八朔祭の八朔(はっさく)とは旧暦8月の1日(朔日)のことで、この時期は台風や病害虫の被害をこうむる事が多いため、風雨順調・五穀豊穣を祈り明治18年から始まったお祭りです。
松尾大社では現在は毎年9月の第一日曜日に八朔祭が行われます。参道には屋台が並び、前夜の盆踊りは京都で最後の盆踊りといわれ、夏を終わりを惜しむ参拝客でにぎわい、当日は赤ちゃんの土俵入り「八朔相撲」や神輿おねりと、色々な行事が続きます。
なかでも、嵯峨野六斎念仏保存会が披露する「六斎念仏(ろくさいねんぶつ)」は、京都を代表する民俗芸能の一つ。他の10以上の保存会が行う六斎念仏とともに「京都の六斎念仏」として2022年には、ユネスコ無形文化遺産の「風流踊」全国41件のうちの1件として登録が決定しました。
ここからは、2019年に行われた八朔祭の現地レポートをお届けします。
(この記事は2019年に公開されたものを一部編集しています。2024年5月13日更新)
◆洛西総氏神 松尾大社(まつのお たいしゃ)
平安京の西、嵐山周辺地域の「洛西(らくせい)」。
その洛西総氏神の松尾大社(まつのお たいしゃ)は、お酒の神様でもあり境内にお酒の資料館もあります。
大山咋神(おおやまぐいのかみ)と市杵島姫命(>いちきしまひめのみこと)の二神を祀る。
大宝元年(七〇一)秦忌寸都理(はたのいみきとり)が、松尾山大杉谷の磐座(いわくら)の神霊を勧請し、秦氏の氏神として当地に社殿を建立したのが起りと伝えられる。
平安遷都後は玉城鎮護の神として、また中世以降は醸造の神として人々の信仰を集めている。※松尾大社 駒札抜粋
◆女神輿が桂川を船渡御!渡月橋と竹林の小径も!!
八朔祭の中でのみどころは女神輿「やまぶき会」による渡月橋(とげつきょう)上流船渡し!
渡月橋の下に流れる「大堰川(おおいがわ)」には3つの名前があり、上流は「保津川(ほづがわ)」、 渡月橋より下流は「桂川(かつらがわ)」と呼ばれています。
松尾大社を出発した女神輿は二時間ほどをかけ渡月橋に到着し、
モンキーパークの入口にある櫟谷宗像神社 (いちいたに むなかた じんじゃ)で神事を行います。
休憩ののち、待望の船渡御(ふなとぎょ)がいよいよ出発です!
お神輿は船に乗り、上流の保津川に向かいます。
担ぎ手たちの乗った船と、お神輿の船と保津川がそろい踏みした姿は壮観です。
そして船が下流の方向に回転すると、ドンドンと音を立てて花火があがります!
船上でも続く「ほいっと ほいっと」の掛け声が近づいてきました。
渡月橋の南「櫟谷宗像神社」側から北「亀山公園」側へ到着です。
船を降りると女神輿は大人気の竹林の小径へ!
源氏物語の宮「野宮神社(ののみやじんじゃ)」へ進みます。
大勢の観光客の間をぬけ、竹林の小径から今度は渡月橋へ。
嵐山の名所を練り歩いたあと、お神輿は夕方ごろに松尾大社に戻ります。
◆空也上人 発祥!「六斎念仏踊」
夕方になると松尾大社では重要無形民俗文化財「六斎念仏」(ろくさいねんぶつ)が行われます。
「嵯峨野六斎念仏保存会」によると、
『空也上人が松尾の神様にお念仏を唱えていたところ、松尾の神様は空也上人に太鼓と鐘を授けました。空也上人はこれをとても喜び、毎月、六斎日(月に6日ある忌み日)に六斎念仏をするようになりました』
という伝説に基づき、毎年、八朔祭のときに奉納をしています。
写真:子供が一番最初に覚える基本の曲「四ッ太皷」
演目は「発願念仏」、「四段たぐり」、「猿廻し」、常磐津や長唄、歌舞伎からの曲「時雨」と「願人坊主」、カンカン太鼓の「八嶋」と楽しい曲が続きます。
例えば、壬生六斎念仏はXの文字のように叩きますが、嵯峨野六斎念仏は円を描くように太鼓を叩くのが特徴です。
次は棒振りの軽業が見ものの「祗園ばやし」。
まるで祇園祭の綾傘鉾の棒振り囃子を見ているようでした。
衣装をつけているのが特徴の嵯峨野の十八番「越後獅子」。
技術が必要で難しい「四枚獅子(よまいじし)」は神楽獅子を呼び出すための前奏曲。
「神楽獅子」は太神楽獅子が逆立ちをしたりと曲芸を次々に披露します。
演奏と動きは動画でご覧ください!
最後に寝ている獅子を土蜘蛛が蜘蛛の糸で退治をします。
獅子は暴れまわり、土蜘蛛は舞台を右に左にと回転しながら移動し、ぱっと蜘蛛の糸を投げます。
蜘蛛の糸が放たれるたびに観客から「おおっ」という声や、拍手が鳴り響きます。
この蜘蛛の糸は金運や幸運をからめとると言われています。
そのため、演目が終わったあとは蜘蛛の糸をいただこうと参拝客があちこちで手を伸ばします。
松尾大社は山吹でも有名ですが、5月に咲く山吹が夏の終わりに咲いており、八朔祭に花をそえておりました。
これで京都の夏祭りは終了!
これからは重陽の節句や観月祭と秋のお祭りがはじまります。
松尾大社 matsunoo Taisya shrine まつおのたいしゃ
阪急電鉄「松尾大社」、京都バス・京都市バス「松尾大社前」下車すぐ
京都市西京区嵐山宮町3 map
境内無料 庭園500円
※詳しくは松尾大社のホームページにてご確認ください。