日頃から本は好きでよく読みますが、最近はもっぱら電子書籍での読書が中心になっています。探しやすく、すぐ読めてとても便利な電子書籍ですが、古本には便利さでは置き換えられない価値がある。そんな思いを抱いた「神田古本まつり」の様子をお届けします。
世界一の古書店街で開催される神田古本まつり
神田古本まつりは、この秋で59回目を迎える、神田古書店連盟によるイベントです。世界一の規模とも言われる神田神保町古書店街で開催され、参加店は約100 店舗、出品点数のべ100 万冊あまりにもなります。
2018年は10月26日(金) から 11月4日(日)の日程で催されました。
靖国通りの歩道に、書店と書棚に囲まれた約500mの「本の回廊」 が出現する「青空古本市」や、普段店頭では見られない内外の貴重書籍を集めた「特選古書即売展」や「チャリティー・オークション」が行われます。
この他にも共催としてトークイベントや神保町界隈で撮影された古い写真の展示・ホームムービーの上映など、歴史や文化に触れることもできます。
神田から歩いたら少し遠いぞ
神田古本まつりが開催される古書店街の最寄駅は神保町です。神田から歩くと少し遠くなりますので、お気をつけください。
まぁ、わざわざお伝えしなくても有名なので間違える方は少ないですよね?
と、言いながらやらかしたのは私です。何も考えずに神田に降り立ってしまいました。もう、俺のばか!
神田から神保町方面を目指し、靖国通りへ出ると見えてきました本の回廊。
本の量と人の多さは圧巻。
神保町駅前の様子。
神保町公式ガイド、古書店MAPは無料で配布中。これをゲットして探検をスタートしましょう!
売っているのは本だけじゃない。
古本との偶然の出会いを楽しもう
路上では各書店が密接し、狭いスペースに本を並べています。専門としているジャンルごとに店が並んでいるはずなのですが、どういう本が売られているのか判別するのに時間がかかります。
大型の書店などではジャンル分けが明確にされ、書店員さんのこだわりと創意工夫が込められた書棚づくりによって、本を買いに来た人たちとの出会いの場が提供されていますが、古本まつりではあえて整理しないことで、偶然の出会いを楽しんでもらおうという気持ちを感じます。主催者や出店されている方々の思惑に合っているかどうかは別として、少なくとも僕はそう受け止めました。
じっくりと眺めていると本の並べ方にストーリーを感じるものがあり、棚の1つ1つ、本の1冊1冊から目が離せません。
ある程度時間を確保してから行くのがオススメです。
昔から大変お世話になっている先輩で、現在はフリー編集者をしている方が古本まつりに行ったと聞いたので、感想を伺ってみました。
「お店ごとに品を並べているせいか、全体が雑然としていて、探しにくい。出品本をすべて並べ直して、ジャンルごとに陳列してほしい、と。しかし、逆に雑然としているから、ゆっくり見ていくにはかえっていいのかもしれない、と思いました。だからこそいろいろ見た感が生まれるのかも、と。それが、効率優先の価値観とは違う、「市」の原点なのでしょうか。」
こんな本を買いました
特に何を買おうとも決めていなかったのですが、お祭り関係で面白い本を探す事に決めました。
が、目的意識を持って探し始めると見つからないんだこれが。
歩き回って購入したのがこの2冊。
江戸文化研究会編『江戸 祭・縁日地図』(主婦と生活社、写真左)は1983年の発刊。江戸の古地図を示したうえで、地域ごとの寺社・祭礼を紹介しています。
写真やビジュアルも豊富に用いており読みやすさもありながら、解説がしっかりとされている骨太な本でした。
『東京人』(写真右)は今も都市出版株式会社から発刊されている雑誌のバックナンバー。1996年の6月号なので、夏祭り前に発刊されたのでしょう。
浅草、山王、神田、深川の祭りに携わる江戸っ子たちを紹介したかと思えば、内海好江さんと小沢昭一さんの対談、祭り好き・神輿好きだという安岡力也さんへのインタビュー、東京の祭り15選など、80ページにわたってお祭りが紹介されています。そのほかには、東京の市場、月島、丸ビルなどの「場所」とそこに関わる「人」にこだわった記事が充実。手間暇かかった構成です。
連載の「コレクター紳士録」はこの号が最終回。みうらじゅんさんがチャールズ・ブロンソンのグッズ収集のエピソードを語ってます。
「グッズはね、もう買うものがない。どうしたらいいもんか困ってるんだよね、この趣味。ちょっと暗礁に乗り上げてる。」
知るか(笑)。みうらじゅん節全開でした。
歩いたあとはさぼうるへ
神保町界隈はレトロな喫茶店がたくさんあります。中でも「さぼうる」は昭和30年の創業以来愛されている有名店。歩き回って一休みするのに最適です。
名物の生ジュース(いちご)うますぎて体に染み渡ります。
春の古本まつりもやってくる
神保町の古書店街では、3月下旬から4月上旬にかけて「春の古本まつり」も開催されます。桜の名所、千鳥ヶ淵で催される千代田さくらまつりと合わせて催されるもので、こちらもたくさんの古本と出会えるチャンスです。
検索サービスや電子書店の充実など、本との出会いはどんどん便利になっています。古本との偶然の出会いは便利さの対極にあるような行為ですが、少しだけ心を豊かにしてくれます。
何かとせわしない毎日ですが、不便さを楽しむ余裕はとっても価値があるなぁ。買ってきた古本をパラパラとめくりながらふとそんな事を思ったのでした。