世界中には、泥を塗り合ったり、トマトやオレンジをぶつけたり、水を掛け合ったり、とにかくぐちゃぐちゃになるお祭りがいくつもあります。その代表格とも言えるのが、インド「ホーリー祭」。
お互い色粉を塗りあったり、色水を掛け合ったりする、楽しい、しかしデンジャラスなお祭り。「行ってみたいな」「でもやっぱり怖いな」と思われている方も多いと思います。
そんな「ホーリー祭り」の由来、楽しみ方、そして注意点をまとめました。
1.ホーリー祭の由来
ヒンズー暦第11月の満月の日に行われるこのお祭り。2019年は3月20日から21日に当たります。
もともとは春の訪れを祝い、五穀豊穣を願うものですが、その起源には諸説あります。
①クリシュナが恋人ラーダの肌をうらやんだ説
クリシュナとは、ヒンドゥー教の神様。大変イケメンで強く、青色の肌で描かれることが多い神様です。恋人のラーダは色白で美人。
彼女の肌をうらやましく思ったクリシュナが母に相談したところ、母はクリシュナをなだめるために「ラーダの顔を好きな色に塗ってしまえばいいのに」とアドバイスしました。
それを真に受けたいたずら好きのクリシュナは本当にラーダの顔を塗ってしまいました。
このエピソードが長年に渡って伝えられ、愛着のある人や通りすがりの他人とよごし合う風習につながった、というのです。
②カシミール地方の悪魔よけ説
もう一つは、これはカシミール地方の悪魔を追い払う習慣に由来します。
カシミール地方では、人の家に押し入ってくる悪魔を追い払うために泥や汚物を投げつけるといわれています。
それが転じて、ホーリー祭でも悪魔を追い払うために色粉や色水を掛け合うようになったともされています。
ちなみにホーリー祭の「ホーリー」という言葉は、インド神話に登場するホリカという人物に由来しています。
ホリカは当時の王様の妹であり、焼け死ぬことのない魔女だとされていました。
王様は自分のことを神様と思い込んでいたのですが、その息子はヴィシュヌ神に傾倒し、熱心に崇拝していました。
息子を妬んだ王様は、殺害計画を立てました。そこで、王様は魔女であるホリカと自分の息子を火の中に誘惑し、息子だけ殺害しようと計画を立てました。
しかし、その計画は失敗。息子はやけど一つしませんでしたが、ホリカは焼け死んでしまったのです。
息子はホリカの死を悔やみ、その年の収穫物を燃やして出た灰をホリカの死体に振りかけたといわれています。
その伝説が、体に色の粉をかける、という現在のホーリー祭の風習に繋がったのです。
2.ホーリー祭の楽しみ方
近年カラーパウダーを用いたランニングイベントや野外フェスが開催されていますが、それらの元になったと言われるイベントでもあります。
なぜここまでホーリー祭が盛り上がるのか?その理由は「カースト制度」にあります。
日常や就職まで、インド社会を色濃く支配しているカースト制度。
普段不満に思っていても、それを破ることは許されません。しかしこの日だけは無礼講。
しかもヒンドゥー教ではご法度とされている飲酒も解禁。身分も年齢も関係なく、色をぶつけあうのがこのホーリー祭なのです。
二日間あるホーリー祭のうち、初日の祭りは日没からスタート。
男女のグループに別れ、神々や男女の愛情を表す歌を歌ったり、神話にちなんだ焚き火を燃やし、悪霊を焼き幸福を祈願したりします。
有名な泥水や色水の掛け合いが始まるのは二日目。
祭りが始まると、見知らぬ人にまで、顔や身体に色粉を塗りつけたり色水を掛け合ったりと、大騒ぎとなります。
掛け声は「ハッピー・ホーリー!」。ドロドロの状態でハグをしあいます。
祭で用いられるカラーパウダーは、もともと自然由来のものを使っています。
例えば、赤はお肌に良い、顔パックなどに用いられるレッド・サンダルウッドが原料となっています。しかしこれは、寺院などの宗教儀式での場合。
最近は化学物質を使った色粉も多いので、目や口に入ると大変なことに。ホーリー祭に行く限り、ぶつけられる粉を選ぶことはできないので、覚悟が必要です。
3.ホーリー祭の行き方
ご覧のようにインド全土で祝われるホーリー祭。
日本からインドへ行くには
日本では成田国際空港を使い、インドはデリーかムンバイを選ぶことになります。いずれのルートでも行きの飛行時間は約10時間、帰りの飛行時間は約8時間です。
関西国際空港や中部国際空港からなら、韓国やタイやアラブ首長国連邦を経由していく便も設定されています。いずれも時間は長くかかりますが、成田発直行便よりは安く済むというメリットがあります。
さて、これだけたくさんあるホーリー祭開催地。どこに行くか、迷ってしまいますね。
基本色の粉をぶつけあって大騒ぎをする、というのは同じなのですが、それぞれ個性があるので、代表的なものをピックアップしてみました。
デリー
まずは直行便で行けるデリー。こちらは音楽満載のフェスティバル。安い宿が集まるパハールガンジ地区周辺で宿泊するなら、一歩外に出たらもう色まみれになるので要注意。
見どころはHoli Moo Festival 。40以上の音楽団体が4つのステージでパフォーマンス。色粉は会場で販売され、屋台飯も豊富。外国人も地元の人も大騒ぎの一大フェスになります。
ブリンダバン
もっと本格的にホーリーを体験したい方は、ホーリーの激戦区「ブリンダバン(Vrindavan)」へ。
こちらはクリシュナの生誕地とされ、デリーから車でおよそ2時間半のアグラに近い町です。町内にあるバンケ・ビバリ寺院(Banke Bihari Temple)では、インド国内でも最も激しい色の掛け合いが繰り広げられます。
ブリンダバンでは男性が女性をからかい、女性が棒で応酬するという習慣があります。
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クリシュナ生誕地とされる場所にはクリシュナ・ジャナムブーミーミという寺院があります。
また、町の中心寺院ドワルカドヒーシュ寺院、ヴィシュラムガードなどヒンズー教の巡礼者が多く集まる神聖な土地を観光することができます。
朝一で車をチャーターすれば、デリーへ日帰りも可能です。
余裕があれば、クリシュナゆかりの場所を見に行かれてはいかがでしょうか?
