(久井はだか祭り)
2月の中旬という一年で最も寒い時期、はだかの男たちが陰陽2本の御福木を奪い合い、拾得者に幸運が訪れるのはもちろん、参加するだけでも無病息災がかなうという。
そんな最も過酷な祭りが「久井はだか祭り」です。
どうも。奇祭ハンターのマックです。
今回は、今年で記念すべき100周年を迎える「久井はだか祭り」をプレビュー紹介。
今回ははだか祭りの運営に携わる岡富雄議員と片山晋一社長、
それから久井稲生神社の宮司の娘である丸山祐子さんにお話をうかがいました。
過酷な祭りでありながら100年も続く、その理由とは?
大正8年、血気盛んな猛者たちが始めた
マック:元々の祭りの由来は何なんですか?
岡議員:神社に残る文献によるとね、始まったのは大正8年。当時の久井には、牛売りの商人がたくさんいてね、この人たちがまた血気盛んな人たちだったらしくて。
マック:なるほど。
岡議員:当時、はだかで初詣を参拝したりする人たちがいたらしいんだ。
マック:それはまた、パンクな猛者たちが……。
岡議員:そんな中、岡山の西大寺で「はだか祭り」というのがあるらしいというのを聞きつけてね。「久井でもやろう!」ということになったらしい。
マック:それから早100年ですか……。大正時代にそんなレジェンドたちがいたんですね。
(岡富雄議員。三原市議会議員。はだか祭りへの参加は20回以上。今からは想像できない「はだか祭り」の歴史を色々と語っていただきました)
マック:岡議員も「はだか祭り」に参加されたことは?
岡議員:ぼくは20数回ぐらいかな。
マック:20回も!
岡議員:いや、20回なんて少ないほうですよ。
マック:最長はどれくらい?
片山社長:最長だと50回以上という方もいますね。
岡議員:もちろん、県外から初参加という方もいるけどね。大体8割が地元の人間で、2割が他所からという割合かな。
マック:おふたりは御福木を取った経験は?
岡議員:ぼくはゼロ。
片山社長:私は中学2年生のときに1回だけ。立っていたら、飛ばされて、ぼくのところに宝木が降ってきたんです。ラッキーでした(笑)。最年少記録ですね。
(片山晋一社長。片山自動車工業代表取締役。中2の時に御福木を取得した最年少記録を持つ)
「はだか祭り」にもプロがいる!?
岡議員:ぼくだって御福木を握ったことはあるよ。でも、奪われないように維持するには握力がいるから。
マック:!! 降ってきた御福木を取って終わりじゃないんですね。
片山社長:御福木は取ってから、境内まで持って届けるまでですから。
岡議員:だから、最初からゴール近くで待ってる人もいるよね。
片山社長:ええ。あと、「プロ」の方はチームを組んでパス回しをしたり、御福木を隠してうまくだましたり、その辺の作戦が上手いですよね。
マック:ラグビーみたいですね。え、ちょっと待ってください。はだか祭りにプロ?
岡議員:そう。県外から参加する人でね。開催時間がずれたので今は減ったけれど、岡山の「はだか祭り」をハシゴして来ていたよ。
マック:それは賞金稼ぎ的な?
(※注「久井はだか祭り」は陰賞が賞金7万円+米俵、陽賞が賞金10万円+米俵の褒賞が出る)
片山社長:それもあるんでしょうけど、やはり根っからのお祭り男なんでしょうね(笑
岡議員:昔、インチキした人もいたね。
マック:インチキ?
岡議員:ニセモノの宝木を5本ほど用意してきてね。ニセモノには「ハズレ」って書いてあったらしい。
マック:!!(「ガリガリ君」かよ!)
岡議員:さすがに、その人は次から出場停止になったらしいけどね(笑。
(久井はだか祭りが行われる久井稲生神社の境内へと連なる鳥居。祭り本番の夜には両側の灯篭に火が灯され、インスタジェニックな光景となる)
昔は場外乱闘もアリだった!
岡議員:最近は参加者も増えてね。ぼくの子どもの頃なんて、30~40人ぐらいだった。
マック:それで、少ないほうなんですね。
岡議員:そう。少ないとね、逆に勝負がつかなくて……。
マック:? どういうことです?
岡議員:当時は、境内を飛び降りて、街中を逃げ回っていたりしたから……。
マック:!!(自由過ぎる!!) 今じゃ絶対に許されないですね。ちなみに今は平均でどのぐらいの参加人数何ですか?
岡議員:今は300人ぐらいかな。最近はなぜか10分ぐらいで勝負がつくことも多いね。
マック:そんなに大勢の参加者が!!
