2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
蔵の街を巡る江戸型山車
栃木県栃木市は、江戸時代から市内を南北に流れる巴波(うずま)川の舟運によって発展した。栃木から江戸の木場まで川の流れを利用して材木を運んでいたのだ。戦災に見舞われなかった川の両岸には、江戸時代に作られた蔵が数多く残り、「小江戸」の風情を漂わせている。巴波川で運航される蔵の街遊覧船に乗れば、水路から「小江戸」の蔵の街並みを眺めることができる。
江戸の小意気があふれる栃木の蔵の街並みが、熱気で包まれるのが「とちぎ秋まつり」の日だ。当初は5年に1度のサイクルで行われていたが、近年は偶数年に開催されていた。ところが2020年、新型コロナウイルス感染防止のため中止となったため、次回は21年11月12~14日の3日間が予定されている。
祭りの開催日には、市街地のメインストリートの「蔵の街大通り」を中心に、絢爛(けんらん)豪華な山車が巡行する。江戸山王祭に参加していた静御前の山車をはじめ、繊細な彫刻や金糸、銀糸の刺繍が施された9台の山車がお囃子(はやし)とともに市街地を練り歩く。
とちぎ秋まつりで巡行される山車は、江戸型人形山車。構造に特徴があり、人形の足元に上下可動式の2層の空間が設けられている。江戸の山王祭などで山車より低い江戸城の門を潜る際に、スライドして山車の高さを調整する伝統を受け継いでいるのだ。
まつりの最大の魅力が、複数の山車がすれちがうときに行われる「ぶっつけ」。2台の山車が向かい合うと、山車の引き手が提燈を高く振りかざし、大きな掛け声をかけながら、お囃子のボリュームを上げる。あたり一面に大サウンドのお囃子が響きわたる。延々とお囃子の競演が続くが、勢い余ってお囃子の調子を外してしまった山車が、道を譲ることがルールとなっている。
とちぎ秋まつりでは、巴波川を中心に豊かな旅情であふれる栃木市内を巡行する絢爛豪華な江戸型人形山車を眺め、「小江戸」文化の粋に触れることができる。