漬物発祥の地「萱津神社」
名古屋市の西側にあり、市の一部が庄内川を挟んで名古屋市と隣接するあま市。尾張四観音の一つに数えられる甚目寺観音があることや、蜂須賀小六に福島正則といった戦国武将を多数生み出す等、古くからの歴史がある街です。このあま市で同様に長い歴史を持つ神社が今回のお祭りの舞台となります。萱津神社(かやづ じんじゃ)です。
萱津神社は日本広しといえども、ここにしか無いことを行う珍しい神社として知られています。何を行うのかというと、日本で唯一の漬物のお祭りを開催するんです!そのお祭りとは、毎年8月21日に開催される「香乃物祭(こうのもの まつり)」。
香乃物祭は、一説には起源が古代まで遡るというお祭りです。というのも古代の皇子である日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際に萱津神社に立ち寄っていて、その際に村人が漬物を出してもてなしたところ、「藪ニ神物(やぶに こうのもの)」と言い喜ばれたと伝わっているためです。
この日本武尊が発した言葉から、現代につながる「香の物」という呼び名が生まれたと言われています。また、この出来事から萱津神社は漬物発祥の地として知られ、漬物業界の方々からの崇敬の篤い神社でもあるんですよ。なお、香乃物祭は記録によると、少なくとも室町時代に行われていたことが確認されています。
さらに萱津神社の御祭神は、鹿屋野比売神(かやぬひめのかみ)。特に萱津神社では日本で唯一の漬物の祖人として祀っているのが特徴的です。
漬物関係者が行列を成す
ここからは今年の香乃物祭の様子を見ていきましょう!
お祭りが行われる萱津神社の境内へとやってきました。本殿横を通り右奥へと進むと現れるのがこちらの茅葺きの建物。香の物殿です。
香の物殿はその名の通り、漬物を納めるための建物になります。中を覗くと複数の漬物石が置かれていました。
そして香の物殿の前に並べられているのが、野菜の数々と漬物を入れる4つの壺。香乃物祭のために用意されたもので、後ほどの漬込神事でこちらが活躍していきますよ。
香乃物祭のメインは本殿祭とその後に行われる漬込神事。本殿祭が行われる14時前に本殿の方へやってくると、関係者の皆様が集合していました。これから本殿祭を行い、そのままの流れで漬込神事が行われます。
行列がスタートです!まずは祓所で修祓を行い、ご一行が本殿へと進みます。
本殿に到着しました!ご一行は続々と中へと入っていきます。
行列には巫女や神物を運ぶ皆様も。
運ばれる籠の中には何が入っているかというと、野菜です。ウリ、ナス、タデの三種が入れられているのが特徴的。
本殿前に置かれた籠の中を見てみると、きれいな三種の野菜が入っていました。古くから肥沃な土地だった尾張平野で取れる初生(はつなり)のこれらの野菜と、当時は海岸線に位置していたため海から取れる藻塩を神前にお供えしてきた歴史があるそうです。この行為には五穀豊穣の願いが込められていたんだとか。
ちなみにこのウリは愛知県の伝統野菜で「かりもり」と呼ばれ、漬物用のウリなのもポイントです。
本殿祭の最中には、巫女舞(浦安舞)が奉納される場面もありました。
香乃物祭、本殿では巫女舞の浦安舞が奉納されました!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/x5OnUTlqA7
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) August 21, 2023
萱津神社特有の「みこ太鼓」が地元の子どもたちによって披露される時間も!リズミカルな太鼓の音が響き渡ります。
香乃物祭の本殿祭の要所要所で、みこ太鼓の演奏もありした!地元の子どもたちの演奏に聞き入ってしまいますね!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/4f06T4fuVz
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日本でここだけ「漬込神事」
本殿祭が終わり、香の物殿の前へとお祭りの舞台が移りました。こちらで行われるのが「漬込神事」。一同が並び、野菜を正面に祝詞が読み上げられていきます。
野菜に対して行われるお祓い。
続いて参加者の皆様へも。
白装束の神職の方も読み上げを行います。こちらの方は熱田神宮から派遣されてきた方なんですよ。というのも熱田神宮の御祭神の一柱に日本武尊がいて、この神事で漬け込んだ漬物を熱田神宮へ供進しているからなんです。日本武尊でつながるご縁を感じますね。
一通りの儀式が終わると、いよいよ漬け込みです!行列の方が運んできた箱の中から、塩が取り出されました。
はじめは神職の方々が野菜と塩を手に取り、壺の方へ。
そして壺の中へ野菜と塩を入れ、漬け込んでいきます。
行列の方々が続々と野菜を漬け込みます。これはここでしか見られない珍しいお祭りの光景ですね!
日本でもここにしかないという、萱津神社の「香乃物祭」に参加してきました!こちらは漬物発祥の地としても知られ、毎年8月21日のお祭りでは漬込神事が実施されます。ウリ、ナス、タデ等が四つの甕に漬け込まれる貴重な瞬間に立ち会えました!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/H8ekttxZ1X
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野菜を手に取り、塩も手に取り、壺の中へ。
こんなに大きな白菜もすっぽり入っちゃうんですよ。
野菜を壺へ入れたら、優しく塩をまぶしていきましょう。
地元の子どもたちも挑戦です。神職の方や漬物関係者の皆様の漬け込みが終わると、一般の方も漬込神事へ参加することができました。
大根にも白菜にもしっかり塩をなじませていきます。
途中経過の壺の中の様子はこんな感じ。これは美味しい漬物ができそうですね。
たくさん並べられていた野菜もだいぶ少なくなってきましたが、まだまだ漬け込みは続きますよ。
甕いっぱいに野菜が詰め込まれていきます!#香乃物祭 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/Rp1Tm2pmPw
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4つの壺ともに、だいぶ満杯になってきました。
次々に甕へ入れられていく野菜。白菜のような大きな野菜もしっかり入ります。#香乃物祭 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/TwE63qoqw8
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たっぷり壺の中へ野菜が詰め込まれ、漬込神事は終了です!
この後漬物は二ヶ月ほど熟成され、熱田神宮へと奉納されます。
漬物や糠床も手に入る
香乃物祭の開催に合わせて萱津神社の境内には露店が出店しています。たこやきや愛知名物のたませんが食べられるのはもちろん、漬物の販売が行われているのも魅力なんです!
まずはこちら。かりもりの粕漬けです。愛知県の郷土料理でべっこう色に染まった見た目が美しい、夏を代表する漬物の一つになります。
かりっとした食感で、ご飯がもりもり食べられるから「かりもり」という名前になったという説もあるこちら。ぜひ見つけたら食べてみてください!
いろいろなラインナップが楽しめる、漬物の即売会も開かれています!定番のたくあんから、高菜に福神漬け、らっきょう等も販売されていました。
ぬか床も並びます。お家で漬物を作るのも良いですね。
また、社務所では、お札付きのぬか床の頒布もありました。こちらも注目してください。
毎年8月21日に開催される、香乃物祭。ぜひ漬物のルーツに触れに萱津神社へ来てみてください!
萱津神社へのアクセス
・名鉄名古屋本線、津島線 須ヶ口駅南口より徒歩で約18分
・名鉄津島線 甚目寺駅南口より徒歩で約21分
・あま市巡回バス 上萱津バス停より徒歩で3分