2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
心打つ若獅子たちの勇壮な舞い
関東地方を中心に分布する「一人立ち三匹獅子舞」。その名の通り、お腹に太鼓を抱えた3匹の獅子が、さまざまなストーリーに沿って舞い踊る獅子舞の一形態だ。獅子舞と聞いて一般的に連想される、複数の人間が1枚の布に入って1匹の獅子を演じるあの形式は、伎楽・舞楽系の獅子と呼ばれるそうで、西日本に広く分布するらしい。
わが地元千葉県に伝わる三匹獅子舞を一度は見ておきたいと思い、2019年10月、松戸市上本郷の「上本郷三匹獅子舞」を見物しに行った。
獅子舞は1日に昼(午後1時)と夜(午後7時)の2回、それぞれ風早神社と明治神社で行われる(最寄り駅は、常磐線北松戸駅か、新京成線上本郷駅)。風早神社にある掲示によると、上本郷三匹獅子舞は250年の歴史があると伝えられ、一説には近隣の和名ケ谷地区から上本郷に養子に来た人が広めたとも。
まず昼の部。定刻になると獅子舞たちが参道を歩いてきて、境内の中心で舞いを始める。憂いを帯びた笛の音と、乾いた太鼓の音に合わせ、大獅子、中獅子、女獅子が勇壮に舞う。
獅子頭で顔が見えないが、相当に若い人たちが獅子を務めているのではないだろうか。見守る世話人たちから「方向変えて」「もう1回」と指示が飛ぶ。激しい上下運動、回転、跳躍、荒削りながら、あふれる躍動感に魅了される。
夜の部はさらにハードだ。提灯だけが灯る境内。暗闇の中で踊る獅子たちに、周囲から激しい檄(げき)が飛ぶ。「跳ねろ跳ねろ!」「いいぞ中獅子、そうだ!」。
ヘロヘロになっても、舞いはやめない。目の前で繰り広げられるまぶしいほどの若々しさとエネルギーの発露に、涙ぐみそうになった。
駅に向かう帰り道、電車の中でも獅子たちの残像とあの声が頭の中に残る。伝統は確実に若い世代へと受け継がれているようだ。