プシュカル
デリーから約400キロ、ラジャスターン州プシュカルはヒンドゥー教5大聖地のひとつ。
しかし…、ここのホーリー祭は、宗教感全くゼロの、完全に野外レイブ会場!
全員が色粉まみれになり、街中でEDMが爆音でかかり、地元民も旅行者もただたた踊る!!
もともと雑貨や布が多く売買され、インド一カラフルな街と言われるプシュカルですが、この日はその美しさっていうより、もうドロドロに混ざって、街中がトランス状態で、ああ、もうあられもないことに・・・。
とにかく大騒ぎしたい!クレイジーな祭りに参加したい、という方向けの場所になります。
こちらはデリーからの直行がなく、バスまたは電車でジャイプルまで行き、乗り換えとなります。所要時間6時間ほどです。
バラナシ
ガンジス河のあるヒンドゥー教の一大聖地バラナシは特に規模が大きくて有名。比較的治安もよく、日本人にも人気の観光地。ガンジス川の沐浴でもよく知られています。
しかし、バラナシのホーリーはインドでも最も過激と言われます。聖地であるがゆえに、カースト制が厳しく根付くバラナシでは、無礼講となるこのお祭りの日、日ごろのストレスが一気に爆発するのが理由と言われます。
ここでは、カラーパウダーだけではなく、牛糞やら石やら、いろいろなものが投げられます。遅い時間には暴徒と化す場合もあるので、本当に気を付けてください。「女性は外に出ないように」との張り紙もあるくらいですので、絶対に危険な場所にはいかないようご注意ください。
インド国外
ヒンドゥー教のお祭りですので、インドに限らずネパール、スリランカでも開催されています。
こちらはネパールのカトマンドゥの様子。
シャイなネパール人も陽気に騒ぐお祭りですが、温厚な国民性を反映してか、インドのような過激な様子はありません。色も優しく顔に塗る程度で、女性が外に出ていけないような危険な雰囲気もありません。
4.ホーリー祭の注意点
前述のように、ホーリー祭は楽しいだけのお祭りではありません。それは本当に危険と隣り合わせですので、十分に注意してください。
- 一人で参加しない!圧倒的に事故・犯罪に巻き込まれる危険が高くなります。
- 女性はできるだけ参加しない!(痴漢、セクハラ、性暴力など悲しい事件が実際に起きています。インド人女性は絶対に大騒ぎの時間には参加しないので、もともと男性の祭りだと理解してください)
- スリや犯罪に注意。貴重品は絶対に持ち歩かない。
- 泥酔者に注意。(普段お酒を飲まないヒンドゥー教徒が、年に一度お酒を飲む日です。当然、現地の男性は全員が酔っぱらっていると考えてください)。
- 捨ててもよい服で行く(色がついたら二度と取れません)。
- サングラスやゴーグルで目を守る。
- 危険な時間帯、場所はホテルに避難。遅い時間はもちろん、参加者のテンションが上がった二日目の午後も危険です。
5.日本でも楽しめるホーリー祭
うわー、インド遠いし、危険そうだし。色掛け祭りは行ってみたいけど、やっぱり難しいかな。そう思った皆さんに朗報。
日本にもたくさんインドの方は住んでいます。つまり、彼らの大好きなホーリー祭りも日本で体験できるのです!
それが、東京都江東区西葛西で行われる「色の祭ホーリーの集い西葛西」
2019年は3月21日(木)春分の日
西葛西駅南口徒歩2分の「恐竜公園」
日本に住むインド人のお子さんのダンス発表会があったり、ほんわかした雰囲気ではありますが、色の掛け合いは体験可能。インド料理のブースももちろんあります。
少し雰囲気を味わってみたい、お子さんも連れて行ってみたい、という方は、一度連れてみてはいかがでしょうか。
https://www.facebook.com/Tokyoholimela/
6.SNS映え抜群!世界のホーリー祭インスタチェック
これだけカラフルなホーリー祭。SNSに上げないわけにいかないですね!
凄い人混み。
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さすが、マサラの国!カメラマンも乗せられて踊る!
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この日はどれだけ汚しても、お母さんに怒られません。
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昼間の安全な時間は現地の女性も楽しみます。キャプションには「インドでは最近まで未亡人はホーリーにもほかのお祭りにも参加できませんでした」と。少しずつ女性参画が進んでいるようです。
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田舎のほうに行くと、ホーリーも牧歌的。10代半ばの少年たちがバイクに乗りになり、色粉を撒きながら市内をぐるぐると走り回る感じです。
いかがでしたか。
大人も子どもも、とにかく無礼講で大騒ぎとなる、世界の奇祭ホーリー祭。行ったことのある人は、どれだけぐちゃぐちゃになっても「また行きたい!」となる病みつき祭り。
安全対策はしっかりとって、一生に一回は行ってみてはいかがでしょうか。
トップ画像:Johnny Adolphson / Shutterstock.com