秋田・角館の祭り
秋田県を代表する観光地の一つ、角館。県東部の仙北市に位置し、市内には日本一深い湖として有名な田沢湖のある土地です。
角館は江戸時代の武家屋敷が残る通りが人気観光スポットとして知られ、「みちのくの小京都」とも称される美しい街並みには、毎年多くの観光客がやってきます。
この角館の城下町を舞台に毎年9月7日から9日の三日間で開催されているお祭りがあるんです。その名も「角館のお祭り」!
曳山が城下町を練り歩く
角館のお祭りは、「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコの無形文化遺産にも登録されているお祭りです。その歴史は400年以上と伝わり、お祭り当日は歌舞伎人形や武者人形の飾られた曳山が威勢良く角館城下町を行き交います。最終日の9月9日に現地へとやってくると、武家屋敷の通りで巡行を待つ曳山に遭遇しました!
18丁内から曳山が出ているとのことで、城下町を歩くと至る所で曳山に会うことができます。こちらは川原町若者の曳山。「三河物語“家康初陣”」の場面が人形で表現され、今川義元と松平元信(後の徳川家康)が勇ましく乗っています。
続いては横町若者の曳山です。武者姿と火を持つ様子が猛々しいこちらは、「源平盛衰記 倶利伽羅峠の戦い」を題材にしています。
「壽 柱建曽我」という題材を乗せた曳山は、西勝楽町若者のもの。歌舞伎の名場面が再現されていますね。
新田義貞の武者姿に惹きつけられるこちらは、西部若者の「曙の月 神なる道 鎌倉攻め」です。
今年の大河ドラマ「どうする家康」でも大活躍の酒井忠次をメインに据えた曳山もありました。酒井忠次が太鼓を打ち鳴らし敵を退散させた名場面が表現されています。
日も傾き始め、曳山の動きも慌ただしくなってきました。
釣鐘が特徴的な下岩瀬町若者の曳山と先ほどの横町若者の曳山が狭い道路上で出会い対峙する場面も。
こうなった時に行われるのが「交渉」です。曳山の運行には上り山(参拝等の目的地へ向かっている曳山)を優先するというルールがあるのですが、最終日の夕方ともなるとどの曳山も目的は終えているためお互いに優先権が無くなっています。
そんな時はこの交渉をして交通整理を行うのですが、決裂してしまうこともあるんです。その場合に実施されるのが、角館のお祭りの見どころの一つにもなっている「やまぶっつけ」。激しく曳山がぶつかり合う様子には圧倒されますよ!
下岩瀬町と横町の曳山が押し問答の末、交渉となりました!果たして、やまぶっつけになるのでしょうか。#角館のお祭り #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/L3ETzCIdSR
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) September 9, 2023
違う場所でも交渉が!長い場所では数時間にも渡り交渉をする場合もあり、曳山の移動経路含めどのような動きとなるか定まっていないのも角館のお祭りの醍醐味の一つなんです。
あっちこっちで行われる交渉。この頃合いにはだいぶ日も暮れてきました。日が完全に暮れ夜を迎えると、お祭りは激しさを増してきますよ。
夜通し続けられる「やまぶっつけ」
闇夜に包まれた角館。交渉となり対峙していた曳山の後方に、棒が設置されていきます。
あちこちの曳山に付けられていく棒。こちらの棒がこの後に重要な役割を果たしていくんです。曳山に次々と棒が付けられていく中、各丁内の若者の盛り上がりもどんどん上がっていきますよ!
暗くなり、交渉を行う曳山の後方も盛り上がってきました!#角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/62UJWmvdJZ
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こちらで向き合うのは中央通りと西勝楽町若者の曳山。曳山と曳山の中央に集う男達はまだ落ち着いた雰囲気です。
そうこうしているうちに交渉へと移りました。いよいよ「やまぶっつけ」が行われるのでしょうか。
雰囲気が変わり、ついに「やまぶっつけ」がはじまりました!曳山の上でも下でも提灯を掲げて煽っていきます。
そして「ガツーン!」とぶつかり合う曳山。これは大迫力です!そしてそのまま後方の棒を下に押して、テコの原理で両者同時に曳山が勢いよく跳ね上がりました。
跳ね上がった状態で、再びぶつけ合います。
どんどんと押し合われる曳山。
まだまだぶつけ合います。どうなっていくのでしょうか。
お囃子の音と共に、男達の「ヨーイサノヤー!」の掛け声が響き渡っていきますよ。
曳山の周りでは、曳山に繋がれた綱をたくさんの人が引っ張って、ジリジリと曳山を動かしているんです。
やまぶっつけ本番がはじまりました!曳山をぶつけ合って、こんなににじり動くものなのか。すごい迫力です!#角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/EDawc9aPta
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少しずつずれてきた両者の曳山は、一点で接するのみに。絶妙なテンションでバランスを取り合っています。
激しいぶつけ合いです。綱を引っ張るのに合わせて、曳山がぎゅーっと動いていきます。
曳山をぶつけ合うと、こんなに一気にずれ動くものなのですね!#やまぶっつけ #角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/d16MnzatPq
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「ギギーッ!バーンッ!」という、曳山がぶつかり合う音もすごい!
笛の音もですが、「ギギーッ!バーンッ!」という曳山がぶつかり合った時の音がものすごい。#やまぶっつけ #角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/niWGqCnxtY
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これは熱くなりますね!
