2023年7月31日、8月1日に「名舟大祭」が開催されます。
能登半島北部に位置する石川県輪島市名舟町で行われるこのお祭りの目玉は、小学生から大人まで、名舟の男たちが魅せる御陣乗太鼓の奉納打ちです。
この記事では、名舟の人たちだけでなく、近隣の御陣乗太鼓ファンが久しぶりに集結した2022年の現地レポートとともに、2023年の開催情報をお届けします。
目次
7/31日 一日目 力いっぱい、元気いっぱい! 小学生による御陣乗太鼓披露
奥津比咩神社の大祭である名舟大祭。1日目となる7月31日のお祭りは、夜の帳が下りきった夜21時からスタートします。会場は、奥津比咩神社の遥拝所にあたる白山神社。道路沿いの広場には舞台が設置され、御陣乗太鼓をはじめとした様々な催し物が行われます。例年は、地区ごとのキリコが登場。急な参道を大きなキリコを担いで移動するため、大変盛り上がるのだそうですが、今年は1台だけ出るはずだったキリコの渡御も中止となってしまいました。
御陣乗太鼓を待つ人たちを盛り上げるのは、和倉温泉で披露されている三味線や唄です。津軽じょんがら節を始めとする民謡と激しい三味線の音が、会場を盛り上げます。まさに笑顔いっぱいの会場!その一方で、次に太鼓をする小中学生たちが、出番が近づくにつれて舞台袖でソワソワ。
観客たちはござを敷いて座ったり、道路沿いの堤防壁に腰掛けたり。思い思いのスタイルで舞台を眺めます。
名舟大祭、最初の御陣乗太鼓は小中学生たちによるお披露目です。本物を模した子ども用の面をつけた演者たちは、堂々と舞台で力強く太鼓を叩きます。観客席からは「かっこいい!」といったかけ声も。“地元のお祭り”感あふれる温かな雰囲気で、子どもたちの御陣乗太鼓を盛り上げていました。
最後は揃って「ありがとうございました!」と元気に挨拶。子どもたちの奮闘を称える拍手が、会場内を包みました。
大人に負けない迫力。高校生による御陣乗太鼓
続いて行われたのは、高校生による御陣乗太鼓です。それまでの温かな雰囲気から一転、若々しいパワーに満ちあふれています。その激しい勢いは、バチが飛んでしまうのではないかと思うほど。観客のまなざしも、より真剣に。次世代の名舟を担う若者たちの、一挙手一投足を見守ります。
花火が打ち上がる中、浜辺での神事
その後、花火が絶え間なく打ち上がる中、浜辺では舳倉島より神霊をお迎えする御神輿渡御が行われました。多くの人が浜辺に移動し、その神事を見守ります。
波の音や花火の音と共に流れてくるのは、穏やかな笛と太鼓の音。満天の星空の下、浜辺に置かれた御神輿の周囲から、厳粛な空気と共に神秘的な雰囲気が漂います。賑やかな時間の最中ではありましたが、神様に捧げるため、お祭りという場や御陣乗太鼓があるのだ、という基本的なことを思い起こさせてくれる瞬間でした。
再び舞台がお祭りの中心に! かがり火に照らされた御陣乗太鼓の奉納打ち
お祭りの中心は、再び舞台の上へ。両サイドに設置されたかがり火がともされ、闇夜に浮かび上がる炎と煙が幻想的な雰囲気を生み出します。御陣乗太鼓の原点である神様への感謝を表すための奉納。観客も舞台を一心に見つめ、場の空気が引き締まりました。
奉納打ちを行うのは、御陣乗太鼓保存会のメンバーです。普段行っているキリコ会館やホテルなどでの公演をお休みして、2日間のお祭りに挑みます。
それまでの小中学生や高校生のものとは、段違いの迫力。神様へ届けんとする気合いが、音の粒ひとつひとつにまで纏われているかのようです。面に憑依されたかのような、ひとりひとりの動きに、観客もじっと目を見張ります。
最初は1人から始まり、人が入れ替わり立ち替わり重ねられるリズムは「序破急」と表現されるように、後半になるほど勢いが増します。ハイテンポなリズムと音の積み重ねが、初めて見る者を圧倒するのです。戦国武士たちを無血で逃亡させた太鼓は、時代を超えた今もその迫力を失っていません。
音だけではありません。面に憑依されたかのように声を張り上げ、演者のうねるような腕の動きや空に舞う面の髪からも凄まじさを印象づけます。もはや、そこにいるのは、人ではないかのような錯覚まで起こさせるのです。
すべての力を太鼓に注ぎ込んだ。そんな奉納打ちが終わった瞬間、会場からは溢れんばかりの拍手が沸き起こります。世代を超えて受け継いできた保存会だからこその、圧倒的迫力を見せてくれた奉納打ちでした。
奉納打ち終了後、御陣乗太鼓保存会事務局長の北岡周治さんは「良い奉納ができた。御陣乗太鼓の神髄を子どもたちも理解している。久しぶりに気持ちが高ぶった」と、この日の太鼓を振り返ります。
若い人に対しても「このまましっかり御陣乗太鼓の神髄を忘れず、意気地をしっかり守ってもらいたい」と話していました。
8/1 二日目 本祭でも御陣乗太鼓が登場!
