2019年12月に中国で発生したコロナウイルス。春に流行し始めましたが、まさか秋に開催される岸和田だんじり祭りまで影響を受けるとは思ってもみませんでした。終戦以来75年ぶりの曳行中止、ほとんどの人が今まで見たことのない祭りの風景がそこにはありました。9月18日から3日間、岸和田だんじり祭りを見学してきましたのでその様子をレポートさせていただきます。
1.祭りまでの経緯
5月28日、読売新聞夕刊に「だんじり開催へ 岸和田始動」の記事が掲載されました。
それまで中止やむなしの雰囲気だったのがこの記事が出たことにより、「開催する」という空気が広がりました。
しかしコロナは一向に終息の気配をみせず、開催できるのか、中止すべきなのか悩ましい日々が続きました。
6月24日に吉村大阪府知事がテレビで「岸和田だんじり祭について、いずれにしても応援していきたい」と発言し、この発言を「開催できる」と解釈した人が多く、「開催できる」という声が大きくなってきました。
7月6日には曳行自粛年番記者会見でだんじり曳行自粛の発表があり、今年の祭りは中止決定という印象が一機に広がりました。
ネット上では「開催できる派」と「自粛警察」の言い争いの日々が続きました。また駒や綱の準備する様子が伺えることから、「〇〇町が曳く」とか真偽のほどが定かでない噂が飛び交っていました。
そして祭りの直前になって、町内移動で練り歩く町が3町(中北町、南町、下野町)、それ以外にも小屋横に移動させ太鼓を叩く町が3町(紙屋町、中之濱町、五軒屋町)と記載された内部文書がネットに出回りました。だんじりを曳く町があるということで町がざわつきました。
2.9月18日(金)祭り前日
本来ならば翌日からの祭りに備え2回目の試験曳きが行われる日ですが、残念ながら今年の試験曳きは自粛でした。
そんな中、紙屋町では修理しただんじりに魂を入れる入魂式が行われました。
密を避けるため、関係者以外は立ち入りが制限されていました。
コロナ対策として電子体温計、次亜塩素酸、アルコールが置かれていました。
3.9月19日(土)宵宮
朝6時、曳き出しの時間に中北町が小屋を出発しました。
移動曳行は疎開道にある献灯台までの往復です。距離にして片道約400m、通常の曳行であれば3分もかからない距離です。
それでも動くだんじりを一目見ようと、多くのギャラリーが集まりました。
献灯台前へ到着。10分以上かけてゆっくりと曳いて来ました。
役員が挨拶をし、お神酒を飲みました。
だんじりは少し先で向きを変え、小屋へ帰っていきました。
曳行時間は往復で僅か30分程度でした。
この後、紙屋町を覗いて見ると、だんじりは小屋横の駐車場に停まっていました。密を避けるため駐車場内は関係者以外立ち入り禁止でした。
南町は9時頃にだんじりを移動させました。曳行中は熱中症対策のためマスクを外している人もいました。
南町もだんじりを修理したので入魂式を行いました。
そしてお昼頃には小屋へ戻っていきました。 曳行は往復で20分程度でした。
そして、この日午後の岸和田
毎年、だんじりと多くの人で賑わう疎開道ですが、ご覧の通り閑散とした状態でした。
祭り期間中は絶え間なくだんじりがやってきて、近寄ることすら困難なカンカン場は、1台もだんじりが通ることなく、車が普通に走ってました。
塔の原岸城線には西日本一の数と言われる出店も出ておらず、今まで見たことのない寂しい祭の日の光景でした。
この日、紙屋町は夜までだんじりを出していました。
献灯台の中央には「疫病退散祈願」と書いた提灯が掲げられていました。
4.9月20日(日)本宮
今年は、各町だんじりなしで纏を先頭に役員も各部署の責任者クラスに絞るなど、必要最低限と思われる人数で宮入りが行われました。
毎年多くのギャラリーで賑わう市役所前のコナカラ坂も閑散とした状態でした。
この日は下野町が移動曳行すると聞いていたので、下野町へ向かいました。その途中3台のだんじりを見ることができました。
10時30分頃に下野町が移動曳行を開始しました。
この日の午前中は宮入り時刻に合わせて、何町か小屋を開け鳴り物をしていました。
正午少し前、中北町は駐車場から小屋へ移動曳行しました。
他にも午前中に南上町や春木南も鳴り物をしていたようです。
昼過ぎに堺町の小屋前を通ったら、まだ小屋は開いていました。
下野町は夕方まで駐車場に停めていました。
そして薄暗くなってきた頃に小屋に向けて移動曳行を開始しました。
中北町はだんじりに提灯を付け、小屋横の駐車場停めていました。
18時頃だんじりは小屋に納められ、しまい太鼓で令和2年の祭りが終了しました。
5.コロナ対策まとめ
祭礼関係者に各町が実施したコロナ対策をヒヤリングした結果を以下にまとめてみました。
町でコロナ対策の要項を作って遵守する。
マスクの着用と手洗い消毒の徹底させる。(下野町の祭礼団体は下野町内全戸に消毒液とマスクを配布したそうです。)
綱を曳行前に伸ばして消毒する。
南町の入魂式ではマスクをしていないギャラリーに対し、マスクを無料で配布し、着用を促していました。
中北町では町会会計から祭礼団体メンバにフェースシールドを配布し、着用を促しました。
祭礼関係者が集まるときには必ず検温を行い記帳して仮に発症者が出ても追跡が出来るようにする。
体調の悪いものは参加させない(37.5以上は帰宅させる)。
寄合い 寄合いの回数・時間・人数を極力減らす。
部屋の換気を十分に行う。
疲れがたまらないように各団体でコントロールする。
集まる時間を極力短くする(朝から夕方までずっと集まるのではなく朝夕の曳くときのみ集まるなど)。
曳行情報を極力外部に漏らさず見物人を減らす。
6.最後に
祭りから3週間以上経ちましたが、今のところ岸和田市及び近隣地区では、クラスターは発生しておりません。単に運が良かっただけかもしれませんが、とりあえず一安心です。
しかし今のままでは来年の祭りの開催も危ういのではないでしょうか。祭りを通常開催するには、コロナを早く終息させる必要があります。
泉州では最近、お医者が中心となり 『2021 年度、だんじり曳行復活を真剣に考える会』 〜我々はだんじり祭りでコロナ感染拡大を起こさせない!〜 という同志の会が発足しました。
単に願うだけではなく、 一人一人がコロナ終息に向け、正しい知識を身に着け、感染リスクを下げる行動をしてくことが重要だと思います。
我々はコロナに負けることなく、地域の伝統文化である祭りを後世に継承して行きたいと思います。