こんにちは!そろそろ春祭りの季節なのに、今年は外に出られない。
そうだ!出られない時間を使って、祭りの道具について調べてみよう!ということで、祭りを彩る重要アイテム、笠について調べてみました。
1.笠とは
まずは笠の定義を見てみましょう。
被(かぶ)り物の一種。一般に低円錐(えんすい)形につくり、これに紐(ひも)などをつけてかぶる。差し傘と区別して、「かぶりがさ」ともいう。初め笠はおもに雨具として用いられたが、のち外出の際に顔面を隠すために使われ、ついで広く屋外の労働に、雨除(よ)け・日除けとして男女ともに用いられた。
出典:日本大百科全書(ニッポニカ) (C)Shogakukan Inc.
笠は次のように分類されます。
①素材による分類:スゲ(全国的に多くみられる)、ヒノキの薄片(中部山岳地帯)、竹(西日本)、このほかイグサや藁など
②加工法による分類:編み笠、組笠、縫い笠、押笠、張笠、塗笠など
③形による分類:市女笠、三度笠、おけさ笠、鳥追い笠など
形による分類はもう書ききれないほどですが、ここでは、代表的な笠の形に絞り、祭りでよく利用されるものをご紹介します。
2.花笠
笠を使った祭りと言えば、「山形花笠まつり」。艶やかな衣装を纏った1万人を超える踊り子が集まる、華やかな祭りです。
ここで使われるのは、スゲ笠の一種。雪深い山形で、女性の冬仕事として長く伝えられてきました。
3.おけさ笠・鳥追い笠
踊る祭りで多く見られるのは、おけさ笠ではないでしょうか。別名「鳥追笠」とも呼ばれ、元は田畑の害鳥を追うための顔をすっぽり隠す編み笠です。
農作業用のほか、鳥追い女(正月に祝い芸として鳥追い唄を歌い門付けをして回った芸人)が被ったことから、芸能で多く使われるようになったようです。うなじが強調され、艶っぽく映る効果があります。
おけさ笠は、佐渡おけさ(新潟)、おわら風の盆(富山)、黒石よされ(青森)、阿波踊り(徳島)など全国の祭りで使われます。その流れは、熊本県牛深から北前船により全国に広がった「ハイヤ系踊り」とも関係があるのではないかと思います。ハイヤ系踊りについて知りたい方はこちら。
同じおけさ笠でも、確度によって全く違う印象になります。
おわら風の盆:笠紐を笠の中心にし、笠の裾(?)を広めにし、顔がほとんど見えないほど深くかぶります。
出典:Jinzuu wikipedia
佐渡おけさ:おわら風の盆と角度は似ていますが、笠紐がリボンのようになっています。
阿波踊り:昔はほかの祭りと同じようにゆったりと被ったのですが、現在はかなり鋭角にかぶります。そのため、「笠枕」と呼ばれる台座を笠の中に仕込み、笠紐を前の方に結びます。
青森ねぶた祭り:ド派手な花笠ですが、ベースはおけさ笠と同じ形。ここに華やかな装飾をします。
秋田西馬音内盆踊り:この祭りで使われるのは、鳥追い笠の変化形。前後に大きくカーブしており、西馬音内盆踊りの特徴でもある、優美で流れるような腕の動きを強調するのに役立ちます。
4.綾藺笠(あやいがさ)
流鏑馬祭りで見られるこの笠。鳥追い笠に似ていますが、起源は異なり、武士が被るためにできています。
藺草でできており、下に萎烏帽子(なええぼし)と呼ばれる柔らかい烏帽子を被ります。中央が高くなっているのは、結った髻(もとどり)を入れるためのものです。
5.市女笠
もともとは市場で商いをする女性がかぶっていたためにこの名が付いた「市女笠」。平安時代中期以降、公家の女性の外出用として使われました。市女笠から垂れ下がる白い布は、顔を隠すほか虫よけの機能もありました。
市女笠は激しく動くには不都合なので、踊る祭りではほとんと見られませんが、身分の高い女性の装束として、時代まつりに華を添えます。
6.一文字笠
高さが低く、平たい編み笠で、武士が旅や行列をする時に被りました。参勤交代を思い浮かべますね。こちらも時代まつりで多く見られます。
この平らな笠、被るためには台座が必要。笠の裏側を知るのも面白いですね。
7.虚無僧笠・浪人笠
これらは時代劇ではお馴染み、顔を隠すための笠。
虚無僧は、剃髪しない半僧半俗の存在で、尺八を吹いて喜捨を請いながら諸国を行脚修行して回りました。江戸時代、幕府によって服装を規定され、現在虚無僧と言えば思い浮かぶ笠(天蓋と言います)をかぶるようになりました。
浪人笠は円錐形の深編笠の一種で、男性が人目を避けるために主に利用したと言われます。浪人に限らず、武士、隠密や刺客、お尋ね者などが利用したようなので、「浪人笠」というのは後に付けられた名前のようです。
出典:松岡明芳 wikipedia
写真は兵庫県丹波篠山市 天台宗大国寺 丹波茶祭りのもの。このように、現存する虚無僧、もしくは尺八愛好家による虚無僧装束の行列が見られる祭りもあります。
8.三度笠
時代劇で渡世人(=博打打ち)などが被っているイメージですが、なんと、もともとは女性用で、顔を隠すために作られた深い笠でした。それを三度飛脚が使うようになって「三度笠」と呼ばれるように(「三度」とは「江戸と大阪を月に三度往復する」定期便のこと)。
三度笠も時代行列の足袋装束の男性として登場することがあります。
いかがでしたか?笠は実用性だけでなく、装飾にも使われ、身分も示す重要なアイテム。歴史や文化に深く根付いていることが分かりました。また、美しく、動きやすく被るための工夫も様々です。
今回取り上げた編み笠だけでなく、時代まつりで使われる塗笠や、烏帽子、さらには手ぬぐいも。被り物を知れば、より祭りを深く知ることができそうです。
次にお祭りに行ったときには、どんな被り物を、なぜ、どうやって装着しているのか、演者の頭に注目して見てみませんか?お祭りを見る視点がもう一つ増えますね。