上流餅田鹿踊
10月31日 金津流伊手獅子躍
えさし藤原の郷はまだまだ見所たくさん!
今回、鹿踊の公演が行われたえさし藤原の郷は、他にも見所がたくさんあるのでご紹介しておきたい。この歴史公園は元々、平成5(1993)年に奥州藤原氏の興亡を題材にした大河ドラマ「炎立つ」の撮影を機に整備された平安時代の歴史テーマパークだ。
見えてくるのは、まるで平安時代にタイムスリップしたかのような寝殿造などの建物の数々!日本全国でもなかなかこのような建築物は再現されていないらしい。数多くのNHK大河ドラマなどのロケ地になっているようだ。
義経や弁慶の一行が、安宅の関を通過する場面など、各所で当時の様子が人形により再現されていた。
また、歴史公園の駐車場隣にある「レストラン清衡」では、郷土料理をはじめ豊富なランチメニューが揃っていた。私は江刺名物の「卵めん」をいただいたが、食感はそうめんのようでさらっと食べられて具沢山で、とても美味しかった。
このように、鹿踊の定期公演と合わせて、歴史公園を回ったり、ランチを食べたりして、休日を満喫するのも良いだろう。
<歴史公園えさし藤原の郷の基本情報>
●住所
岩手県奥州市江刺岩谷堂小名丸86-1
●アクセス方法
水沢江刺駅から車で約15分, 水沢江刺駅または水沢駅から江刺バスセンターまでバスで行き、そこから徒歩約20分
●開館時間
9:00~17:00(基本的には年中無休)
※冬期間11月1日~2月末日までは16:00閉園
●入場料
個人大人800円 高校生500円 小・中学生300円ほかホームページ参照。
<参考文献>
自律的まちづくりモデル創出支援事業委員会『百鹿繚乱 えさし鹿踊図鑑』(2013年)