2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
新年を祝う、だるまと饅頭
上州という呼び名の地がある。かつて上野国(こうづけのくに)と呼ばれていた群馬県の別称だ。「上州名物かかあ天下とからっ風」「上州御用鳥めし」「上州牛」など、群馬県の名物には、上州が冠されることが多い。その群馬県の南部に位置し、利根川で埼玉県と面している県境の街、伊勢崎市が今回訪れたお祭り「いせさき初市」の舞台である。
いせさき初市は毎年1月11日に行われ、その名の通り新年を飾るお祭りだ。通りを歩くと、真っ赤なだるまが並ぶ市が立ち、めでたい。
そして、だるまと並ぶお祭りの目玉の一つが「上州焼き饅(まん)祭」。まさに上州が冠されている。この地域の郷土料理に焼き饅頭(まんじゅう)という小麦粉を蒸してつくった饅頭に甘辛い味噌(みそ)だれを付けて食べるものがあるが、それをお祭りの舞台の伊勢崎神社境内で焼き上げる神事がこれである。ここでつくる饅頭の大きさは、なんと直径55センチ。おはらいを終え、社殿から登場した饅頭を見て、境内に詰め寄せた参拝客から歓声が上がる。
社殿の前に和装をした4人の男女が現れた。歳の様はバラバラで、なんでも年男、年女なのだそうだ。この4人が饅頭に朱色の墨で饅頭に文字を入れていく「願い文字の儀」が行われ、いよいよ饅頭を焼き上げる瞬間がやってきた。
焼き台からは絶えずもくもくと煙が上がっている。白装束を着た男たちが饅頭を焼き台へセット。じわじわと焼き上がっていく様子に、固唾をのんで周りから参拝客が見守っている。「行くぞ」と言う男の掛け声と共に、饅頭が裏返される。すると現れたのはこんがりと焼けた表面。すでにおいしそうだ。お次は大きな筆を持った巫女(みこ)さんが登場。一体何をするのか、と思ったら筆を大きな壺(つぼ)に入れていく。出た筆先に付いているのは濃厚な味噌だれ。これを一気に饅頭へ塗っていくのだが躍動感がすごい。
焼き上がった饅頭は、細かく切り分けられ「福分け」として参拝客へ振る舞われる。縁起物でお腹を満たし、良い1年のはじまりとなった。