今、昔ながらの郷土玩具が再び注目されています。手作りならではの素朴な造形、愛らしい姿に心をつかまれるのは、作り手たちが先代から受けついだ技術や、伝統への想いが込められているからかも!
そんな想いを感じる愛らしい郷土玩具を、これから紹介していきます。
春日部張子「だるま乗せ未」
日本各地で古来から作られてきた郷土玩具。玩具という名前が示すように、子どものおもちゃにするために作られてきました。また縁起物としての側面もあり、子どもたちの健やかな成長を祈ったり、家内安全を祈ったりと願いが込められているのも大きな特徴です。
代表的と言われるものとしては、東北地方発祥の木製の人形「こけし」のほか、土を素焼きにした「鳩笛」、「赤べこ」など紙で作られた「張子」の人形も郷土玩具のひとつです。
室町時代に中国から日本に伝わったという説がある張子は、まず型を作り、和紙を重ねて塗り固めます。その後、型を外して、色を塗って完成。紙と空洞で出来ているので、とっても軽いのが特徴。端午の節句などの縁起物として作られることも多い郷土玩具で、日本各地に産地があります。
春日部張子は、埼玉県春日部市の伝統工芸品。伝統工芸ながらも新しい発想を取り入れているものが多いといいます。
こちらのだるまが乗った愛らしいヒツジさん「だるま乗せ未」は、郷土玩具に詳しい日本土鈴館(※2021年閉館)の解説によると30年以上前の作品とのこと。しかし、時代を感じさせないポップで愛らしい表情が印象的なんです。
鮮やかな松竹梅の絵柄や縁起物であるだるまが乗っていることから、未年の縁起物として作られたことがうかがえます。だるまさんの目が入っていないので、お願い事を込めて目を入れても。飾っておくだけでなく、自分で手を入れる愛でかたもできます。
よくよく見ると「これでもか!」と縁起の良いモチーフを盛り込んでいるのに、色味や表情の緩さでほっこりさせられますよね。手元に置いて眺めるたびに、見ているこちらがニッコリ微笑みたくなるデザインです。
こちらの作家さんは、五十嵐健二さんとのこと。手漉きの和紙を一枚ずつ重ねるところから、すべての工程を一人で手作りしているそうで、どの角度からみても丁寧さを感じさせます。今も春日部で「招き猫本舗」という張り子のお店を営まれており、後継者の方もいらっしゃるようです。そんな話を目にすると、伝統が絶えることなくこれからも続いて欲しいなあと、愛らしい「だるま乗せ未」を眺めながらこっそり願うのです。