Cheer Up!花火プロジェクトが全国開催された同じ日、2020年6月1日に秋田県大仙市で一つのプロジェクトが発表されました。
夏には有名な全国花火競技大会が行われる大曲から日本の花火「エール」プロジェクトと言う名称でのクラウドファンディングです。
目標金額は11,873,000円(イイ花火)だそうです。
その話をオマツリジャパンの本社でも聞きつけ、是非とも応援したいとの事。正直な所、オマツリジャパンはお祭りを応援するのがメインで花火に関しては、人員不足などであまり手が回らない状況でした。元々、記事にしようと主催者側から記者発表資料などを頂いていたので、挨拶も兼ねてお話を伺いたいと言うオマツリジャパンと大曲の花火を引き合わせる事になりました。
とは言っても流石にこのご時世なので秋田に飛ぶ訳に行かず、オンラインミーティングツールを使ってパソコンでの御挨拶&取材を行いました。今回はそんな対談の様子のレポートです!
対談メンバー
小松煙火工業 代表取締役 小松忠信 様
NPO法人大曲花火倶楽部 事務局 最上谷友宏 様
オマツリジャパン 共同代表取締役 山本陽平
オマツリジャパン 花火専門ライター 蛭田(私)
※一応、今回の肩書ですが実際は色々な兼務をしています。(敬称略)
山本(オマツリジャパン):初めまして。オマツリジャパン共同代表の山本です。
弊社では日本で一番大きなお祭りのWEBメディアを運営しており、今回のプロジェクトをお聞きして少しでも金額が集まる様に応援したいと思い、この様な機会を用意して貰いました。宜しくお願い致します。
まず、最初のこのプロジェクトを始められた切っ掛けをお聞きしたいです。
最上谷(大曲花火倶楽部):やはり花火業界の現状を見ていると花火大会が全国で中止になり花火業界が大変な状態になっているのを、多くの人が感じ取っていた事から始まっています。
今回のプロジェクトを運営する「大曲花火倶楽部」自体が花火が好きな有志で集まっている団体なのでそれぞれが何かを行いたいと思っていました。
そのメンバーで話し合ったのが形になっていきました。
山本(オマツリジャパン):ありがとうございます。では、改めてこのプロジェクトの概要を教えて頂けますか?
最上谷(大曲花火倶楽部): 「Cheer Up!花火プロジェクト」もそうですが、各地で小規模ながら花火を打ち上げて国民の皆さんを元気付けようと花火師さんが頑張っています。しかし、私たちはこれまで花火によって、癒されたり元気付けられたりしてしており、花火業界がピンチな今こそ今度は逆に花火師さんを元気付けようと考えました。
そこで花火師さんを元気付ける為にはどうしたらいいかと考えるとやはり花火代金を捻出して花火師さんに花火を打ち上げて貰うのが一番だと言う考えに辿り着きました。
花火と言うものは危険物なので保管する量を法律で決められており、どんなに新しい花火を作ろうと思っても現状では叶いません。
まずは今まで作ってきた倉庫に眠っている花火を少しでも打ち上げようと言うのが、このプロジェクトの狙いでもあります。
山本(オマツリジャパン):コロナウイルスで困っている人に向けてではなく、花火師さんへの支援なんですね。
最上谷(大曲花火倶楽部):その通りです。花火を打ち上げてくれれば結果的に皆さんも楽しめると思います。
山本(オマツリジャパン):このプロジェクトを通じて世の中に伝えていきたい事はありますか?
最上谷(大曲花火倶楽部):今ここで花火の打ち上げだったり、製造だったりが止まってしまうとこれまで築き上げてきた花火文化が途絶えてしまいます。
この花火の技術を後世まで残すには、製造して打ち上げる機会を花火師さんに作る事が大事だと思っています。
小松(花火師):補足と言うか、今年は残念ながら「花火の見られない夏」になってしまいます。
これは花火師だけでなく、それぞれの町で花火大会を誇りに思っている地域へ何とか少しでも花火を届けられないかと考えたプロジェクトなのです。
花火師と言う仕事は一年掛けて作って得た収入を来年の材料費や人件費を賄う為に使い、何とか次につなげてきた職業です。
今年それが途絶えてしまうと業界全体が経営の危機に瀕してしまいます。
今回、なぜ大曲がこの様なプロジェクトを立ち上げる必要があったかと言うと、実は大曲の花火は地元に特別に凄い花火師がいたから有名になった訳ではなく、全国各地にいる花火業者が腕を磨いて大曲に集まって競技大会を行ってくれたからこそ、ここまで有名になれたのです。
そんな全国各地にいる大曲を支えてくれた花火業者をこのまま見過ごして良い訳がありません。
そこでかなり過去まで遡って大曲の花火に貢献していただいたり、花火競技大会に出場した事のある29都道府県81業者を選びました。
今回のクラウドファンディングで集まったお金はその81業者の為に使われます。
受給資格としては次の3つのどれかに使って貰う必要があります。
・自社の運営資金に使う
・花火を地元で打ち上げる
・打ち上げ場所がなければ大曲に花火を送る
とは言っても1,000万円集まった所で、81業者もいるので少額ではあります。
国へ働きかけなどもしてはいますが、やりたくても今、自分たちができる限界点がここなのです。
蛭田(ライター):なるほど。今回のプロジェクトは、大曲が自分の花火大会の為に使うと思っている人も結構いそうですね。
小松(花火師):正直な話、大曲は秋田県からも花火の街としても認知されているのである程度の予算が設けられており、他の花火業者よりはかなりマシな状況にあります。クラウドファンディングはあくまでも花火業界全体を考えての事になるので、自社の利益につながる話ではありません。
山本(オマツリジャパン):ありがとうございます。それでは花火業界に於ける今後の課題があればお聞かせいただけますか?
小松(花火師):現状では花火業者が自分達の営業力などで何とかできる話ではありません。
花火大会における一番必要な人を集めないと言う点が緩和されない限り、つまりコロナウイルスが終息しない限り動きようがありません。
今やれる事をやるだけです。ガッカリしていても仕方ないのです。
山本(オマツリジャパン):最後にこの記事を読んでくれている人に向けて、何か伝えたい事とかはありますか?
小松(花火師):私が住んでいる秋田県大仙市と言う地域は花火を打ち上げる事に寛容な地域です。
この間、我々も全国で一斉に打ち上げた「Cheer Up!花火プロジェクト」に参加し、花火を打ち上げましたが苦情らしきものは全くありませんでした。
しかし、必ずしも他の地域で同じ状況になるとは思えません。今回の「Cheer Up!花火プロジェクト」が切っ掛けで、おそらく花火を打ち上げて欲しいと言う人も出てくるかと思います。もし偶然、歩いていて花火が打ち上がっているのを見たら、苦情めいたものを投げつけるのではなく、あたたかい目で見守って欲しいものです(笑)
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