富山県氷見市といえば、全国有数の獅子舞が盛んな土地である。この地にある獅子舞にどっぷり浸れる「ひみ獅子舞ミュージアム」という場所を紹介したい。家族連れから専門家の方まで幅広い人が獅子舞に親しめる場所だ。
獅子舞のミュージアムといえば、全国を見渡すと石川県白山市にある獅子ワールド館や、埼玉県白岡市の獅子博物館などもある。その中で、ひみ獅子舞ミュージアムならではの面白さとは何か?にも迫っていきたい。
ひみ獅子舞ミュージアムに行ってきた!
このミュージアムは氷見線「氷見駅」から車で約10分の場所にある。屋根が平たく大きな建物が目印で、窓ガラスには「ひみ獅子舞ミュージアム」の文字が貼られている。それでは早速中に入ってみよう!入場無料で入れるようだ。
中に入るとまず、どどーんと大きな獅子舞の模型が登場!
寄付された手作り獅子頭と、大きな蚊帳にそれを持ち演舞する人形たち。手作り感が素晴らしい。それに対峙するのが、烏帽子を被った人形である。
手作りといえば、小島ダンボールさんが制作された手作り獅子の数々も!
ダンボールで作られた獅子頭を見ていると、なぜか愛着が湧いてくる。このようにミュージアムの入り口付近には、氷見市の獅子舞を再現するような手作り模型の数々が展示されている。
そこから奥の方に通路を入っていくと、天狗面が並べられている。
少し照明が暗くなっているので、下から照らされた天狗面が神秘的に見えてくる。天狗面が被っている烏帽子は、その模様が1つ1つ違っているので、ぜひ注目していただきたい。例えば、江戸時代に富山県を統治していた加賀藩の梅鉢紋が付いているものもある。
その奥には、大きなシアターが!なんと250人ほど収容できる大規模なスペースが広がっており、後方には座席もある。
ここでは、スタッフに声をかければ氷見市の獅子舞に関する映像が見られるほか、年数回開催される各地区青年団や獅子舞保存会による「獅子舞実演会」では、協力金を払えば獅子舞の実演を見ることもできるという。今回は大迫力の映像を見させていただいたのだが、近くにいた子供も踊りながらはしゃいでそれを眺めていた。
スクリーンの横にある太鼓台について、スタッフの方から興味深いお話を聞いた。太鼓台には鳥居が取り付けられており、太鼓の上には神様がいるという意識があるらしい。つまり、太鼓台を移動させることは、神社が移動していくような感覚なのだ。鳥居を頂いた太鼓はまるで、神社にある鏡のようにも思えてくる。
それから、その横にある獅子頭の展示。数々の獅子頭が並べられているが、この中に1つだけ雄の獅子がいるという。「さて、どれでしょう?」と質問していたただいたが、なかなか答えるのが難しかった。
「正解は…耳の形と歯の本数で見分けるんです!」とのこと。
耳の形が寝ているのが雌獅子で、反り返っているのが雄獅子のようである。また、歯の本数が多いのが雄獅子で、少ないのが雌獅子とのこと。上の写真の左側の獅子は、耳が反り返っていて、上の歯の本数が八重歯までで数えて合計10本あったので、雄獅子である。
それに対して、展示してある多くの獅子頭の耳は寝ており、上の歯は八重歯までで数えて合計8本だ!なるほど、新しい豆知識を教えていただいた。スタッフの方によれば、これも実は来場者から教わったことらしく、来場者とスタッフとの会話の中で、情報交換が活発に行われているようだ。
こちらは獅子舞の実演をしてくれた団体が納めていった祝儀を書き記した目録のイラストだ。このようなものがたくさん壁に飾られていた。えびす様のほのぼのとした表情がとても素晴らしい。筆の柔らかいタッチと、鮮やかな色遣いがとても賑やかな雰囲気だ。有名人が色紙に記したサインを眺めているような感覚で、じっくりと眺めた。
ひみ獅子舞ミュージアムの魅力とは?
さて、展示を一通り見て回ったところで、このミュージアム開設の背景について触れておきたい。元々は平成14年(2002年)に作られた建物で、氷見市全体を博物館にしようという構想があり、地域の人々が集える場が市内全域で整備された中の1つだった。氷見市は獅子舞が盛んな土地なので、「獅子舞のふるさと」という意識も強かったようだ。
また、獅子舞を展示してあるところは日本全国見渡せば大小様々あるけれど、250人が収容できて獅子舞の実演ができるようなミュージアムは珍しい。地域にとって重要な獅子舞文化の魅力を再確認できるとともに、臨場感を感じながら獅子舞に触れられる場でもあるというわけだ。
氷見市は全国屈指の獅子舞数!その背景とは?
それでは、なぜこの地で獅子舞が盛んになったのだろうか?
スタッフの方にいくつか興味深いお話を伺うことができた。まずは氷見市には神社が177社あり、とても数が多いのが獅子舞の数の多さとの関係しているかもしれないという。お宮1つに1つの獅子舞という意識があり、小さな祠であっても1社と数え、獅子舞を伝承しているところもあるらしい。そう言う意味では、信仰心の厚い土地柄なのかもしれない。
1つの町内に4つの神社があり4つの獅子舞がある場合もあるという。また戸数が約30しかないにもかかわらず、獅子舞の道具を揃えるのに730万円かかり、一戸あたり換算で20万円以上の出費が必要だった町もあるらしい。そう考えると、祭り魂があるだけでなく、経済的に裕福でないと成り立たない発想でもあるだろう。
また地域によっては、舞い方が同じだと春と秋で分担してお互いの地域を回り合うという場合もあるようだ。氷見市含む呉西地区では結婚をしたら妻は故郷を離れるが、祭りの時には結婚した夫とともに戻ってくるのが習慣にもなっているらしい。そういう神社や行政的な境界を超えて繋がりを生む交流関係の中から、祭りの盛り上がりが生まれていったのかもしれない。
獅子舞にどっぷり浸れる博物館
現地を訪れたことで、富山県氷見市は獅子舞が盛んであり、ひみ獅子舞ミュージアムはその祭り魂を再確認できるような場所にも思えてきた。250人が収容できるシアターで無料で動画が見られるなどの体験が充実しているほか、スタッフと来場者との交流も活発である。知らないことがあれば、どんどん話が聞けるような環境がある。こういう場があるからこそ、獅子舞やお祭りに関心がある人が増えていくのだろう。ぜひ、興味を持った方は現地を訪れていただきたい。
■ひみ獅子舞ミュージアム
開館時間:午前9時00分~午後5時00分
休館日: 毎週月曜日(ただし祝日の場合は、その日以後の最初の平日)、 年末年始(12月29日から1月3日)
入場料:無料
※ご注意:年間数回開催される各地区青年団や獅子舞保存会出演による「獅子舞実演会」の観覧には、別途協力金が必要です。