(「この辺りにやぐらを組んで、上から投げるんです」と岡議員。
5メートルほどの高さのやぐらから紅白の布に包まれた御福木が投下される)
水をかけるのは罰ゲーム、ではない!
片山社長:といっても御福木の奪い合いに絡むのは100~120人ぐらいですよ。
岡議員:そう。厄歳払いに記念参加している人もいるからね。ただ、中心にいないで、周辺にいて水をかけられると寒いんだ。
マック:寒空の中、水を! それは罰ゲーム的な?
片山社長:そうではなくて(笑)。中心部は湯気がたつほど熱気がすごいし、肌がぶつかり合うとこすれて、そのままだと火傷してしまうんですよ。
岡議員:水を潤滑油とするわけです。
マック:実はぼくも当日、参加するかどうか迷っているんですが……。
片山社長:それは絶対に参加したほうが面白いですよ。
岡議員:サラシは持参だけれど、当日買えるし、着付けもしてもらえるから。
(※注:近年の「はだか祭り」では、ケガ防止用のヒザ当てを認めるところや、下半身は白い短パンだったりする場合もある。しかし、「久井はだか祭り」では、サラシ木綿のマワシにタビを着用。力士用マワシや地下足袋は禁止。まさに硬派一色)
マック:いきなりのど素人でも御福木にさわれますか?
片山社長:さわるくらいなら、全然。
岡議員:そう。押し合いになっている中に入っていく勇気さえあれば(笑)。
片山社長:宝木を奪うんだったら、横に引っぱってはダメですよ。大体、みんなサラシの中にタテに入れているから、下から引っこ抜いてください。
マック:はぁ(そもそも中心に近寄れるかな……)。
岡議員:人数が少ないときは、股の下を移動する作戦もあったけどね……。
片山社長:今はやめたほうがいいですね。必ずつぶされる!
「久井のはだか祭りは、御福開祭との同日開催。本来、みなさんに福を配るお祭りなんです」と丸山祐子さん)
「久井はだか祭り」の魅力とは?
マック:改めて「久井はだか祭り」の魅力って何ですか?
岡議員:まあ、とにかく「病みつき」になるね。一年に一度の「馬鹿騒ぎ」の日というか。地域の方もこの「はだか祭り」に協力的だし、ほかにない一体感があるから。
片山社長:過酷だからじゃないでしょうか。寒いし、足はしびれるし、辛くてしょうがないんだけれど、やり遂げると不思議な達成感がありますよね。
丸山さん:正直、思春期の頃は「おじさんがお尻を出してて嫌だ!」というのは、ありました。ただ、湯気がポ―ッとたつぐらいみんな真剣に取り組んでいる姿は、「純粋にかっこいい」と思うようになりましたね。
岡議員:今までは自分たちが参加するのに夢中で(笑)、外から祭りを見物にくるひとたちへの配慮に欠ける部分が少しあったかもしれません。
片山社長:100周年を迎える今回は、食べ物のブースを用意したり、トイレを増設したりと、その辺も配慮させていただきました。
丸山さん:はだか祭りの後は、約800点の景品が当たる餅まきもあります。こちらは見学者の人も参加できますから、ぜひ。
岡議員:しかし、一度はぜひ参加していただきたいですね。見ているだけより絶対楽しいはずですよ。
(取材を終えて)
「久井はだか祭り」は大正時代から続く、熱い猛者たちの歴史でした。想像以上に地元で愛され、欠かせない存在となっていることがヒシと伝わってきました。本記事を読んだみなさんも「ちょっと参加してみたいかも」と思ってもらったら幸いです。
【久井はだか祭り】
■日時:2月17日(毎年第3土曜日)
■場所:広島県三原市久井稲生神社
■交通:JR「三原」駅から甲山行のバスで約30分「公立くい診療所前」下車、徒歩約5分
https://91inari.amebaownd.com/
〈はだか祭り タイムスケジュール〉
御福開祭 16:00~
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こどもはだか祭り 17:00~
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和太鼓演奏 20:20~
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はだか祭り 21:00~
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御福餅まき(御福木投下後、2回)
●久井はだか祭りバスツアー
問合せ:0848-67-5877(うきしろロビー観光案内所)
参加費:3800円(三原から久井までの往復バス代、夕食・夜食代、保険料含む)
(※タクシーだと三原から久井まで片道5000円以上かかるためお得です)
〈ツアー タイムスケジュール〉
三原駅西口(隆景広場)14:30発
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久井稲生神社 15:30~22:00頃(夕食:18:00~ はだか祭り21:00~)
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三原駅西口 23:00頃着