もう皆様この表情です。ここぞとばかりに気合が入ります。
勢い余って、曳山が浮いちゃうシーンも。この激しさから角館のお祭りは、「日本三大喧嘩祭り」の一つとする説もあるんですよ。この勇姿を見たら納得ですね!
角館のお祭りの曳山って、やまぶっつけの時浮くんですか!#オマツリジャパン pic.twitter.com/t7Bi8nXL0M
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綱を引っ張って、両者どんどん押していきます。
この熱量、空気感、たまりませんね!
場所を移し、北部丁内若者と大塚若者の「やまぶっつけ」へ。こちらも盛り上がっています!
ぶつけられた曳山の先端で、提灯を振り合う両者。
北部と大塚もやまぶっつけしていました!#角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/itpmbkLAJw
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止めどなくぶつかり合い、周りの見物客も歓声を上げていました。
城下町を再び歩くと、桜美町若者と横町若者は交渉をちょうどはじめたところ。
さらに進むと、駅前若者と上新町若者がちょうど「やまぶっつけ」をはじめようとしています。これは見ない訳にはいきません!
この大迫力です!
駅前と上新町の、やまぶっつけ本番の瞬間です!勢いよくぶつかり合いました!#角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/6EvEfNPcFE
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跳ね上げられた曳山の先端で繰り返し振られ合う提灯。闇夜にぼやっと提灯の明かりが飛び交う様子はどこか幻想的でもあります。
逆サイドからも見てみましょう。威勢の良いぶつかり合いは止まりません。長い場所では、夜通し明け方まで「やまぶっつけ」が行われることもあるというから驚きですよね。
駅前と上新町のやまぶっつけを逆サイドから!#角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/lJfo5IrqFb
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ちなみに曳山の位置は、本部に設置されたこちらのボードで分かるようになっているんです。「やまぶっつけ」勃発の所には赤い印が付けられ、リアルタイムで状況が分かるのがありがたいですね。
手踊り、置山にも注目
「やまぶっつけ」が「動」の楽しみ方なら、「手踊り」は「静」の楽しみ方と言ってよいかもしれません。城下町を練り歩き各所で停止した曳山では、二人一組での手踊りが披露されます。
手踊りの踊り手は、紫色の「紋付」か「かすり」の二種類の着物を着ています。「紋付」の方が格式が高いとされ、奉納等で踊る際はこちらを着た踊り手によって手踊り行われるそうです。
手だけではなく、手拭いを使用して踊る場面も。
手拭いを使った手踊りもあるんですね!#角館のお祭り #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/ij577BqK1p
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人形を背に手踊りが優雅に行われていきます!
角館のお祭り、三日目の最終日を迎えています。武家屋敷の残る城下町各地では、曳山の上で手踊りが披露され華やかな雰囲気です!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/XXR1NoaN2N
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夜になっても要所要所で手踊りが披露されていました。お昼とはまた違った雰囲気の中で楽しめますね。扇子を使っての踊りも見応えがあります。
やまぶっつけがまだはじまる前で、平和だった頃の手踊り笑
奥ではやまぶっつけを今かと待つ二つの曳山が並んでいました。#角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/3wjvsaIkhg— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) September 9, 2023
手踊りが行われる曳山の後方にもご注目。勇壮な前方の人形とは打って変わって、後方には酒樽と共に滑稽な人形が置かれることが多いんです。この人形は「送り人形」や「送りっこ」と呼ばれ、毎年楽しみにしている人もいるんですよ。
再びの人気で話題になったマツケンサンバIIのような人形も。その年の話題の人を乗せることもあるそうで、甲子園で活躍した地元の高校球児が登場した年もあるんだとか。
紅葉に囲まれた、花咲かじいさんのような送りっこもいました。
人形の見どころは他にもあるんです。城下町の拠点に置かれた巨大な置山も見逃せないポイントですよ。
今年は曳山の参拝のある薬師堂と神明社、そして本部近くの立町に設置されていました。こちらは薬師堂に設置された「忠義の導き 長篠の合戦」です!
大河ドラマ「どうする家康」でも描かれた、鳥居強右衛門の命をかけた忠義の一場面が表現されており、見応えのある内容になっています。高さもかなりあり、スケールの大きな置山です。
お次は神明社の置山。こちらは「桶狭間の合戦 大高城兵糧入れ」。こちらも「どうする家康」で序盤に登場していたシーンですが、金色の甲冑を着た徳川家康が特徴的ですね。織田信長や今川義元の姿も見えます。
最後は立町の「神霊矢口渡」。歌舞伎や人形浄瑠璃の題材にもなっているもので、川に現れた新田義興の霊にご注目。
立町の置山の横にはステージが設けられ、手踊りやお囃子等の披露も行われていました。
本部近くのステージでは、奉納舞が披露される時間も。こちらは扇子を使用した拳囃子が踊られています!#角館のお祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/k6pX64frFF
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) September 9, 2023
露店情報・アクセス
お祭りへやって来たら、露店も楽しみたいですよね。定番お祭りグルメを提供するお店から、スーパーボールすくいのような遊べるお店まで、曳山の運行ルートに立ち並んでいました。
また秋田へやって来たら、ご当地グルメも楽しみたいところ。きりたんぽや稲庭うどんを提供するお店がいくつもあり、秋田名物を角館で味わうこともできますよ!
■角館駅へのアクセス
・東京駅から秋田新幹線で180分
・盛岡駅から秋田新幹線で45分
・秋田駅から秋田新幹線で42分
毎年9月7日から9日の三日間で開催されている、角館のお祭り。ぜひ「やまぶっつけ」の迫力を味わいに角館へ来てみてください!