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かなまら祭主催者インタビュー【前編】“性のお祭りの昔と今、そしてこれから”

2019/11/12
2024/5/22
かなまら祭主催者インタビュー【前編】“性のお祭りの昔と今、そしてこれから”

神奈川県川崎市で毎年4月に行われるかなまら祭

このお祭りは、参加者の8割が外国人。近年ではLGBTQの方の参加も増えており、1日で5~6万人を動員するという人気のお祭りだ。
奇抜なピンク色の“男根”お神輿が練り歩き、神社周辺は男根を模した飴や食べ物の屋台で埋め尽くされる…県内外はもとよりも海外からも参加者が多く集まる、かなまら祭の昔と今、そしてこれからとは?
神職を務める中村さん(前宮司)に、インタビューに応じていただいた。

神職を務める中村さん。中村さんは前宮司でもある。

金山神社と川崎市の歴史

神社に祀られているご神体のフイゴ。手前についているレバーを押したり、引いたりして空気を送り込む仕組み。

かなまら祭は金山神社と、この川崎という土地の歴史なしには語れない。

金山神社に祀られている神様は、フイゴの神様であり、製鉄業の神様としての一面がある。金属を炉で溶かす際、炉の温度を上げるために風を送る道具が「フイゴ」であり、製鉄業には欠かせないものだ。西洋のフイゴはアコーディオンのような動きであるが、日本のフイゴはレバーをピストン運動させ、風を送る仕組みになっている。
このピストン運動が”男女の営み”を連想させることから夫婦円満、子授け祈願、また性病避けや下半身の病気平癒にご利益があるとされている。

飯盛女(めしもりおんな)を描いたとされる浮世絵※画像出典Wikipedia

また、もともとこの地域は東海道の宿場町であり、飯盛女と呼ばれる遊女たちが多く暮らした地だ。そして土から芽吹く力にあやかろうとする「地べた祭り」もこの地域ならではのお祭り。地べたに座って飲み食いすることで、地べたが持つ力を取り込もうとする行事だ。
ただ、近年宿場町が廃止されたことから地べた祭りも廃れて行ってしまった。これを復活させたのが、今回インタビューさせていただいた中村さん(前宮司)のご主人であり、先々代の宮司である。

“性”のお祭りとしての推進

先々代宮司は獣医であったことから、動物にも性病があり、人間にもいずれ性病が蔓延する時代が来るという危機感と、金山神社の「性病避け」のご利益の面から、かなまら祭を性のお祭りとして推進していく。

エリザベス神輿

この取り組みが知られ、先々代宮司はメディアに出演することも多かったという。しかしメディアでの取り上げられ方は、面白おかしく茶化した切り口として取り上げられることが多かったのだそうだ。

ご神前の片隅には、先々代宮司の写真が飾られている。

“このお祭りを卑猥なものとして受け止めるか、神聖なものとして受け止めるかは、その人自身の人間性の問題。ある意味その人の人間性が浮き彫りになる”と中村さん。
もともとあったお神輿に加え、奇抜な色の“エリザベス神輿”が神社に寄付されたのは30~40年ほど前。浅草にあった女装クラブ、エリザベス会館の方が寄付したものだという。まだ現代の様にLGBTQという言葉もなく、「エイズはゲイの病気」という偏見や差別がはびこっていた時代のことだ。
“先々代宮司のやっていたことは、かなり先進的だったと思います。ようやく時代が追い付いてきたと思います。”と中村さん。

誰もが笑顔になれるお祭りへ

“かなまら祭の良さは、誰もが笑顔になれること。嘲笑とは違う。”そう語る中村さん。

性のお祭りとして発展させたのは先々代の宮司だが、「誰もが差別を受けずにお祭りを楽しめるように」との願いから、かなまら祭は生まれたのだという。

その昔、この地域の遊女だった「飯盛女」たちは、昼間に神社に参拝するのもはばかられていた。現在では飯盛女という呼び方こそなくなったものの、その名残から川崎には風俗街が現存し、セックスワーカー達が働いている。その他にも、エイズ、ゲイ、LGBTQ…等、時代が変わっても、差別がはびこっている。

中村さんに近年、お祭りに外国人が多く参加していることについてその理由を尋ねてみた。
”それは、性のお祭りと言う奇異さもさることながら、「なんでみんなこんなに笑顔で楽しそうなの?」「どうして?」という不思議な気持ちが、参加意欲を掻き立てているのでは無いか?”と答えてくれた。

お祭りを思いっきり楽しんでもらい、心から笑顔になる。そんな祭り参加者たちの笑顔が、近年のSNSの発達により、拡散されるようになったことで、多くの人の目に触れるようになった。その楽しそうな様子を見た人が、ある人は「楽しそう!」と感じ、またある人は「楽しそうだけどなぜ?」と疑問に感じる。そして実際に足を運ぶ。まさに笑顔の連鎖が起こっているのだ。

「明るく笑い飛ばして元気になるお祭り」として、今後も金山神社の熱い想いの下、かなまら祭は発展していくことだろう。

かなまら祭は毎年4月の第1日曜日に行われる。お祭りに足を運んだ際は、お神輿の奇抜さもさることながら、かなまら祭の本来の意味を思い出してみて欲しい。

かなまら祭と地域との関わりとは…?後編に続く

かなまら祭主催者インタビュー【後編】はコチラ

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