二日目は日差しが強い14時頃から始まりました。祝詞を捧げたあと、子どもたちの御陣乗太鼓を先導に、御神輿を海までお見送り。明るい日差しの中、元気いっぱいの太鼓の音が響き渡ります。
昨夜のような観客の姿はなく、名舟の人たちだけ。地域のためのお祭りという本来の姿を垣間見せました。
再び浜辺で神霊をお見送りする神事を行った後、今度は燦々と照りつける太陽の下で、御陣乗太鼓保存会による奉納打ちが行われました。
伝承にある、上杉謙信軍を追い払ったその姿を彷彿とさせる前夜とは打って変わり、鬼気迫る面の表情をクリアに目にすることができます。澄み渡った青空の下で鳴り響くのは、パワーを感じる太鼓の音色。恐ろしさよりも、面や動き、そして音の粒の美しさが際立つ舞台でした。
その後、再び子どもたちの御陣乗太鼓に先導された御神輿は、坂の上にある拝殿へ上っていき、最後の神事を行いました。名舟の日常、そしてお祭りに欠かせない御陣乗太鼓の存在感を感じさせる2日間でした。
2023年の開催情報!
【開催期間】
2022年7月31日(日)、8月1日(月)
【開催時間】
7月31日 宵祭り 21時00分〜 翌0時30分頃
21:00 各キリコが祭礼の世話をする当屋を出発。
21:30 各キリコが白山神社に参集。宵祭りの祭典開始。
22:00 神輿とキリコが神社を出発。
22:30 海中に立つ鳥居まで舟で神輿を乗せて行き、御神霊をお迎えする海上神事執行。神輿が陸に上がり安置されると、御陣乗太鼓の奉納打ち。
23:00 神輿渡御とキリコが巡業。
24:00 神輿が御仮屋に入場。その前をキリコが乱舞。キリコが整列すると、御仮屋で祭典執行。
0:00 祭典が終了して各キリコは帰路に着く。キリコがそれぞれの当屋に到着して宵祭り終了。神輿は、1日の14時まで御仮屋で奉安。
8月1日 本祭り 14:00 〜 15:30頃
14:00 御仮屋で本祭り。山車に乗った御陣乗太鼓の先導で神輿が出発。
14:40 白山神社の広場に到着。再び海中に立つ鳥居まで舟に神輿を乗せて行き、御神霊をお送りする海上神事執行。
15:00 白山神社下のステージでは、御陣乗太鼓の奉納打ち。
15:30 神輿が白山神社に到着して拝殿に入場。神輿を奉安し、還幸祭が執り行われて例大祭は終了。
※スケジュールはあくまで参考です。
【開催場所】
輪島市名舟町(石川県輪島市名舟町)
【交通アクセス】
(車)
・金沢から約2時間20分(のと里山海道「のと里山空港IC」下車→国道249号線)
・のと里山空港ICから約35分
(公共)
・金沢から輪島特急バスで約2時間30分「輪島駅前」下車→路線バス乗り換え「輪島駅前」から町野線約20分「名舟」下車
【駐車場】
名舟漁港